【国内試乗】「CADILLAC CT6」デザインを刷新し走りもさらにアップデート!

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アメリカンラグジャリーを味わえる貴重な一台

1902年創業以来、110年を超える歴史の中で斬新かつダイナミックなデザインと世界に先駆けた先進テクノロジーを採用しているのが実はキャデラックの伝統である。そんな中、フラッグシップモデルのCT6がエクステリア&インテリアデザインを刷新。さらに細部にわたりチューニングを施し“ドライバーズプレステージセダン”として走りにも磨きをかけてきた。もちろん伝統に則り、世界初の技術も搭載している!

アイコンである縦長デザインを基調にした DRL(デイタイムランニングライト)とクリスタルフォグ仕上げのグリルが圧倒的な存在感を漂わせる。低く伸びやかな美しいプロポーションに20インチの大径ホイールが映える。

モチーフは、2016年8月のペブルビーチで披露されたエスカーラ・コンセプト。次期フラッグシップと言われるそのデザインを先取りして、キャデラックCT6がリフレッシュを行った。

逆台形の大型グリルや垂直に伸びたデイタイムランニングライトといった基本要素は共通なのに、これまでのシャープさに若干オーガニックな印象がプラスされたことで、雰囲気は従来とは結構違っている。本国デビューから4年、日本導入から3年を経てのフェイスリフトとしては、間違いなく成功だろう。
見た目だけでなく中身にも、しっかり手が入れられている。ハードウェアで一番大きな変更は、V型6気筒3.6Lエンジンに組み合わされるATが8速から10速に改められたことだろう。最高出力340ps、最大トルク386Nmという、今や貴重な自然吸気ユニットのスペックは変わらず。駆動方式も、引き続きフルタイム4WDを採用する。

340ps/386Nmを発揮する3.6L V6エンジンには、新たに10速ATを組み合わせることで、スムーズで切れ目のないレスポンスを実現。

そしてもう一点が、世界初だという自律航法マップマッチング対応クラウドストリーミングナビゲーションの搭載だ。ナビデータはすべてクラウドからリアルタイムで取得。常に最新の情報が入手できる。これに車載センサーによる車速、向き、明るさ、傾きのデータを組み合わせることで、GPS測位できない環境でも正確に自社位置を測位できるというものだ。
先鋭的な外観に対して、ここはアメリカンラグジャリーの良き伝統を守る、ふっかりとしたシートに身を預け、各機能をチェックしてみる。このナビゲーションは高機能なだけでなく使用感もなかなかのものだ。地図の移動や拡大、縮小はスマートフォン感覚で出来て、動きは俊敏。地図の上品な色合いも室内の景色を邪魔することもない。
走り出すと、従来のこのセグメントのサルーンとしてはかなり硬めだった乗り心地が、ずいぶんしなやかになったように感じられる。マグネティックライド特有の細かな振幅感は残るが、これなら後席に人を乗せるのにも躊躇しないで済みそうだ。

最上級セダンにふさわしい風格を備えるインテリア。GMジャパンが国内大手地図会社、ゼンリンデータコムと共同開発した世界初の完全通信車載ナビ「クラウドストリーミングナビ」を搭載。

それでいて切れ味鋭いフットワークは変わっていない。アルミをはじめと様々な素材を組み合わせた軽量ボディに、後輪操舵も効いているのだろう。今回のデザイン変更で全長は5.2mを超えたが、走りはその体躯を意識させることなく、それどころか車体をひと回り小さく感じさせながら、小気味よく曲がっていく。首都高速を流して走るのが、何と気持ちよかったことか!
10速ATは従来の8速より低速側も高速側もほんのわずかにレシオが広がっているが、主眼を置いたのはクロスレシオ化の方らしく、きめ細やかな変速でうまくトルクバンドを繋いでいく。従来は速度と回転数によってアクセル操作への反応にちょっともどかしいところがあったが、これなら場面を選ばずスポーティに走らせることができそうだ。
アメリカンラグジャリーとして貴重な1台、キャデラックCT6は、大きな変化ではないが、しかし確実な進化を遂げた。従来、1千万円を下回っていた価格が少しだけ大台を超えてしまったのが惜しいが、内容を考えれば依然として非常に説得力ある、惹かれる1台であることは間違いない。

フォト=宮門秀行/H.Miyakado ル・ボラン2019年9月号より転載

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島下泰久
AUTHOR
2019/08/23 11:20

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