メルセデス・ベンツ ESF2019の全貌 自動運転を見据えた次世代の安全技術

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“ESF”とは“Experimental Safety Vehicle(=Fahrzeug)”の略。メルセデス・ベンツがこれまで先進の安全技術を世の中に披露してきたコンセプトモデルとプロジェクトの名称である。その最新型となる“ESF2019”が公開された。今回のテーマは「自動運転における安全技術」である。

自動運転を見据えたメルセデスの安全思想

1971年にスタートしたESFプロジェクトは、W114のSクラスをベースに開発されたコンセプトモデルが最初で、衝突実験のインパクトスピードが80km/hでもキャビンが守られるボディ構造や、歩行者や自転車への衝撃を軽減するためのバンパー、前席のみならず後席用エアバッグが装備されていたりと、いまでは当たり前になっている数々の安全装備や安全に対する考え方がすでに盛り込まれていた。
その後、メルセデスは数々のESFを発表してきたが、“ESF2019”がこれまでのESFと決定的に異なるのは、自動運転を見据えた安全技術の提案がなされている点にある。

これまでのESFコンセプトモデル。初代は1971年に発表。当時は奇想天外と思われたいくつもの技術が、後に当たり前の装備となった。

ドライバーが運転するクルマと自動運転のクルマは、それぞれの特性に見合った安全思想と装備が必要になるというのがメルセデスの主張。彼らがそう考える理由は主にふたつあって、ひとつは自動運転中のドライバーの正確な位置と体勢を把握しなくてはならないということ。もうひとつは、それまではドライバーがアイコンタクトやジェスチャーなどによって図っていた車外とのコミュニケーションを、自動運転中はクルマが代わりに行うということだ。

GLEをベースに開発されたESF2019に装備されている安全装備の数々。「ESFを中心に360度の範囲で、見えない安全のシールドが張り巡らされていると考えてください」とは担当エンジニアの弁。

ステアリングを握る必要がなくなり、セカンドタスク(=運転以外の行為)が許される自動運転レベルになると、ステアリング内のエアバッグでは不十分となる。ドライバーがステアリングを握っている状態が前提での設計になっているからだ。自動運転中、ドライバーはシートを倒してスマートフォンをいじっているかもしれないし、身体を横に向けて他の乗員と話をしているかもしれない。ただし、シートに座ってシートベルトをしている状態だけは保持されているから、そこで想定できる、いかなる体勢にも対応可能なエアバッグが必要となるわけだ。アイコンタクトやジェスチャーなどは、実は安全でスムーズな交通の流れを作る上で重要なコミュニケーション手段となっている。こちらが動き出す意思がないことを伝えてから、歩行者がクルマの前を通り過ぎるとか、渋滞の最後尾で後続車にハザードランプでそれを伝えるとか、ドライバーの意志や判断による車外とのコミュニケーションが自動運転中に欠落しないよう、新たな方法が求められる。

エアバッグを内蔵しないので、必要最低限のサイズにまで縮小されたステアリング。自動運転モードではペダルもフロア内に格納される。

リポート:渡辺慎太郎/S.Watanabe フォト:メルセデス・ベンツ日本 ル・ボラン2019年8月号より転載

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