(細部解説)モデル末期ゆえの熟成が進んだ現行型、W205
【内外装】
・古さを一切感じさせない、新世代メルセデス・ベンツのデザイン
前述のように現行型Cクラスは2014年デビューのため、これを書いている2020年5月では登場後6年となり、今年中に次期型が発表されるという話もある。しかし、サイドにダイナミックなキャラクターライン、それに沿って下端ラインを引く小ぶりなサイドウインドウなどのデザインは古さを一切感じさせない。2018年のマイナーチェンジ後では細かな意匠に手を加えたのみで、詳しい人が見てやっと前期・後期の見分けがつく程度、という変更に留めたのも、元のデザインが優れていた証だろう。
・登場時の驚きはそのままでアップデートが施されたダッシュボード
現行型Cクラスで驚かされたのは、外観デザインだけではなかった。これまでのCクラスとは大きく異なる、きらびやかな素材と曲線美で溢れた斬新なインテリアも、メルセデスが新しい時代に入ったことを示していた。シフトノブはステアリング右側のレバーに移設。その代わり、センターコンソールにはナビゲーションやオーディオを手元で操作できる「COMANDシステム」のコントローラーとタッチパッドのほか、「エコ」「コンフォート」「スポーツ」「スポーツ+」と、個別設定が可能な「インディビジュアル」の5種類のドライブモード変換が行える「アジリティセレクト」スイッチなどを置いている。従来のメルセデスの内装に比べると、一層華やかな内装になっているため、ある意味「いいクルマを買った」ことがわかりやすくなったとも言える。
2018年の改良では、基本的な造形や機能はそのままに、ステアリングでもナビゲーションシステムの操作などが行える「タッチコントロールボタン」を新設。フル液晶メーターも設定するなど、この数年で急速に進む技術革新を取り込んだアップデートを施している。
【エンジン・パワートレーン】
・1.5Lターボには「48V電気システム」によるマイルドハイブリッド仕様も
現行型Cクラスセダン/ステーションワゴンには、デビュー時から2018年まで1.6L直噴ツインスクロールターボ、同2Lターボ、そのハイパワー版とプラグインハイブリッド版、3L V6、4L V8、2.1Lディーゼルターボなどが積まれ、9速AT(一部7速)を組み合わせていたが、マイナーチェンジで「C200」のエンジンが1.5Lへと小さくなり、さらに「48V電気システム」を用いたマイルドハイブリッドとなった。このシステムは、スターターと発電機を兼用する「BSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)」をベルトによってクランクシャフトに接続し、ターボが効かない低速時にモーターのトルクを利用することで、さらにスムーズな発進を可能とするものだ。BSGは電力回生機能も備えており、48Vシステムは12V電装よりも多くの電気をリチウムイオンバッテリーに充電する。
同時に、ディーゼルも2Lの新エンジンに切り替わったが、最高出力は2.1L時代よりも上がった。「メルセデスAMG C43」では、367psを発生していた3LのV6が390psに出力向上するなど、全体的なパワートレーンの進化もしっかりと行われている。
さらに2019年には、それまで1.6Lだった「C180」も1.5Lにチェンジ。C180は通常の1.5Lターボ、C200は1.5Lターボ+マイルドハイブリッドでC180とC200を分けるようになったほか、2Lプラグインハイブリッドの「C350e」はモーターをパワーアップ、ATも7速から9速に変更された。
悪天候時などに優れたトラクションと安定性を実現する、メルセデス伝統のフルタイム4WD「4MATIC」は、「C200 4MATIC ローレウスエディション」と「メルセデスAMG C43 4MATIC」に搭載している。
【先進装備】
・さらに進化した「インテリジェントドライブ」で安全装備も万全
日々目覚ましい進化を遂げる先進運転支援機能だが、2014年登場の現行型Cクラスにももちろん反映。最新モデルと同等の安全性を備えている。クルマに知性を持たせるという発想で生まれた「インテリジェントドライブ」は進化を続けており、新型Cクラスでは前方約250m、側方約40m、後方約80mを検知するレーダー、約90mの3D視を含む約500m前方をカバーする最先端のセンサーシステムを搭載。自車周辺の状況を詳細に検知してドライバーに警告、場合によっては自動ブレーキなどを用いて事故回避・事故被害軽減を図る。
ほかにも、ドライバーの疲労を軽減する「アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック(自動再発進機能付)&アクティブステアリングアシスト」、ウインカーオンで自動的に車間変更を行う「アクティブレーンチェンジングアシスト」、車線逸脱を防止する「アクティブレーンキーピングアシスト」など各種の先進安全機能を搭載。安全運転を支援する。
たしかに現行型Cクラスはモデル末期という状況なのだが、内外装・パワートレーン・先進装備のいずれにも、大小数え切れないほどの改良を重ねており、熟成・完成の域に達していることは間違いない。