1989年に発売され、圧倒的な静粛性と快適性への高い評価でレクサスの礎を築いた初代LS。以来30年以上に渡り、常に最先端技術を搭載したフラッグシップモデルとして人気を博してきた。今回のマイナーチェ ンジでは、そんなレクサスのDNAである静粛性と乗り心地の進化が見どころ。上質なインテリアの仕立てにも注目だ。
市場が求めていたLSの本来の姿
2017年に登場した現行のレクサスLSは、それまでのイメージから方向転換を図り、斬新なクーペフォルムやエモーショナルな走りを持ち味とした。ところが市場がLSに求めていたのは斬新さや新機軸よりも、初代LSで世界に衝撃を与えた圧倒的な静粛性や快適性だった。今回のマイナーチェンジは静粛性と乗り心地の改善という、いわば原点回帰のようなコンセプトを掲げている。
したがって、手が加えられたのは主に足周り。エクステリアは新色のボディカラーの追加(「銀影ラスター」はアルミフレークの粒子感をほとんど感じさせない独特な質感を持つシルバー)や一部意匠の刷新(前後のライト周辺やフロントバンパー、スピンドルグリルのカラー変更など)、インテリアは西陣織の銀糸やプラチナの泊を使って「月の道」を表現したという新しいトリムの設定、ディスプレイのタッチパネル化などにとどまっている。
これまでのLSは、どちらかと言えばハンドリングを重視した味付けになっていた。ハンドリング重視とは、ばね上をなるべく動かないようばね定数を上げたり減衰力を高くしたりして、旋回時にボディにかかる遠心力やヨー慣性モーメントを小さくするセッティングのこと。これだとステアリング操作に対して素早く車体の向きが変えられるようになるが、良好な乗り心地との両立が難しくなる。この難しいところに切り込んでいったのが新型LSである。
LSにはランフラットタイヤが標準装備されているが、今回は縦ばね剛性を少し落とした新開発のランフラットタイヤを採用している。こうすることで、ランフラットタイヤ特有の路面の当たりの強さを軽減した。サスペンションのロアアームのアルミ化は、ばね下重量の低減が狙いである。タイヤ/ホイール/ハブベアリング/ブレーキ/サスペンションアームといったばね下が軽くなると、路面からの入力を受けたときにタイヤが上下方向に動きやすくなってばね上へ伝わる振動をたくさん吸収してくれる。AVSはソレノイドバルブを変更してオイルの流路をあらため、減衰力をわずかに低減するとともにピストンスピードの遅いところから幅広い領域でしっかり減衰する電子制御式ダンパーを採用した。
こうした改良の効果は乗り心地に顕著に現れている。路面からの入力はサスペンションがよく動いて吸収してくれるようになったし、ばね上は以前よりも動くようになったもののその様はおだやかでスムーズだから、全体的にゆったりとした乗り心地を形成している。だからといって操縦性が著しく低下しているわけではなく、5mを超えるボディサイズと2トンを超える車重を意識させない回頭性のよさはきちんと残っていた。絶妙な落としどころをよく探し当てたと感心する。
ガソリンとハイブリッドの2種類のパワートレインもそれぞれ改善の手が入った。ハイブリッドはモーターによるアシストの領域を増やすことで瞬発力の増強や静粛性の向上を実現し、V6ガソリンエンジンは低回転域でのトルクの細さが姿を消してパワーデリバリーが好転した。
市場が求めていたLSの姿にずいぶん近づいたが、デビュー時にこのレベルでも良かったのはないかとも思う。そしてまだまだ伸び代が残っているようにも感じた。
【Specification】レクサス LS500(2WD)Fスポーツ
■全長×全幅×全高=5235×1900×1450mm
■ホイールベース=3125mm
■トレッド=前1630、後1615mm
■車両重量=2230kg
■乗車定員=5名
■エンジン型式/種類=V35A-FTS/V6DOHC24V+ツインターボ
■内径×行径=85.5×100.0mm
■総排気量=3444cc
■最高出力=422ps(310kW)/600rpm
■最大トルク=600Nm(61.2kg-m)/1600-4800rpm
■燃料タンク容量=82L(プレミアム)
■燃費(JC08)=10.2km/L
■トランスミッショッン形式=10速AT
■サスペンション形式=前マルチリンク/エア、後マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前245/45RF20(8.5J)、後275/40RF20(9.5J)
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レクサスインターナショナル 0800-500-5577