新プラットフォーム「TNGA」を採用し、大きく若返りが図られた12代目トヨタ・カローラのツーリング。ここでは、欧州Cセグメントを代表するゴルフ・ヴァリアントとの比較で確認してみたい。ゴルフもうかうかしていられない!?
走りのクオリティでベンチマークの底力を示す
ずいぶん前、海外のショーでエンジニアに「日本車は軽量化に取り組んでいますがフォルクスワーゲンは重いままですね」と聞いたことがある。その答えは、単刀直入で「重さはクオリティの証です」だった。なるほどその通りと、合点がいったことを覚えている。
とはいえ、ゴルフも進化を繰り返すたびにボディなどの軽量化を実施しているが、カローラと比べると現在でもかなり重い。今回の試乗車で100kgの差があり、ディーゼルエンジンを積むとはいえハイブリッドシステムの方が重量では不利なだけに傾向に変わりはない。同時に、エンジニアによる断言の成果もそのままなのだ。
走りのクオリティをどこで評価するかといえば、まずは路面からの入力による振動の減衰性だ。ゴルフは、路面段差など大きめの入力に対してボディに振動を残すことなくスムーズに吸収。今回はワゴンボディのヴァリアントだったのでサスペンションの設定はやや硬めだが、好印象なことは確かだ。
ただ、ガソリンエンジンを積む一部グレードはリアサスペンションがトレーリングアームなのでドスッという感じの振動を残すことがある。だが、ディーゼルエンジン搭載モデルは全グレードが4リンク(マルチリンク)となる。
そして、減衰性が優れているということは振動としてのノイズにも効果がある。実際に、ザラついた路面通過時にタイヤからボディに伝わる振動を抑えるだけにゴーッというロードノイズの音量が低めで響くこともない。
では、カローラはどうか。トヨタのクルマ造りの構造改革ともいえるTNGAの採用により、新型車が投入されるごとに走りのクオリティは向上している。とはいうものの、Cセグメントのベンチマークとなるゴルフと比べてしまうと振動の減衰性は追いつけない。
特に、ツーリングの場合はセダンとはボディ剛性が異なるのか、少しばかり振動が残りロードノイズも大きめに聞こえてしまう。試乗車のW×Bが17インチタイヤを履くだけに16か15インチならタイヤで振動が減衰できる可能性はあるが、ゴルフも試乗車は17インチタイヤを装着していた。
もちろん、クオリティは振動特性だけでは評価できない。ゴルフよりもカローラが圧倒的に優れているのは、パワーユニットの効率だ。WLTCモード燃費は、ハイブリッドシステムを搭載するカローラが25.6km/Lでゴルフは17.7km/L。環境性能だけではなく、軽油の燃料代を踏まえてもカローラには追いつけない。
走りのパフォーマンスにしてもスペックを比較するとゴルフが勝るのにもかかわらず、カローラも大健闘している。モーターのアシストによりアクセル操作に応じて力強さがスムーズに立ち上がり、エンジン回転数に頼ることなく満足できる加速がこなせる。
さらに、モーターとエンジンの連携が洗練されているだけに日常的な場面では高い静粛性が維持される。発進時や速度を一定に保つと、モーターだけで走る場面もかなり多く静粛性がより向上する。
ゴルフは力強さが充実しているとはいえ、1500rpm以下の低回転域に限ってはディーゼルとして物足りない。むしろ、アクセルを踏み込むとグォーンという迫力あるエンジン音とともに想像以上にパワフルな加速が楽しめる。
なおかつ、荷物スペースはゴルフの方が圧倒的に広く213Lが上乗せされ605Lを確保。ワゴンボディを備えるクルマとして、機能最優先のフォククスワーゲンらしいクルマ造りをしている。
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