BMWの掲げる“駆けぬける歓び”を高い次元で満足させながら、同時にエレガントな雰囲気を併せ持つのがBMWM8という存在だ。ならば並大抵のスポーツホイールでは力不足。長きにわたって親和性の高いBBSホイールの、それも最高峰モデルに君臨するRI-Dがいい。
性能追求型だからこそそこに宿る色気がある
昔からBBSはBMWとの親和性が高かった。1970~1990年代のレースシーンなんて、いつもBMW製レーシングカーの足もとをBBSが支えてきた。当時の憧れを胸に秘めたユーザーが、今も指名買いする例が後を経たないと聞く。
M8コンペティションにはF:9.5J、R:10.5Jの20インチが装着された。サイズは純正と同等でも重量は2/3以下に抑えられた。
しかし、今回のM8は難しい存在だ。頂点にLM-GTEマシンを持ちながらも、決して硬派一辺倒ではないエレガントな風情も併せ持つ。無骨なレーシングホイール風情では、その世界観をスポイルすることにもなりかねない。
そうした存在に対して、まるで先に答えを用意してくれたかのように、BBSにはRI-Dがラインナップされている。画期的な超超ジュラルミン素材を用いながら、新世代BBS像を描いた大胆な造形を持って登場したのは2011年だった。あれから10年近くが経つにも関わらず、その鮮度は少しも衰えず、むしろ時代をリードしてきた。もっともBBSには20年選手で今だに現役な銘柄が珍しくないから、そうした中ではまだ若い存在なのかもしれない。
RI-DはM8に限らず主要な欧州車、国産車に対応する。 19~21インチの範囲で複数の設定があり価格は20万1000円(税別)から。
BBSが己の信念として貫くクロススポークは、超超ジュラルミン鍛造製法という武器を得たことで極限まで薄く細く仕上げられ、意匠にしても、たったの5本クロススポークとなった。まるでフォーミュラーカーのように極限まで研ぎ澄まされた造形だ。BBSが定義するクロススポークはメッシュパターンではない。隣り合うスポークをY字状につなげることだから、その哲学は健在である。
BBS伝統のクロススポークを極限まで研ぎ澄ましたかのような意匠を持つ。ボルトホールとの関係性を見てもまるでムダがない。この個体はダイヤモンドブラックカラーで、オプションのプラチナエンブレムを装着する。
実際、抜群の強度と剛性を維持したまま、とても軽量に仕上げられている。すべてのサイズに関して重量が公開されているのが、なにより自信の表れだろう。今回、M8に組み合わされた例を挙げると、フロント9.5J×20インチで8.6kg。リア10.5J×20インチで9.0kgである。そのサイズ感を考えるだけでも軽いと感じる。なおかつ純正の20インチは15kg近くもあり、3分の2以下の重量に抑えられた。
これだけの軽さを、しかも運動性能に大きく影響を及ぼすばね下の回転体で獲得したのだから、その走りは激変する。動き出した瞬間からその軽やかさを伝えてきて、まるでクルマ自体が軽くなったかのように軽快な振る舞いをみせる。純正ホイールの重量に合わせてセットアップされているはずの純正サスペンションとの組み合わせだと、ホイールが軽く強くなったぶん硬さを感じることもある。それでもアダプティブMサスペンションのセッティングの懐の深さが、M8を含む8シリーズ全体のライドコンフォート性能がそれを打ち消し、軽やかな乗り味だけを抽出して届けてくれる。特に今回のようなM8″コンペティション”の性格にはよく似合っている。
RI-Dはドレスアップではなく性能追求型であり、実際にユーザーは運動性能の高さを味わうことができる。なのに繊細なスポーク形状や大胆なコンケイブなどの効果で、どことなくエレガントな雰囲気も漂わせてくるのがいい。モータースポーツで培った技術をトコトン詰め込みながら、それを声高には主張せず、サラリと最高峰の性能を披露する。という意味において、M8とRI-Dとは同じ方向を向いていた。お互いが呼応し合い唯一無二のオーラを発揮していたように感じるのも、そう考えれば当然の帰結である。
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