【国内試乗】「ジープ・グランドチェロキーSRT8」アメリカンプレミアムの仕立て方

JEEP GR AND CHEROKEE SRT8
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ジープが“究極”なのは、何もオフロードだけのハナシではない。グランドチェロキーにラインナップする「SRT8」や「トラックホーク」といったオンロードに比重を置いたSUVもまた存在する。「どんな道でも楽しむ」。最後にオンロードを走り込み、そんなキーワードが見えてきた。

V8の自然吸気という“エンジンらしさ”を堪能

一部例外を除けば、初代が1992年に誕生したグランドチェロキーはプレミアムSUVの先駆けともいうべき存在だ。現行型は4代目にあたるが、その中でもSRT8はオンロードの走りにフォーカスした、いわば番外編的な位置付けになる。限定モデルまで含めれば、グランドチェロキーにはトラックホークという“怪物”も存在しているのだが、SRT8もスペック的にはそう名乗るに相応しい内容が与えられている。

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6.2L+スーパーチャージャーから710psと868Nmを叩き出すトラックホークほどではないが、SRT8の6.4L・V8も速さは十二分。気筒休止システムなどの搭載で高効率でもある。

搭載するパワーユニットは、いまや貴重な自然吸気のV8OHV。往年のアメリカン・マッスルカーを知るマニアには懐かしい「ヘミ(ヘミスフェリカル:半球型燃焼室の略)」のサブネームが与えられ、排気量は実に6.4Lに達する。とはいえ中身は決して懐古調ではなく、軽負荷時には4気筒で走る気筒休止機構を搭載。大人しく走らせれば、現代のクルマらしい社会性も兼ね備える。

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ヴェルベットレッドのボディカラーはSRT8専用色。標準的なグランドチェロキー比で、ボディサイズは全幅が最大で50mm拡大、全幅は最大で25mm低くなる。

ジープの上級モデルということで駆動はもちろん4WDだが、SRT8のそれは潔く副変速機を排除したアクティブオンデマンド式。一方、駆動制御にはここぞというときの発進時に威力を発揮するローンチコントロールを搭載し、SRT(ストリート&レーシング・テクノロジー)の名が伊達ではないことをアピールする。

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シート表皮はスエードとレザーのコンビ。フロントはホールド性も満足できるスポーティな形状となる。

ジープをオフローダーと認識する人にすれば、おそらくSRTという名は鼻白む類のものに違いない。だが、結論から先にいってしまえば、グランドチェロキーSRT8は確かにオンロードの走りが楽しい。その基本構成こそSUVながら、エンジンや足回りは積極的に操るに足るスポーティな出来映えに仕上げられているからだ。

JEEP GR AND CHEROKEE SRT8自重2.4トンのボディに対するパワー&トルクは、468psと624Nm。理詰めで性能を追求したドイツ産高性能SUVを知る人なら、もはや絶対的速さに驚くことはない。しかし、100mmを超えるビッグボアのショートストロークV8は、心地良い鼓動とともに6500rpm近いリミットまで本気で回す歓びが見出せる。最大トルクの発生回転は4100rpmと、お利口な最新のターボユニットと比較すれば高い。それだけに、微細なアクセル操作に対する反応は排気量相応というところだが、スポーツドライビングの作法を知る人なら、むしろパドルシフトを操る機会が与えられたとニンマリするはず。つまり、このエンジンは昔ながらのV8の魅力に加え、自然吸気エンジンらしさも満喫できるというわけだ。

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荷室空間などのユーティリティはベースモデルと変わらずハイレベルだ。

それを受け止めるシャシーも、SUVというより良質なFR車を彷彿とさせる。見ためから想像されるほど乗り心地が荒れていないことも魅力となる足回りは、速度や入力に応じて漸進的にロールする躾けの良さを発揮。背が高いので絶対的な姿勢変化こそ小さくないものの、セオリー通りに走らせる限りなら制御不能の事態に陥る心配もない。もちろん、全体の動きや反応を子細に観察すれば繊細とはいいがたい。だが操る歓びに焦点を当てれば、これもまた十分にスポーツしているのだ。

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ブラック仕立ての7スロットグリルや専用デザインのバンパーでフロントマスクは精悍さを強調。

ベース車も含め、ドイツ勢などの基準で観察すれば注文を付けたい部分は当然ある。だが、輸入車に乗る行為を異国の気質、おおげさにいえばカルチャーの体感に求めるなら、このモデルは良い意味でのアメリカ流を実感する最高のサンプルのひとつといえるのだ。

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リアバンパーもディフューザー形状を採用する。

フォト=勝村大輔/D.Katsumura ルボラン2020年9月号より転載

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小野泰治
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2020/08/25 08:00

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