静粛性に加え動力性能も一層向上
前席でも後席でも新型フライングスパーに乗って最初に気づくのは、さらに高まった静粛性だ。コンチネンタルGTと同じ635ps、900Nmを発生する6リッターW12ツインターボTSIユニットも1500rpmほどで100km/h巡行ができるうえ、8速DCTとのマッチングもよく、とにかくスムーズで静か。加えてデフォルトのベントレー・モードや、コンフォート・モードでは、60%もエアボリュームが上がったという3チャンバーエアサスペンションが実に良い仕事をし、まるで寝心地のいい枕に包まれているかのような素晴らしい乗り心地を提供してくれる。聞けばアルミを多用したモノコックは従来から38kgも軽くなるなど、各部に軽量化が施された結果、車重は先代よりも123kg軽い2437kgとなっているというが、車体の剛性感、安心感に不満は一切ない。むしろ感覚的にはよりしっかりと、重厚になったと感じるくらいだ。
しかし、一度右足に力を入れるとレブカウンターは6000rpmまで一気に吹け上がり、2.5トン近い車体の重さを感じさせずに猛然と加速する。カタログスペックを見ると0-100km/h加速は3.8秒とコンチネンタルGTのわずか0.1秒落ち。最高速に至っては333km/hと全く同じである。エンジニア氏によるとウイングなどのデバイスを用いずにこの数値を達成したことこそ、空力特性に配慮したボディデザインのもうひとつのキモなのだという。
そして舞台がワインディングに移ると、フライングスパーはまた違う魅力を見せる。GTより436mm長い全長、344mm長いホイールベース、177kg重い車重、そしてこれまでの穏やかな乗り味から緩慢な動きを想像していたのだが、リヤシートの存在を忘れてしまうほど、その身のこなしが軽やかなのだ。しかもスポーツモードにすると、エアサスがグッと締まり、エンジン、DCTのレスポンスも鋭くなって、ペースを上げてもロールをするどころか、タイヤすら泣かずにグイグイと曲がっていくのである!
これは既にGTにも採用されている48V電動スタビライザーのベントレーダイナミックライドやトルクベクタリングはもちろん、フライングスパーでベントレー史上初めて採用された4WSシステム“オールホイールステアリング”の効果が大きいのは間違いない。とにかくあらゆる状況で、コンチネンタルGTと変わらない感覚でドライブできるのには驚いた。
今やハイパワー、ハイパフォーマンスを謳うラグジュアリー・サルーン市場も、多くのメーカーが参入して飽和状態にあるが、パフォーマンスはもちろんのこと、スポーツ性とラグジュアリー性という相反する要素を高いレベルで両立させているという意味においてもフライングスパーは、他の追随を許さない強い魅力と実力を放っている。さすがは100年にわたり一貫してドライバーズカーを送り出してきたベントレーの名に相応しい、スーパー4ドアGTの誕生である。
Specification
ベントレー フライングスパー
■車両本体価格(税込)=26,158,000円
■全長×全幅×全高=5316×1978×1484mm
■ホイールベース=3194mm
■トレッド=前–、後–mm
■車両重量=2437㎏
■エンジン種類=W型12気筒DOHC+ツインターボ
■内径×行程=84.0×89.5mm
■総排気量=5950cc
■圧縮比=–
■最高出力=635ps(467kW)
■最大トルク=900Nm(20.9㎏-m)
■トランスミッション形式=8速DCT
■サスペンション形式=前Wウイッシュボーン/エア、後マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ=前265/40ZR21、後305/35ZR21
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