並み居る世界のスーパースポーツが軒並みモデルサイクルを縮めている中で、初出は2007年と12年選手に突入してしまったGT-R。しかしその最高峰となるニスモの2020年モデルは、レースフィールドで培った技術を惜しみなく投入した渾身の作。そう、“老舗ジャパニーズスポーツカー”の進化はとどまることを知らないのだ!
いまだ間違いなく一線級のスーパースポーツである
登場からすでに12年が経過したニッサンGT-Rだが、このクルマには乗るたびに驚かされてきた。
ボディカラーは写真のホワイトパールのほか、ブラックパールシルバー、レッドの全4色を用意。一番人気はもちろんホワイトだ。
最近では2017年モデルの改良によって、かなり大規模に手が入り完熟の域に入った。そしてこの時の最高峰モデルGT-Rニスモは舌を巻く速さを手に入れていた。
3.8L V6ツインターボユニットは、ターボチャージャーのタービンの翼枚数削減とブレードの薄肉化で14.5%軽量化を実現、レスポンスを向上させている。シフト制御もコーナー手前で低いギア段を選択するよう変更された。
それから2年、今回のGT-Rの改良はそのモデルライフで最後とも噂されるが、さらに進化を果たした。今回のニスモはスペックにこそ変化はないが、走りはさらに激変した。自分自身はすでに7月にベルリンで試乗してその進化を体感済みだが、今回日本でようやく試せる機会を得た。
GT-Rは2014年にCPS(チーフ・プロダクト・スペシャリスト)が田村宏志氏にバトンタッチした際、ロードモデルとサーキットモデルの線引きを明確にし、この時にニスモが設定された。サーキットを主戦場と考え、GT-Rの持つ潜在能力を極限まで引き上げたモデルだ。
コクピットはカーボンのトリムの他、バックスキンが奢られたステアリングがレーシーな雰囲気。
今回はその潜在能力のさらに細かな領域に手を入れることで、走りの質を高めた。内容としてはボディでは従来のルーフの工法を変更しただけでなく、カーボン製のボンネット/フェンダーを与えて軽量化を図ると同時に、フェンダーにはエアアウトレットを新設。エンジンはターボチャージャーの変更を行なって、レスポンスを向上させた。
他にもコーナリングフォースを5%も向上させた新ハイグリップタイヤの採用や、世界トップレベルの効きを実現したカーボンセラミックブレーキも搭載。またホイールもさらに軽量高剛性となり、サスペンションはより高い接地性を確保しつつ、ストロークも増したものへと進化している。合わせてレカロシートも構造を変更してよりホールド性を高めるなど、実に細かで目に見えづらいが、人の感性に響く部分が徹底して磨かれたのが今回の特徴だ。
シートはホールド性をアップさせつつ、コアフレーム構造を追加し、ねじれ剛性を20%向上、約2.8㎏の軽量化も実現している。