混沌を極めるコンパクトSUV市場にAUDIが送り込む大人気モデルのQ2。そこに待望のAUDIのスポーティラインナップである「S」モデルが加わった。
今回は大磯ロングビーチで行われたJAIA輸入車試乗会にてこのSQ2に試乗する機会を得ることができたので、早速レポートしていこう。
高速域に行けば行くほどフラット感が増していく乗り味
意外とおとなしめな印象の外見のチェックもそこそこに、運転席に乗り込もうとするとまず目に飛び込んでくるのがレッドをアクセントにした力強い内装加飾だ。試乗車にはオプションのインテリアデザインパッケージが装着されており、乗り込もとした瞬間にスポーティな気分に火を付けてくれる。
そしていざエンジンに火を入れるためにイグニッションスイッチをONにすると、品のある低音域が印象的なエンジン音とともにステリング越しのバーチャルコクピットが灯り、この車がれっきとしたスポーツ性能に特化したクルマであることを確信させてくれる。試しに走行モードをダイナミックに入れてアクセルを空吹かししてみると、心地よいアフターファイヤ音も楽しむことができた。
走行フィールに触れる前に、簡単にそのスペックをご紹介しておこう。エンジンは横置きの直列4気筒2Lターボで、そのパフォーマンスは最大トルク400Nmで最高出力は300psにも達する。トランスミッションは7速DCT。そして、筆者が個人的にこの車を「S」モデルたらしめる最も重要な要素だと感じたのが、その大パワーを4つのタイヤに余すことなく伝えるクワトロシステムだ。通常グレードとも言えるQ2は前輪駆動であるのに対し、SQ2は最新の”ハルデックス式”電子制御多板クラッチの働きで、前後タイヤに効率的にその大パワーを伝えることができる事に加え、当然コーナリング性能の向上にも大きく寄与しているはずである。
今回の試乗で唯一残念だったのが、季節柄試乗車にはスタッドレスタイヤが装着されていたこと。本来は19インチホイールが装着されるが、クワトロシステムの威力を発揮するべくスタッドレスタイヤを履いて雪山へ、とイメージを膨らませる読者の方々のためにも、スタッドレスタイヤでのインプレッションも必要だということで、そのフィーリングも含めてお伝えしようと思う。
まずそのエンジンフィールはまさに「S」の名に恥じない洗練されたもの。特に高回転域への吹け上がりが非常にスムーズで、300psの恩恵を直に感じることができる。当然、加速時にはマニュアルモードを選んで積極的にパドルシフトを使ったシフトアップを堪能したくなるわけだが、ドライバーのイメージするシフトタイミングからほとんど遅れることなく、軽快にシフトアップしていくサマもまた「S」たる所以だ。
一方で気になる乗り心地はどうだろうか。ハンドルを握っていると、細かい路面の凹凸やうねりをそれなりに感じる程度のハリはあるものの、走り自体は非常にフラット。
低速でギャップを乗り越えるようなシーンではそれなりの硬さを感じるが、高速域に行けば行くほどフラット感が増していくように感じた。
コーナリングでは、直進での乗り心地の良さから想像するよりもはるかにサスペンションストロークが短く、4輪がしっかり路面を掴もうとする。しかし、いかんせんタイヤはスタッドレスタイヤ。あっという間にタイヤがボディ剛性に負けてしまう印象だが、フロントタイヤがそろそろグリップを失う頃だと体が感じるのとほぼタイミングを同じくして、フロントがスルリと向きを変えていく。トルク配分がリヤへと移り、フロントタイヤがしっかりと車の「向きを変える」という仕事に集中していることが感じ取れた瞬間だった。
ベースとなるQ2の2倍のパワーを誇るSQ2は、車両本体価格も強気の599万円で、オプションを含めるとゆうに700万円を超えてくる。しかしコンパクトかつSUVとしてのユーティリティを備えたボディに隠されたそのパフォーマンスは、他のアウディSモデルにも全く引けを取らない洗練された走りを日常から堪能したいと考えるドライバーにとっては、十分その価値があると評価したい。
【Specification】AUDI SQ2/アウディSQ2
■車両本体価格(税込)=5,990,000円
■全長×全幅×全高=4220×1800×1525mm
■ホイールベース=2595mm
■トレッド=前1545、後1540mm
■車両重量=1570kg
■乗車定員=5名
■エンジン型式/種類=DNU/直4DOHC16V+ターボ
■内径×行径=82.5×92.8mm
■総排気量=1984cc
■圧縮比=9.3
■最高出力=300ps(221kW)/5300-6500rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/2000-5200rpm
■燃料タンク容量=55L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=11.6km/L
■トランスミッショッン形式=7速DCT
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、後ウイッシュボーン/コイル
■ブレーキ=前Vディスク、後ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後235/45R18(8J)
この記事を書いた人
1983年生まれ。16歳よりモータースポーツ活動を開始し、英国でフォーミュラカーレースに参戦しながら本場のドライビング理論を学ぶ。帰国後は活動の幅を広げ、豊富な経験を活かして自動車ライターとしても活動を開始。そのドライビング技術を活かしてクルマの素性を引き出すリポートを得意としている。
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