ハイチューン版であってもM5は日常的な場面も楽しめる
M4コンペティションは、ベースモデルが積む3L直列6気筒ツインターボエンジンに対して19psが上乗せされ450psを発揮する。最大トルクは550Nmと変わらないが、それが維持される5500rpmを超えてからの落ち込みを抑えることで、エンジン回転数によってパワーを稼いでいるのだ。
BMW M4 Competition
ただ、その結果として得た速さは限定的だ。7速M DCT仕様の0→100km/h加速はベースモデルに対して0.1秒短縮の4秒となる。単純計算すれば、2モデルが同時スタートでフル加速して100km/hに達したとき、M4コンペティションがベースモデルに対して約3m先行するだけだ。
だが、場面がサーキットならパフォーマンスの違いが明らかになる。100km/hまでは2速の守備範囲となるが、3速、4速とシフトアップを繰り返すほどにパワーの威力が明らかになる。富士スピードウェイのホームストレートでは、ベースモデルは4速7000rpmを超えると加速の伸びに勢いを感じなくなるがM4コンペティションはレブリミットの7600rpmまでパワーがギッシリ詰まっている感覚が得られるのだ。
エンジンだけではなく、ダンパー減衰力の制御を専用設定とし、スタビライザーも変更した「アダプティブMサスペンション」を装備。多板クラッチを制御しリア左右輪のトルク配分を可変する「アダプティブMディファレンシャル」やDSCの設定もベースモデルとは異なる。タイヤもワンサイズワイドな20インチを装着。それだけに、コーナリング限界が向上しハンドリングの精度も高いため、狙ったラインがトレースしやすくなるのだ。
近年、レース参戦のためではなくパフォーマンスのすべてを体感するためにサーキットを走る人が増えている。そんな機会があるなら、間違いなくM4コンペティションはオススメのモデルとなる。
BMW M5 Competition
そして最新となるM5コンペティションは、ベースモデルの4.4L V型8気筒ツインターボエンジンに対して25ps上乗せさの625psに到達する。そのパフォーマンスはサーキットでこそ本領が発揮される。だが、日常的な場面でもポテンシャルの高さが実感できる。なぜなら、Mスポーツ・エキゾースト・システムを装備するからだ。
エンジン制御を「SPORT」にすると、アクセル操作に対するトルクの立ち上がりがシャープになることに加え、いかにも爆発圧力が高そうな超刺激的な鼓動音を刻みはじめる。こうしたサウンド演出により、交差点からの発進でフル加速するまでもなくドライバーの気分を高揚させる。そして、高回転域までブン回せる高速道路の本線合流などでは爆音が響く。鼓動の密度が増して連続音になり、ストーリー性あるドラマチックな変化がもたらされ、まさにエンジン回転数でパワーを稼ぎ出しているかのような臨場感が高まるのだ。
サスペンションは、ベースモデルと比べてスプリングが10%強化され車高が7mmさがる。乗り味自体も硬めとなるが、サスペンションはスムーズに動くので不快感を伴う突き上げを回避。ダンパー制御が「COMFORT」なら、ラグジュアリー・セダンとしても扱える。M5は、同じコンペティションでもM2やM4よりも幅広い場面で楽しめるモデルといえるわけだ。
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