【ニューモデル情報通】Vol.8 新型スバルレヴォーグ発売に添えて……改めて「レオーネ」を振り返る

2020/09/19 18:00

「レガシィ・ツーリングワゴン」なき今、スバル伝統の「AWDツーリングワゴン」の火を灯し続ける「スバル・レヴォーグ」。初代は2014年に登場以来、日本の道路事情に合った全長を持ち、日本では数少なくなったステーションワゴンとしても人気を保ち続けている。2代目レヴォーグは2019年秋の東京モーターショーでプロトタイプを公開、そして2020年8月から先行予約を開始しており、今後は10月15日に正式発表というスケジュールが控えている。期待に胸膨らませているユーザーも多いだろう。大きな話題となっていることは承知の通りだ。

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スバルといえば「レガシィ・ツーリングワゴン」という時代を経て、今やスバル唯一のステーションワゴンとなったレヴォーグだが、スバルは「レオーネ」時代から一貫して「ステーションワゴン+AWD」を作り続けてきた。そこで今回は、レガシィからさらに遡り、スバルのブランドイメージを生み出したレオーネに、改めてスポットライトを当ててみようと思う。

レオーネの前史、スバル1000/ff-1

スバル初の1Lクラス乗用車として、1966年に「スバル1000」が誕生。当時の同クラスとしては画期的なFF(前輪駆動)を採用したことで、1.5Lクラス並みの広い室内、センタートンネルがないフラットな床面を実現。水冷フラット4エンジンの搭載、フロントインボードブレーキなどの画期的な設計も特徴だった。1969年にはエンジンを1.1Lに増強して、車名を「スバルff-1」に変更した。写真は、ff-1に設定されていた「スポーツセダン」。砲弾型ミラーを備える。フラット4エンジン(EA61S)はミクニ・ソレックスツインキャブを備え、10.0という高圧縮比から77psを絞り出していた。

軽自動車の「スバル360」で大きな成功を収めた富士重工業(以下、スバル)は、続いて1Lクラスの乗用車市場への進出を図った。そして1965年の東京モーターショーで発表された意欲作「スバル1000」は、同クラスのトヨタ・カローラや日産・サニーとの戦いに挑むにあたり、当時としては採用例が少ないFF(前輪駆動)を採用し、大きな注目を浴びた。しかもエンジンはアルミ製の水冷水平対向4気筒(EA52)を搭載、フロントブレーキをエンジン脇に配したインボード式とするなど、異例づくしのクルマだった。ロングホイールベース、FFで得られたフラットなフロアによって、クラスを超えた広い室内空間も実現しており、その理想主義的・合理的な設計も高い評価を受けた。設計の陣頭指揮をとったのは、スバル360を開発した百瀬晋六である。

1966年5月に発売を開始したスバル1000だったが、早くも翌66年にはエンジンを1.1Lに増強した「ff-1」に発展した。さらに1970年のマイナーチェンジでは、内外装の装飾・装備を増やしたほか、エンジンを1.3Lに増強した「1300G」シリーズも追加展開。ff-1のシンプルさは失ったものの、商品力を増していた1300Gは、ff-1の主力モデルとなった。

東北電力の要請で開発された「ヨンクのバン」

1970年、1.3Lエンジンを搭載した「1300G」シリーズを追加。スバル1000から用意されていたバンは、1300Gにもラインナップされており、これをベースに4輪駆動車が8台だけ作られた。

スバルといえば、水平対向エンジンを用いたシンメトリカル4WD(AWD)だ。新型レヴォーグでも、そのレイアウトはもちろん継承している。この設計を初めて実装したのが「ff-1 1300Gバン 4WD」である。世界初の「乗用車ベースの4輪駆動車」だが、誕生の経緯は、一般の市場からの需要ではなく、東北電力の要請だった。

管理地域に山間部が多く、雪深いエリアを抱える東北電力では、送電線のパトロール用車両として4輪駆動車が必須だった。しかし、ヨンクといえば軍用車出自のジープや、それに類するジープ型の車種しかなかった。ジープ型車両は、乗用車に比べ乗り心地・燃費が悪く、ドアや屋根がホロでできていることも多いために、極寒となる冬季時の業務は、過酷そのものだった。そこで東北電力は、「快適な乗用車ベースで、高い悪路走破性を持つクルマ」の開発を国内自動車メーカー数社に打診した。しかし当時、そんな車種は存在せず、需要も見込めず、依頼を受けるメーカーは現れなかった。

そこで東北電力は宮城スバルに試作を依頼した。すると同社は、スバル1000バンをベースに、ff-1用の1.1Lユニットと、当時は後輪駆動車だった日産・ブルーバードのリアデフを組み合わせた試作車の開発を、困難の中で成功。雪道での試験結果が良好だったことから、スバル自身が1300Gバンをベースに4輪駆動車開発に乗り出した……というエピソードは、あまりにも有名だ。こうして誕生したff-1 1300Gバン 4WDは、1971年の東京モーターショーに参考出品されたものの、一般向け販売は行われず、東北電力に5台、長野県白馬村などの自治体や防衛庁などに8台が納入されたという。

