操縦性、動力性能、快適性、走破性が高い次元で成立
ルーフからハッチゲートへかけて大きくスラントさせたシルエットを成立させるため、Aピラーはカイエンより約1度寝かされた。このため、フロントドアのウインドーフレームとウインドーはクーペ専用だが、そこから下のドアパネルは基本的にカイエンと同一。Aピラーから前のフェンダーやボンネットもカイエンと共有しているそうだ。リアトレッドは22インチのタイヤ&ホイールを収めるために若干拡げられている。
エンジンは3種類が用意される。日本の道路環境ではまったく不自由のないカイエンクーペ、走る曲がるのバランスに長けたカイエンSクーペ、そして圧倒的パワーを誇るカイエンターボクーペ。それぞれの動力性能はクーペになってもほとんど変わらないという。
グレードとエンジンバリエーションはカイエンと共通で、カイエンクーペは340ps/450Nmの3L V6ターボ、カイエンSクーペが440ps/550Nmの2.9L V6ツインターボ、カイエンターボクーペが550ps/770Nmの4L V8ツインターボとなる。前後ともマルチリンク式でターボには空気ばねが標準というサスペンション設定もカイエンに準じている。
ラゲッジルーム容量はカイエンSの770~1710Lに対し、カイエンSクーペは、625~1540Lと若干少なくなる程度。
カイエンとの同時開発にこだわったというだけあって、その乗り味はクーペになってもほとんど変わらない。全高が約20mm低くなっているので、物理的には重心が下がっているはずだが、正直なところそれは強く意識しなかった。そもそも、カイエンに腰高の印象がないからそう感じたのかもしれない。ボディサイズや質量を忘れさせてくれるような俊敏で正確な操縦性と4輪の接地性の高さは、クーペでもこのクラスのトップレベルである。ステアリングを切った時のばね上の無駄のないスムーズな動きなどからは、スポーツカーの血筋がジワジワと伝わってくる。
急勾配のルーフラインが特徴的なカイエンクーペはガラスルーフが全車に標準装備される。3種類ある「ライトウエイトスポーツパッケージ」を選ぶとカーボンルーフとなる。
スポーティなハンドリングのSUVなら他にもあるけれど、カイエンやカイエンクーペの評価すべきは、操縦性と動力性能と快適性と走破性がいずれも高い次元でバランスよく成立している点にある。電制制御式ダンパーを含むPASMは標準装備なので、エアサスを選ばなくても優れた乗り心地と安定性をもたらす。
エンジンの選択に悩まされるのはポルシェの常だが、カイエンの時と同様、個人的には「S」のトータルバランスがもっともいいと思った。