シボレー・コルベットZ06 vs アウディR8スパイダー、リアルスポーツの存在理由を探る【清水和夫のDST】#89-1/4

普通のクルマで満足できない人たちの最後のサンクチュアリ

コルベットは次期型がミッドシップになるという噂だ。ル・マン・シリーズなどのGTレースでは有利であり、重いエンジンをフロントに搭載するFRレイアウトの弱点を解消するにはいい方策となるかもしれない。となると現行型が最後のFRモデルになる可能性がある。今以上に速くするには、もはやエンジンパワーだけでは困難な領域に達しているのだろう。

それはZ06を操っていても伝わってくる。880Nmのトルクを持つエンジンが暴れ出すと、ジュラシックパークでお腹を空かした猛獣と遭遇した感じだ。電子制御はあまり効果がないし、タイヤはグリップ限界こそ高いが、そこを越えると一気にグリップダウンしてしまう。こいつをどう制御すればいいのか悩んでしまうが、それでもプロセスそのものにもの凄くリアルにドキドキできて、自分が出したアドレナリンで溺れてしまいそうになるほどだった。

普通のクルマでは満足できない人たちには最後のサンクチュアリであり、調教されたリアルスポーツカーである911GT3の上をいく荒削りな、無垢の野性味を持っている。例えば高速走行ではステアリングがグッと重くなって、これ以上操舵すると「どこかへ行ってしまうぞ」という、危険を察知するインフォメーションになっていて、それもこれもすべてが意図的に、確信的に仕組まれたZ06の個性なのであろう。

リポート:清水和夫 フォト:篠原晃一 ル・ボラン 2018年4月号より転載

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