ワインディングを駆けぬけてもほとんど燃費には影響ない
ロングツーリングの裏メニューはウマシな食事にありつくこと。静岡市内の石橋うなぎ店で尾頭付きの一本焼うなぎ定食。
静岡ICで東名高速を降りて、密かな目的であった尾頭付きの鰻にありつく。実は、当日の最終目的地を南伊豆町にしたのも、ウマシな海鮮にありつくため。ロングツーリングには、グルメな動機も必要なのだ。
さて、静岡ICからは主に国道1号線を走り一般路の燃費を計測。平均速度が26.1km/hという流れが整った幹線道路区間では11.8km/Lを記録した。330iの好燃費は高速番長というわけではないのだ。
稜線をたどる西伊豆スカイラインで、ブ厚いトルクを存分に楽しむ。
富士川SAのスマートICで再び東名高速に入り、沼津IC経由で伊豆縦貫道の修善寺ICを降りる。ここからは、標高が約800mの西伊豆スカイラインまで駆け上がる。いつもなら、「SPORT+」モードをにしてシフトパドルをマニュアル操作しつつコーナーを攻めたくなるところだ。ただ、今回はロングツーリングのシミュレーション。観光ドライブよりは少しハイペースかもしれないが、「COMFORT」モードにしてATはDレンジを保つ。
伊豆半島の東海岸沿いを走る国道135号線も南国情緒が溢れるドライブコースだ。
それでも、エンジン回転数は3000rpm以下。中回転域ともなると、高速道路や一般路で感じた力強さの余裕ではなくトルクのブ厚さが伝わる。コーナーの立ち上がりでアクセルを踏み足せば加速Gが腰のあたりを押す感覚が確かめられた。リセットした燃費は7km/L台まで低下するが、4L自然吸気式エンジンに匹敵する最大トルクを考えれば、納得して余りある数値だ。
南伊豆町の街道筋は花の季節。菜の花畑が多く桃の花やスイセンが咲き誇る。
西伊豆スカイラインの、戸田峠から船原峠まで伊豆半島駿河湾側の稜線を通るルートは絶景が楽しめる。ダンパーの減衰力を可変制御するアダプティブMサスペンションは、走行モード「COMFORT」ならコーナリング中のロールがジワーッという感じで穏やかに進行する。「SPORT」モードで減衰力が高めの領域に保たれればフラットな姿勢でコーナーを駆けぬけることもできる。だが、適度なロールはステアリング操作に対してクルマが正確なハンドリングを示す実感につながるので都合がいい。ステアリングの切れ味は5シリーズのスッキリ系とは異なるが、手応えが重すぎないから長距離ドライブの負担が軽い。
伊豆半島最南端の弓ケ浜を経由したルートは下記の通り。高速道路区間は総走行距離の約7割。
西伊豆スカイラインから、伊豆半島を縦断する国道414号線までは下り勾配が連続する。7km/L台だった燃費は10km/L台まで回復。つまり、一般路と大差がない燃費でワインディングロードの走りが楽しめたわけだ。なんだかトクをした気分。
南伊豆町の舟宿君丸で金目鯛を旨味が増すしゃぶしゃぶに。食感も上々な皮と身の間はコラーゲンたっぷり。翌日の朝食はその出汁でつくったおじやにありつく。
さあ、残りは下田市を経由して南伊豆町を目指すだけだ。ここまで600km近く走っているが、まったく疲労は感じない。それどころか、上質な刺激を体験し驚異の燃費を記録した達成感さえある。しかも、宿泊先でたいらげた金目鯛やタカアシガニのウマシなことといったら……。まさに、ロングツーリングの醍醐味といえる。
翌日は、南伊豆町や東伊豆町で旅情感たっぷりなシーンを経由して帰路に着く。総走行距離は約800km、平均燃費は16.9km/h。もちろん330iは無給油で走破した。
活けておいてもらったタカアシガニは焼きと蒸しで蟹みそを付けながら。文句ナシにウマシ。
リポート:萩原秀輝/H.Hagihara フォト:小林俊樹/T.Kobayashi BMW COMPLETE 2019 VOL.71 より