乗用車と4輪駆動を組み合わせた初代レオーネの革新性

2代目レオーネは、1971年にクーペが先行デビュー、翌年に本命のセダンを追加した。窓下の厚い、抑揚あるボディデザインが特徴。フラット4+FFという基本設計はff-1系を継ぐが、同系の特徴だったインボードブレーキが常識的なアウトボードブレーキに変更されるなど、同クラスの一般的な車種の設計に近づいた。写真は1400クーペGSRで、水平対向4気筒OHV(EA63S)を積むスポーツグレード。2バレルツインキャブ+10.0の高圧縮比により93pを叩き出していた。

1971年10月、実質的なff-1シリーズの後継車として、新型車レオーネの発売が始まった。当初は2ドアクーペのみで、セダンはff-1シリーズが継続して販売されたが、1972年なって4ドアセダン、2ドアセダン、商用のエステートバンを順次追加していき、ff-1シリーズ全体を置き換えていった。スバル1000以来の機能主義・理想主義的な思想を残していたff-1シリーズに比べ、当時流行していた抑揚の大きな「コークボトルライン」の装飾的なデザインがレオーネの特徴だった。またフロントブレーキも、高度な設計を誇ったインボードブレーキから、一般的なフロントタイヤ内に格納のアウトボードブレーキへと「退化」していた。そのため「スバルらしい個性が薄まった」とも嘆かれたが、フラット4エンジンを積むFFという設計は、頑なに守られていた。

1972年には、「乗用車ベースのクルマでは世界初の量産4輪駆動車」となる、「エステートバン4WD」が追加された。4WD はパートタイム式。エンジン(EA63)はむろんフラット4で、排気量は1.4Lだった。

さらに1975年のマイナーチェンジで、これまた世界初の栄誉を授かる4WD量産セダン「4ドアセダン4WD」が登場した。4灯式ヘッドライトは当初「ハードトップ(1973年追加)」の専用装備だったが、マイナーチェンジを機に、セダンの1.4L版もそれと同じマスクに変更された。

初代レオーネのトピックは、ff-1シリーズ時代には市販を行わなかった4輪駆動モデルを、エステートバンの設定と同時に「エステートバン4WD」として登場させ、ついにカタログモデルとしたことだった。発売当時、見た目からは想像もつかない高い悪路走破性は驚異的で、セダンにも欲しいと切望されていたが、スバルはその需要に応えるように、1975年には、「セダン4WD」を追加している。それまで4輪駆動車、4WD といえば、ヘビーデューティで乗用車より快適性に劣るジープ型しかなかったことを考えると、乗用車の快適性を備えた4輪駆動車は画期的だった。しかし、当時ではまだ雪国などに住むユーザー向けに限られている印象があり、乗用車型4輪駆動車が一般的に認知されるまでには今しばらくの時間を要した。

その後も幾多の改良、排気量アップ、2度のマイナーチェンジを行った初代レオーネは、1979年登場の2代目にバトンを渡し、国産車としては長めな、8年というモデルライフを終了した。

1977年には、再度大幅なマイナーチェンジを実施。ウインカー類をヘッドライト脇に収め、端部にゴムブロックを設けた大型バンパーを得た。モデル末期には、アメリカンな雰囲気満載の「Grand AM(グランダム)」や、アメリカ市場向けのピックアップトラック「ブラット」も登場している。

2代目レオーネで「ツーリングワゴン」が初登場

1979年、レオーネは2代目に。ホイールベースは初代と同じだが、載せられたボディは一回り大きくなり、エンジンも1.8Lまで拡大した。まずセダンと2ドアハードトップ、商用のエステートバン(いずれもFF)が登場。追って、ホイールベースを短縮した「スイングバック」と呼ばれる小粋な3ドアハッチバックと、各ボディに4WDを追加した。

2代目レオーネでは、初代にあった2ドアクーペを廃止して、初代で1973年に追加の「2ドアハードトップ」を継続してラインナップ。Cピラーにオペラウインドウ的な処理を持っていた。

1979年5月に満を辞して送り出された2代目レオーネは、初代のようなアクの強いデザインから脱却し、クリーンなスタイルを得ていた。サッシュレスドアやホイールベースの長さは初代から引き継いだが、全長も初代の約4m から一気に4.2m超に拡大。新たに1.8Lエンジン(EA81)も新設定したほか、昭和53年排出ガス規制以降も生き残ったツインキャブエンジンも継続して搭載されていた。ボディバリエーションは、セダン、2ドアハードトップ、エステートバンのほか、「スイングバック」と呼ばれる3ドアハッチバックを同年秋に追加した。4輪駆動モデルも、その際にセダンとエステートバン、スイングバックに設定されている。

1981年のマイナーチェンジでは、セダンの1.8L版とハードトップのヘッドライトが4灯式に。同年、ステーションワゴン版の「ツーリングワゴン」がここでついに出現。ルーフの途中に段差をつけた「2段ルーフ」は、3代目レガシィまで受け継がれた。

