【国内試乗】「ジャガー Iペイス」ジャガー初のフルバッテリーBEVで孟秋の九州を駆け抜ける!

優れたパッケージであれば、クルマは面白く楽しくなる

試乗車には22インチと20インチのタイヤを履いた仕様があったが、オプションのエアサスペンションも装着されていたので、22インチでも一般道の乗り心地は悪くない。20インチよりばね下の重さは明確に感じるものの、許容範囲に収まる乗り心地を示す。高速道路では交通の流れへの順応や追い越しなどで、瞬発力のあるパワートレインのほうが使い勝手がいい。その点、BEV特有の素早いトルクの立ち上がりと、それを4輪に瞬時に伝えてしっかりとしたトラクションを確保する4WDシステムにより、動力性能の面でストレスがまったく溜まらない。そもそも内燃機搭載車でも、ジャガーは全般的にパワートレインのレスポンスがよく、BEVになってもその部分に関しては大きく変わらない。

Iペイスは90kWhリチウムイオンバッテリーを搭載し、WLTCモードで438kmという航続距離を実現。前後2基のモーターでフロントとリアのホイールをそれぞれ駆動させるAWDシステムを採用する。各モーターは路面状況に合わせて瞬時に4輪すべてに正確なトルクを配分してくれる。

ジャガーのハンドリングもまたレスポンスに優れるもので、操舵初期から繊細に反応するゲインの高さが特徴のひとつ。いっぽうで、場面によっては接地感が若干足りず、ナーバスな運転を余儀なくされることもある。これを乗りこなすのがジャガーの魅力だと捉える方もいるので、欠点と呼べるほどではない。Iペイスでサーキットを走ると、それが大幅に軽減されていると実感する。ヨー慣性モーメントは小さく接地感は高く、ナーバスな部分は影を潜め、安心してドライブできるのである。

先進のダブルウイッシュボーン式フロントサスペンション、インテグラルリンク式リアサスペンションを備え、サーキットでも俊敏なハンドリングと卓越した乗り心地を提供する。

Iペイスは重心が低く前後のオーバーハングが短く重量配分も適正になっていて、これが正確で俊敏で安定したハンドリングを実現しているのだけれど、いずれも優れた操縦性を成立させるに不可欠な要件である。詰まるところ、パワートレインが内燃機であろうとBEVであろうと、物理の神様に逆らわない優れたパッケージであれば、クルマは面白く楽しくなるのである。

フォト=ジャガー・ランドローバー・ジャパン ル・ボラン2019年12月号より転載

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