そのマルチパーパスなキャラクターから、大小あらゆるカテゴリーにおいて主流となりつつSUV。そのオルタナティブとしてスタイリッシュなクーペモデルも各社から続々とリリースされている。その最新版となるのがQ3スポーツバックだ。Q3との差別化、 Q2に対するアドバンテージはどこにあるのか!?
見た目どおりにスポーティ!
FFでもハンドリングはニュートラルステア。コーナーの連続では、フロアをフラットに保ったまま気持ちよく駆け抜けていく。
世界的にみても今や新車販売の3台に1台がSUVと、伸長を続けるそのカテゴリーにおいて、ホットなコンセプトといえばクーペスタイルということになるだろう。アウディは現在、膨らみ続けたラインアップの整理を公言しており、目先の欧州でグレード数の削減に取り組んでいる。ステークホルダーに向けた経営効率化の一環とはいえ、おそらくは他ブランドも追従することになるのではというのは個人的な見立てだが、そんな中でもSUVカテゴリーは大事とみえて、このスタイリッシュなクーペスタイルに耳慣れたスポーツバックの名を充てがった。Q8の登場もあって多くが想像しただろうQ4の名前は、商標的な問題がない限り別のモデル用に押さえてあると考えるのが自然だろう。
Q3に対して約30mmルーフラインが下げられたことでスポーティな風情を見せるスタイリング。タイトなグリーンハウスが躍動的。
Q3スポーツバックのベースとなるのは、先駆けて欧州でフルモデルチェンジを受けたQ3だ。車寸は4500×1843×1556mmと、全長は16mm長く、全幅は6mm狭く、全高は29mm低い。わずかな差ではあるものの、ライバルのようなノッチを持たないシンプルなファストバックとクワトロのDNAを形状的に表したブリスターフェンダーの力強さがその印象を大きく違えている。試乗車は全てオプションで用意される20インチの大径タイヤ&ホイールを履いていたこともあって、存分にスポーティぶりを湛えていた。
コクピットまわりの基本造形はQ3と共通だが、トリムにはアルカンターラを用いるなどして差別化。アウディコネクトも標準装備。
複雑なプレスを持ちながら隙間も目立たず塊感がしっかり保てているのは、相変わらずの精緻な作り込みによるところだろう。内装の造作もQ3に準拠するものの、ダッシュボードのトリムやドアのアームレスト部はアルカンターラが貼り込まれ、色味によっては華やかな印象を受ける。メーターパネルはインフォテインメントシステムの情報を緻密に反映しているほか、Apple CarPlayやAndroid Autoにも対応。さらにオンライン検索や車内のWi-Fiスポット化などを実現するアウディコネクトの採用など、コネクティビティにも力が注がれている。
ラゲッジルーム容量は標準で530L。全長がわずかに伸びているのが効いてか、カタログ値でいうとQ3よりも大きいのは意外だ。
搭載エンジンはガソリン2種類、ディーゼル2種類となる。日本仕様における詳細は未定だが、今回は導入可能性の高いベルトドリブンの48Vマイルドハイブリッドを軸に試乗することとなった。
Q3スポーツバックはCセグメント相当の車格だが、その感覚からすれば異例に乗り心地が優れている。ましてや前述の通り、試乗車は全て20インチタイヤを装着していたことを鑑みればライドコンフォートのレベルは相当に高い。同様に静粛性やパワー&ドライブトレイン起因の振動もすっきりと整えられており、スペシャリティモデルらしい上質な移動時間を過ごすことができる。見た目によらず後席の居住性にまったく問題はないが、前席に比べると乗り心地的には若干突き上げ感が大きい。
エンジンラインナップは2種の2L TDIと2Lと1.5LのTFSIという布陣。日本仕様の主力は1.5L TFSIの48Vマイルドハイブリッドか。
コーナリングの所作は、至ってニュートラルだ。ステアリングはバリアブルレシオ化されているが、切り込みとロールの関係は努めて比例的で、クワトロの接地力に頼らずとも安心感とともに充分スポーティなドライブが楽しめる。パワー的には2Lガソリンやディーゼルでも十二分に受け止める度量は持ち合わせるも、件の1.5Lはともあれ軽快さが際立つかたちだ。かつカントリー路が主とはいえ、試乗中に記録した20km/L近い燃費をみるに、日本での商品力は充分に高いと思わせられた。
弓なりのルーフラインから想像するほど後席のヘッドルームはタイトではない。ただし、乗り心地は前席に比べてやや硬さを覚える。