情緒に訴えるXC40と理詰めのティグアン
そんなRAV4と比較すると、ティグアンはまさに模範的な欧州産コンパクトSUVだ。折り目正しい外観と同じくパッケージングも煮詰められていて、荷室容量に至ってはRAV4を凌ぐほど。やや生真面目に過ぎる内外装の仕立ては単に背の高いゴルフのようでもあり、SUVに期待されるハレの気分はソコソコ。だが、本気でこの種のクルマを使い倒したい向きには、その実直なツール感が頼もしく感じられるはずだ。
試乗車は、クリーンディーゼルの2Lを搭載したRライン。日本向けのガソリン仕様はFFしか選べないが、ディーゼル版は4WDの4モーションが標準。SUVならではの万能性は、4WDが当然の日本勢にも見劣りしない。
オプションの20インチタイヤを履いていた試乗車の場合、日常域の乗り心地こそ路面からの入力が直截的ではあったが、気になった点といえばその程度。走りは間違いなくクラスのトップレベルだ。洗練度を重視してか、ディーゼルらしい低回転の力感はさほどでもないが、TDIモデルの動力性能は活発といえる水準で1.7トン超えの車重を意識させない。特有のノイズ、振動も走行時は気にならない水準に抑え込まれていて、特に高速のクルージング時は快適なライド感が満喫できる。
また、ステアリング操作に対する正確な反応、自然にストロークする足回りはスポーティな走りも苦にしない。それだけに、理詰めでこのクラスのSUVを選ぶならティグアンは間違いなく最後まで候補に残る選択肢となるだろう。
一方、XC40は同じ欧州産でも理詰めのティグアンに対して独自の情緒を感じさせる点が魅力だ。外観はことさらスポーティな造形ではないが、SUVらしさに洗練された都会的なセンスをプラス。オンロードにも映える、気の利いたプチ贅沢なコンパクトカーという風情は、デザイン性への評価も高い近年のボルボらしい。
今回の3車では一番全長が短いせいか、後席や荷室はティグアンやRAVと比較して多少ではあるがタイト気味。とはいえ、横方向に余裕があるのでSUVとしての実用性に不満はない。外観同様、室内も上質さと新鮮味のバランスが絶妙。この見ためで衝動買いする人がいても不思議はない出来映えだ。また、収納回りを筆頭とする気配りは日本のミニバンに匹敵する水準。この種のクルマで少なくないであろう、女性ユーザーを籠絡する技にもこと欠かない。
試乗車は、ハイスペックな2Lガソリンターボを搭載したT5のRデザイン。ティグアンより軽量なボディに、それを上回るトルクを誇るとあって走りは軽快とすら表現できる活発さ。乗り心地はこちらも少々硬めの入力が気になるが、前席に限ればそれも許容できる範囲内。当然、いざ積極的に操ればスポーティな走りにも対応してくれる。ティグアンやRAV4と比較すれば、そのベクトルこそ多少異なる。だがXC40もまた、いまどきの王道的SUVということができそうだ。
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