そして1981年、今に至るスバル=ステーションワゴンというイメージを生み出した、ツーリングワゴンの元祖がいよいよ誕生する。外観はエステートバンに似るが、途中から段差を設けた2段ルーフを採用。当時はまだステーションワゴンは商用バンの仲間的な捉われ方をされていたため、装備やトリムレベルをセダンの上位グレードに揃えて乗用車としての快適性や豪華さを押し出し、キャンプやアウトドアなどのレジャー需要に応じた。

同年秋には、日本初となる4WD+オートマチックの組み合わせを実現、続いてこれも日本初の4WD+ターボエンジン(EA81T)を設定した。さらにハイトコントロールの搭載など次々と4WD車の商品力を充実させ、スバル=4WDというイメージを一層強くすることに成功。レオーネの販売台数の多くが、4WDで占められていくようになった。

先進技術を随所に投入した3代目レオーネ

カクカクしたデザインに改められた3代目レオーネは、1984年に登場。4ドアセダンを先行して発売し、3ヶ月遅れでツーリングワゴンとエステートバンを設定。エンジンはフラット4を堅持したが、OHVだったEA81から、SOHC化したEA82に換装された。

さらに1985年には、リアにハッチゲートを持つ3ドアクーぺの発売を開始。さらに1986年登場の「RX-II」では、4WDがパートタイム式からフルタイム式に発展、のちにセダン・ワゴンにも横展開が行われた。写真の「RX-IIターボ」に搭載の1.8L OHVフラット4+ターボエンジン(EA82T)は、最高出力135psを発生した。

1984年登場の3代目は、いかにも1980年代然とした、直線的なエクステリアデザインを大きな特徴とする。ボディバリエーションは、2代目にあったスイングバックを廃止して、セダン、ツーリングワゴン、エステートバンでスタート。1985年になってテールゲートを持つ3ドアクーペの発売も始まった。エンジンは従来通りEA型を積むが、1.8LのみがOHVからタイミングベルト駆動のSOHCへと進化している。 初代レオーネから引き継いできた4輪駆動システムは、依然としてFFベースのパートタイム式だったが、1986年からフルタイム4WD化。その少し前にマツダ・ファミリアが日本初のフルタイム4WDを採用したことから、国内初の栄誉は得られなかったが、1987年の電子制御式4速AT「E-4AT」、アルシオーネ譲りの電子制御トルクオンデマンド型フルタイム4WDシステム「ACT-4」などの最新技術を次々と投入。パートタイム式4WDも廃止され、スバルは最先端の4WD技術を有するメーカーというイメージを掴んでいった。中でも、ツーリングワゴン×フルタイム4WD (×ターボエンジン)を組み合わせたレオーネ・ツーリングワゴンは、「道や環境、天候を選ばず、快適なグランドツーリングを楽しめる高性能ステーションワゴン」という唯一無二のバリューを得ており、その後継車となるレガシイの成功を約束していた。

2代目レオーネに引き続き設定されたツーリングワゴン。スバル=ツーリングワゴンの図式をより定着させた立役者となった。写真は1986年に追加の「ツーリングワゴン4WD 1.8 GT/II Turbo」で、ターボエンジンとフルタイム4WDを搭載した。1989年に発展後継車種のレガシィが誕生したあとも、エステートバンとセダンの一部グレードは継続販売を行っていた。

そして伝統はレガシィ、レヴォーグへ

1989年、スバルツーリングワゴン伝説第2章を飾ったレガシィがデビュー。ボディサイズは4.5mを超え、排気量も1.8〜2Lへと発展。レオーネよりもひとクラス上の車種になっただけでなく、レオーネに比べて格段に豊かな表現を持つデザイン、向上した性能、充実した装備なども相まって大ヒット作となった。

1980年代も終盤を迎えた1989年、3代続いたレオーネで培われた技術とイメージを詰め込んだ初代レガシィが誕生。さらに、レオーネの直接的な後継モデルとして、1992年に「インプレッサ」も登場している。レガシイ、インプレッサともに、セダンやFF車もレオーネ同様にラインナップしたが、メインはやはりツーリングワゴン&4WDで、特にインプレッサは世界ラリー選手権(WRC)でも数多くの勝利を挙げたことは記憶に新しい。

日本だけでなくアメリカでもヒット作となったレガシィは、主戦場である北米市場に合わせ特に5代目から車体が大型化。現行型の6代目では伝統のツーリングワゴンがついに消滅し、ステーションワゴン型SUVの「アウトバック」とセダンのみとなった。そこでスバルは、日本市場でのレガシィ・ツーリングワゴンのポジションを継ぐ車種として、レヴォーグを生み出した。レオーネから続くスバルのDNAは、レヴォーグにもしっかりと受け継がれているのである。

SUV版の「アウトバック」を除き、日本市場でのレガシィ・ツーリングワゴンの販売は2013年に廃止されたが、その後を継いで同社の国内ステーションワゴンラインナップを埋めたのが、2014年発売開始のレヴォーグである。そして2020年、レヴォーグは2代目を迎えることになった。

フォト=スバル

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