メルセデスとビーエム、2台持つとしたらどんな組み合わせ?

04 S.Watanabe’s Choice/渡辺慎太郎・この2台があればたいていの状況には対応できる

この両ブランドを所有する人がいるのか?

世の中によりによって“メルセデス”と“ビーエム”の両方を好きこのんで所有する方がいったいどれくらいるのか皆目見当も付かない。巨人軍をこよなく愛する阪神ファンがいないように、BMWが好きな人はメルセデスが嫌いで、メルセデスが好きな人はBMWなんか眼中にないのだろうと思っているからだ。だから今回の編集部からのオーダーにはちょっと面食らった。阪神のTシャツを着て巨人のキャップも被って躍れと言われたようなものである。
自動車の種類を大雑把に分けてみると、セダン/クーペ/ワゴン/オープンカー/ミニバン/SUV/スポーツカーとなるだろうか。TPOや趣味趣向でこの中から複数台を選ぶとき、人によってはすべてをスポーツカーにしたりオープンカーばかりを揃えたりするかもしれないけれど、自分なんかはなるべく被らないように選ぶ。そしてちょっと欲張って、“オープン”の“スポーツカー”とか“8人乗り(=ミニバン)”の“SUV”とかを探したりする。

BMW M5/M5はあらゆる道で圧倒的なドライビングダイナミクスを発揮する。

BMWの中から選んだのはM5である。まさしく“セダン”と“スポーツカー”の要素を兼ね備えた1台である。サイズ的には(価格的にも)本当はM3のほうがいいのだけれど、最新版が未発表なのでM5とした。
M5を好む理由のひとつはその出で立ちにある。メルセデスAMGのような“お出まし感”がなく、ぱっと見ではノーマルの5シリーズと大きく変わらない。能ある鷹は爪隠すみたいな謙虚さに非常に好感が持てる。それでもボンネットはアルミ製、ルーフはCFRP製で軽量化と重心を下げる役目を果たしているし、空力も考慮した専用デザインのサイドミラーも装備。フロントフェンダー後方にあるスリットは“Mサイドギル”と呼ばれ、ホイールアーチ周辺の空気の流れをコントロールするエアブリーザーを内蔵する。スポーツカーとしての機能性を重視したデザインに万事がなっているのだ。M5の走りについては、いまさら多くを語るまでもない。4WDがデフォルトの駆動形式でありながら、ちゃんと「2WD」モードも選べるあたりに、Mのエンジニアのスポーツカー、あるいはスポーツドライブに対する強いこだわりが感じられる。4WDでは主に高いトラクション性能を、2WDではコントロール性に優れる操縦性を発揮する。サーキットでは、まるで自分の運転スキルがジャンプアップしたかのように思いのままに操れて痛快この上なかった。それでいて、公道での日常領域では乗り心地がすこぶるいいのである。普段のアシにもまったく躊躇なく使えるというのも、M5の魅力のひとつなのである。
最近は異常気象だかなんだかで、東京でも浸水や洪水の被害が多発し、ままならないご時世となったた。愛車が水没なんて事態を身近に感じるようになると、それまでは興味がなかったSUVが気になり始めた。どうせなら、“なんちゃって”ではなく本物がいい。で、メルセデスはGクラスである。Gの最大渡河水深はなんと70cm。自分の股下ほどの深さの水でもOKというはなんとも頼もしい。

メルセデス・ベンツG350d/Gクラスの伝統を最新技術でアップデートした究極のオフローダー。

「いまさらGクラスかよ」と思われるかもしれないが、個人的にはいまこそGクラスの買い時だと確信している。比類なきオフロード性能はそのままに、現行モデルはオンロードでの快適性が飛躍的に向上したからだ。先代まではみんなが我慢していた乗り心地や静粛性や高速での直進安定性や風切り音などが劇的に改善されている。もう辛抱を強いられることはほとんどなくなったのである。
Gを選ぶなら、ディーゼルエンジンを積んだG350dがいい。このチョクロクは、現行のメルセデスのエンジンラインナップの中でも珠玉の逸品だと思っている。過給機の感触はほとんど感じることなく、いわゆるストレート6の滑らかで豊潤な旨味を味わうことができるからだ。
前後駆動力可変式4WDのセダンとFRのスポーツカーとデフロック付き4WDのオフローダーとガソリンとディーゼルがあれば、たいていの状況には万全に対応できる。

ルボラン2020年8月号より転載

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