エクストラパワーをどう活かす? 萩原秀輝が考察する 「コンペティション」の意義

ハイチューン版であってもM5は日常的な場面も楽しめる

M4コンペティションは、ベースモデルが積む3L直列6気筒ツインターボエンジンに対して19psが上乗せされ450psを発揮する。最大トルクは550Nmと変わらないが、それが維持される5500rpmを超えてからの落ち込みを抑えることで、エンジン回転数によってパワーを稼いでいるのだ。

BMW M4 Competition

【Specification】■全長×全幅×全高=4685×1870×1385mm■ホイールベース=2810mm■車両重量=1640kg■エンジン種類/排気量=直6DOHC24V+ツインターボ/2979cc■最高出力=450ps(331kW)/7000rpm■最大トルク=550Nm(56.1kgm)/2350-5500rpm■トランスミッション=7速DCT■サスペンション(F:R)=ストラット:5リンク■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク■タイヤサイズ(F:R)=265/30ZR20:285/30ZR20■車両価格=13,070,000円(8%税込)

ただ、その結果として得た速さは限定的だ。7速M DCT仕様の0→100km/h加速はベースモデルに対して0.1秒短縮の4秒となる。単純計算すれば、2モデルが同時スタートでフル加速して100km/hに達したとき、M4コンペティションがベースモデルに対して約3m先行するだけだ。

M4クーペ・コンペティション専用となる、上質なレザー素材を用いた軽量Mスポーツシート。ヘッドレスト一体型のバケットタイプながら、サイドサポート調節が自在でバックレストにカットアウトが施されるなど、スポーティなイメージを際立たせたデザインも秀逸。

だが、場面がサーキットならパフォーマンスの違いが明らかになる。100km/hまでは2速の守備範囲となるが、3速、4速とシフトアップを繰り返すほどにパワーの威力が明らかになる。富士スピードウェイのホームストレートでは、ベースモデルは4速7000rpmを超えると加速の伸びに勢いを感じなくなるがM4コンペティションはレブリミットの7600rpmまでパワーがギッシリ詰まっている感覚が得られるのだ。

スタンダードのM4搭載ユニット比で最高出力+19psとなる450ps/7000rpmにまで増強された、S55型3L直6直噴ツインターボ。トランスミッションは、7速DCTもしくは6速マニュアルからセレクトできる。20インチのスタースポーク鍛造ホイールと、前265/30、後285/30扁平のタイヤは標準仕様、ゴールドキャリパーのMカーボンセラミック・ブレーキはオプション装備となる。

エンジンだけではなく、ダンパー減衰力の制御を専用設定とし、スタビライザーも変更した「アダプティブMサスペンション」を装備。多板クラッチを制御しリア左右輪のトルク配分を可変する「アダプティブMディファレンシャル」やDSCの設定もベースモデルとは異なる。タイヤもワンサイズワイドな20インチを装着。それだけに、コーナリング限界が向上しハンドリングの精度も高いため、狙ったラインがトレースしやすくなるのだ。

近年、レース参戦のためではなくパフォーマンスのすべてを体感するためにサーキットを走る人が増えている。そんな機会があるなら、間違いなくM4コンペティションはオススメのモデルとなる。

BMW M5 Competition

【Specification】■全長×全幅×全高=4965×1905×1480mm■ホイールベース=2980mm■車両重量=1950kg■エンジン種類/排気量=V8DOHC32V+ツインターボ/4394㏄■最高出力=625ps(460kW)/6000rpm■最大トルク=750Nm(76.5kgm)/1800-5860rpm■トランスミッション=8速AT■サスペンション(F:R)=ダブルウィッシュボーン:マルチリンク■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク■タイヤサイズ(F:R)=275/35ZR20:285/35ZR20■車両価格=18,230,000円(8%税込)

そして最新となるM5コンペティションは、ベースモデルの4.4L V型8気筒ツインターボエンジンに対して25ps上乗せさの625psに到達する。そのパフォーマンスはサーキットでこそ本領が発揮される。だが、日常的な場面でもポテンシャルの高さが実感できる。なぜなら、Mスポーツ・エキゾースト・システムを装備するからだ。

前席のMマルチファンクション・シートはスタンダードなM5と共通。ヘッドレストは調整可能でショルダー部とサイドのサポートが特徴的。MストライプがあしらわれたMシートベルトはコンペティション専用だ。

エンジン制御を「SPORT」にすると、アクセル操作に対するトルクの立ち上がりがシャープになることに加え、いかにも爆発圧力が高そうな超刺激的な鼓動音を刻みはじめる。こうしたサウンド演出により、交差点からの発進でフル加速するまでもなくドライバーの気分を高揚させる。そして、高回転域までブン回せる高速道路の本線合流などでは爆音が響く。鼓動の密度が増して連続音になり、ストーリー性あるドラマチックな変化がもたらされ、まさにエンジン回転数でパワーを稼ぎ出しているかのような臨場感が高まるのだ。

最高出力625psに最大トルク750Nmというスーパーカー級に強化された4.4L V8ツインターボ・ユニットは、8速スポーツATとフルタイム4WDシステムを組み合わせる。バイカラーの20インチ鍛造Yスポーク789Mホイールはコンペティションモデル専用デザインとなる。

サスペンションは、ベースモデルと比べてスプリングが10%強化され車高が7mmさがる。乗り味自体も硬めとなるが、サスペンションはスムーズに動くので不快感を伴う突き上げを回避。ダンパー制御が「COMFORT」なら、ラグジュアリー・セダンとしても扱える。M5は、同じコンペティションでもM2やM4よりも幅広い場面で楽しめるモデルといえるわけだ。

 

リポート:萩原秀輝/H.Hagihara フォト:小林俊樹/T.Kobayashi BMW COMPLETE 2019 vol.72より転載

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