21世紀に間に合いました「トヨタ・プリウス」【世界の傑作車スケルトン図解】#25-2

燃費の常識を覆し、乗ってるだけで「いい人」に

初代プリウスが登場した1987年当時、全長4m以上の5人乗りセダンが28km/Lという低燃費で走れるなど、誰も想像すらしたことがなかった。「半ガス半電」で、しかも価格がカローラの1.5倍もするとあっては、二の足を踏むのも当然だった。しかし実際にはそこそこ受け容れられ、着実に地歩を築いていった。大幅な低燃費がクルマの価格差など逆転するという家計簿的な計算だけではなく、CO2排出削減を人々が理解するようになった結果でもあった。プリウスを選ぶことで、自分が「いい人」になれたかのような気分が迫って来るのだった。

前後バンパーに黒い樹脂製ガードが付いているのが、ハイブリッド時代の開祖であるオリジナル・プリウスの証。3本スポークに見えるのはホイールカバーで、その奥に鍛造軽合金の専用ホイールが。

特徴はパワートレインにある。右側のエンジンに対し、左側のモーターがポイントだ。最もエネルギーを要する静止からの発進ではまずモーターだけが働き、ある程度の勢いがついたところで初めてエンジンが目覚める。そのまま定速走行などでは、負担が小さく低燃費を期待できるからエンジンが主役。急加速や登坂など余分の力が必要になるとモーターも加勢する。惰力走行や降坂時にはエンジンが停まる。減速や停止のためにブレーキを踏むと、路面から逆駆動されたモーターが発電機に変身し、その抵抗が電磁石の力で車速を落とす。停車の直前まで、液圧はパッドを押さない。

2003年に登場した2代目プリウス。3ナンバーサイズになったボディはスマートな5ドアハッチバック。初めてEV走行モードを備えた。2005年のマイナーチェンジで乗り心地を改善。

エンジンとモーターとのやり取りは、両者の間に置かれた動力分割機構によって管理されていた。知恵の輪のような作動で理解が難しいためかイラストには描き込まれていないが、円筒のケーシングの中に遊星ギアをおさめた簡潔な構造物。外筒がエンジン側に、中心軸がモーター側に直結し、内部の遊星ギアを自由に回転させたりロックしたりすることで、エンジンのみ、モーターのみ、両方いっしょというように駆動輪(前輪)への動力を選択する。

3代目は2009年に登場。2011年にはワゴン(プリウスα)、2012年からはPHV仕様も発売されるなど、トヨタのみならず世界のHV界の先頭を走り続けている。

コンパクトな5ナンバーサイズのボディは、全高1490mmと高めの着座姿勢のため視界は広く乗り降りも容易。センターメーター式のダッシュボードも当時まだ珍しかったが、未来的な雰囲気で評判を呼んだ。

2012年から一般向けにも販売が開始されたプラグインハイブリッド(PHV)仕様。ニッケル水素バッテリーをリチウムイオン式(容量4.4kWh)に置き換えたほか充電機構も搭載し、PHV計算値で61km/Lもの超低燃費を誇る。モーターのみで26km以上の走行も可能。

この初代プリウスに重大な変更が施されたのは2000年のこと。後席バックレストの背後に置かれていたニッケル水素バッテリーを床面に寝かせ、後席を折り畳むトランクスルーにした時、ハイブリッドの充電・放電のサイクルも大きく見直され、その後のプリウスの内部基本形が確立された。ちびちび用心深く使うのではなく、ガッと消費して一気に蓄電する方式に変えたことで、走りも燃費も向上した。

外部のコンセントからの充電所要時間は100Vで3時間、200Vなら1.5時間。チャデモなど急速充電には対応していない。294〜321万円とHVプリウスよりかなり高価なため、まだ販売は伸びていないが注目度は最高。海外ブランドの新しい動向も見ると、これから次世代車の主流になる可能性が大きい。

この基本コンセプトを受け継いで、プリウスは2代目(2003年)、3代目(2009年)と巨大なヒットを放ち続けている。

 

解説:熊倉重春

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