想像を超えていた新型911の完成度
アウディRS5スポーツバックは発売から間もないニューカマーではあるが、もとのA5は本国で2016年に発売。世代的には今回のライバルやアウディA6-A8などよりも少しだけ古い。なぜそんなことを最初に言及するかといえば、RS5スポーツバックは熱いドライバーには堪らない獰猛さをみせてくれるものの、今回の趣旨である万能性や快適性とのバランスはあまり気にしていないように思えるからだ。
乗り心地は硬めで路面の凹凸を拾うとボディはノッシノッシと上下動する。普段使いでは高級で洗練された乗り味が欲しい人にはちょっと向かないかもしれない。
ただし、ワインディングでの興奮度の高さはピカイチだ。2.9L V6ツインターボが持てる力を振り絞って猛然と加速し、優れたクワトロシステムがトラクションを最大限に発揮して前へ前へと突き進む。絶対的な速さでは他モデルもさすがだが、RS5スポーツバックのなりふり構わず猪突猛進していくフィーリングは独特でドライバーを熱くさせるのだ。ペースがあがっていくとサスペンションの硬さもピタリと合ってくる。レーシングカーを公道で走らせているような感覚でもある。
日本に上陸したばかりの新型911は、今回の4台のなかでは外形的にもっともスポーツカー純度が高い。後席はミニマムで、911としては大きくなったとはいえ他よりはコンパクトだ。
だから快適性や上質感などでは少々甘めに見なければいけないかと思いきや、それはまったく誤った見方だった。ボディの剛性が高いのは言うまでもないが、各部の取り付け剛性や巧みなマウント類などの総合的な実力の高さで、一般的な走行でもあきれるほどに動きが上質かつシュアなのだ。スポーツカーのわりに乗り心地もいいなんて次元を飛び越えて、タイヤやサスペンションをはじめとしたシャシーがいつでも完璧な仕事をしているから、どんな場面でも動きに文句のつけようがない。
パワートレインでも、たとえばアイドリングストップからのエンジン再始動、そして発進といった一連の流れは、他のどんなクルマよりも素早くスムーズ。一体これはなんなんだと混乱するほどに、躾が完璧だ。
ワインディングでの走りもライバル達を霞ませてしまった。後輪ステアと4WDを組み合わせた新型911カレラ4は、フロントの荷重の少なさをまったく感じさせないほど素直なターンインをみせ、スムーズかつ俊敏に曲がりながら抜群の安定感もみせる。もちろんコーナー脱出時の強烈なトラクションは唯一無二の味わいだ。RR系911のひとつの完成形ではないかと思えるほどだ。
ドイツのスポーツカー達はどれも最先端テクノロジーによって他国の追従を許さないほどに実力が高いが、新型911は想像を超えていた。ピュアスポーツ的なエモーショナルを求めるファンにとっては洗練・快適といった性能は逆にじゃまくさく思えるかもしれないが、パフォーマンスとの両立度の高さには頭が下がる。
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