クラウドとの通信は購入から3年間は無償
オンライン/オフラインとさらっと流したが、MBUXは車載コンピュータとクラウドをパラで走らせてより的確な応答を引き出そうというハイブリッド方式を採る。オン/オフライン設定を切り替えつつ使ってみると、目的地の天気や前述の「これでも最善を尽くして……」というようなエモいトークはクラウドの担当、ナビ設定や各種ヒーターなど車両操作についてはローカルで引き受け、「しりとり」を「シートヒーター」と取り違えるあたり、どうも車両操作にまつわるワードが優先して推測されるようだ。ただし車両操作といってもACCの設定が面倒だからと「前のクルマについていって」「リミッターオン」など運転に関わる操作は受け付けない。確かに同乗者が「もっと速く!」なんて言うのに従われたら危険すぎる。
車載コンピュータにはニンテンドースイッチの共同開発でも知られるNVIDIA社製プロセッサを採用。賢いことに「下道でいいや」とか「進行方向を上にして」なんて言い回しにも適切な操作を選択してくれる。このAIは学習機能を持ち、ある時刻に決まった電話をかけるユーザーにはいい頃合いにその電話番号をおすすめ表示したりするように育つ。ちなみに筆者が選択したプロファイルはTBSラジオ好きに育てられたらしく、インターFMを希望しても周波数を指定しない限りかたくなにTBSラジオがかかり、図らずも伊集院光さんのトークが楽しめた。
一方クラウドにはニュアンスコミュニケーション社のサーバを採用し、方言や流行語などを反映させるべく更新を重ねているという。クラウドとの通信はソフトバンク回線を利用しているが、購入から3年間は無償で利用でき、それ以降は検討中とのこと。日々激変するデジタル環境を思えば、先のことは検討中という態度もむしろ誠実と思われる。
運転中の音声認識が便利なのはもちろん、決められたコマンドワードでなくても操作可能なのはとても便利だった。ただし音声操作中に後席の夫が「メルセデスってさぁ」などと言うとテレマティクスサービス「メルセデスmeコネクト」に電話してしまったり、「何を行いますか?」と言うMBUXに子供たちが「サッバークカリバー!」「ダークなんちゃらを撃て!」と一斉に叫び出して認識不能になったりと、ひとりドライブやみんな寝ちゃった時向きの印象だ。また走行中にリストや設定画面が表示されて選択を求められるのは安全上気がかり。伝統のグリップ式ドアハンドルを残しながらもスポーティな外観とセグメントトップのCd値を実現したメルセデスには、一層の技術革新を期待したい。
帰り道、のども枯れたし音声認識をオフにした。出足はそろそろとしたメルセデス流だが1.3Lとは思えないほどパワフルに加速し、スポーツモードではブリッピングをくれつつ小気味よく駆け、コンフォートモードであってもまさにニュートラルステアの気持ちよさが味わえる。MBUXにだけ夢中になってちゃもったいない。
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