最新のBMWアルピナ モデルをザルツブルクでアタック

サーキット走行で見極めたプレステージ性とポテンシャル

サーキットのパドックに到着して、まず目にとまったのが上品なアルピナブルーをまとったB7リムジンであった。「なぜラグジュアリーサルーンをレーシングコースで試乗?」と、アンドレアスに質問したところ「クルマはジュネーブの後で完成してホモロゲーションは取れたのですが、公道を走らせるための型式認定が間に合わず、仕方なくにここを選びました。しかし最高出力608psと最大トルク800NmのB7にとって、持ってこいの環境だと思います」と自信満々であった。

BMW ALPINA B4 S BITURBO EDITION 99

Specification■全長×全幅×全高=4640×1825×1373(1380※)mm■ホイールベース=2810mm■車両重量=1690(1915※)kg■エンジン種類/排気量=直6DOHC24V+ビターボ/2979cc■最高出力=452ps(332kW)/5500-6250rpm■最大トルク=680Nm(69.3kgm)/3000-4500rpm■トランスミッション=8速AT■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク■タイヤサイズ(F:R)=245/30ZR20:265/ 30ZR20 (※カブリオ)

エクステリアをチェックしてみると、ベースとなったBMW7シリーズと印象はほとんど変わらず、ワイドなキドニーグリルがやや威圧的ながら、プレステージ性と存在感を放っていた。そこからつぶさにチェックしてみると、スポーツシャーシに合わせて装着されている、前255/40ZR20、後295/35ZR20サイズのミシュラン・パイロット・スポーツが、最高速度330km/hというメルセデスAMG S63を超えた世界最速4ドアリムジンの存在感を高めている。
さらに観察を続けると「ALPINA」ロゴの入ったリップスポイラーやリアスポイラー、そしてリアエンド左右から覗く左右デュアルのマフラーカッターが、控えめにアルピナを主張していることが分かる。一方のインテリアは目を見張るばかりのエレガンスとラグジュアリーな雰囲気で満たされている。高品質なレザーとウッド、アルミ素材を使って、ドイツ最高峰のクラフトマンシップで仕上げられたキャビンのカップホルダーには、ミネラルウォーターではなく、シャンペングラスが似合いそうだ。

B4 Sクーペのエディション99専用となるラテラルサポートに優れた電動スポーツシートは、素材はメリノレザーとアルカンタラのコンビだ。エンジンルームにも限定シリアルナンバーがプレートに刻まれる。

搭載されるフルデジタルの操作系は、BMW最新のオペレーティング・システム7.0で、緻密なボイス入力が可能である。4.4L V8ビターボは最高出力608ps(447kW)と最大トルク800Nmを発生させるが、その時の回転数は2000rpmにとどまり、先代B7ビターボより1000rpmも低い回転域で発生している。さらにこのエンジンには欧州で直噴ガソリン・エンジンに装着が必須となっているOPF(直噴ガソリン用PMフィルター)が装備されており、その影響によるパワーダウンに対応するべく、インテークおよびエキゾースト系を完全に新設計としてアップデート。さらには新しいギャレット製ターボチャージャーが素晴らしいピックアップを約束している。

これによってコースイン時のダッシュは素晴らしく、0→100km/h加速3.6秒という数字は説得力を持つ。驚くべきことに最初の右コーナー直前では、およそ160km/hからの急制動でも姿勢を崩さず、フィードバックが確かで軽いステアリングを切り込んでいくと、約2.1トンの巨艦はタイヤのスキール音さえ出さずにスムーズなコーナリングを披露してくれた。また、軽く200km/hを超えるバックストレッチでは、フルタイム4WDと四輪操舵がもたらす高速安定性とポテンシャルの高さを垣間見せた。

フェリック・グレーの20インチ鍛造アルピナ・クラシック・ホイールとブラック光沢仕上げのトリムエレメントの組み合わせが精悍さを際立たせる。ボディカラーは70年代レーシングカー由来のファイヤーオレンジをはじめアルピナ・ブルー、ブラック・サファイア、ミネラル・ホワイト、グリージョ・メディオの計5種類を用意する。

あっという間のサーキット走行だったが、このB7は卓越したパワープラントと優れたシャシーセッティングで文字通りの世界最速のラグジュアリー・リムジンであると同時に、高品質でラグジュアリーなインテリアで、日常生活の延長となるドライブでも別世界へいざなうという、アルピナ・マジックに包まれる幸せを味わえることができた。このアルピナB7リムジンは、すでに日本のアルピナ総代理店であるニコル・オートモビルズから販売が始まっている。

極上なアルピナB7に続いて試乗したのは、現行4シリーズ・クーペ(F32)とカブリオレ(F33)をベースにしたアルピナB4 Sビターボ「エディション99」であった。すでに市場にはG世代が登場しているが、フルモデルチェンジとは言えキープコンセプトで、キャリーオーバーともいえるデザインをみれば、まだまだ市場価値は存在するだろう。そこでアンディが考え出したのが99台限定のファイナルモデルというわけだ。搭載される3L直6ビターボは452psと680Nmを発生させ、0→100km/hを3.9秒(カブリオレは4.3秒)、最高速度は306km/h(カブリオレ303km/h)とそれぞれ向上させている。

この2モデルはサーキット走行でもっとも楽しめるアルピナであり、フロイデ・アム・ファーレン(駆けぬける歓び)には「年式落ち」などという言葉が通用しないことを証明するモデルであった。次期4シリーズは間もなく登場するが、まだまだ高いポテンシャルを有する、このアルピナB4 Sの限定車はコレクターズアイテムとなる可能性すら秘めているのだ。

ALPINA B6 GT3を同乗体験

試乗会の余興ではないが、アンドレアス・ボーフェンジーペン氏がドライブするアルピナB6 GT3レーシングマシンに同乗。レース経験豊富なアンディのドライブテクニックは信頼できるが、激しい縦横Gは勘弁とのこと。

リポート:木村好宏/Y.Kimura フォト:ALPINA B.B.GmbH

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