自慢の“黄金の右足”が省燃費で“キカイ”に負けた!?
大井松田ICから御殿場ICまでは、キツい上り勾配が連続する。それでも、アクセルペダルを踏み込む必要はない。せいぜい、ミリ単位で踏み足すだけで速度が維持できる。この行程で8速から7速にシフトダウンされたのは2度だけ。高いギアではレシオが接近しているので、エンジン回転数の上昇は300rpm程度だ。エンジン音のボリュームが増すこともない。こうしたフィーリングが、力強さの余裕に結びつく。
逆スラントグリルはE21への、ヘッドライト下の意匠はE46へのオマージュ。
当然、20km/L超の燃費にも少なからず影響するが、それでも東名高速・御殿場IC付近の「最高標高454m」看板を通過する際に17.2km/Lを示すにとどまった。御殿場から先は、浜名湖SAまで平均勾配は下りになる。ただ、新東名高速は勾配の変化が分かりにくいだけに燃費の計測には不向き。交通量が少なくても先行車の速度変化が大きくなりがちなのだ。
上り勾配では大型トラックを追い越す必要が生じる。ただ、アクセルを踏み込む必要はなく少し踏み足せば十分。モニターにトルクメーターを表示すると、高いギアで1500rpm以下をキープしても、アクセルを踏み込むまでもなく200Nmを超えるトルクが発揮される。この数値は、ターボを組み合わせていないエンジンを積んでいた当時の320iの最大トルクと一致するので、力強さに余裕があるのは当然といえる。この時点で21km/L以上の燃費を記録した。
また、高速道路でのクルージングは快適そのものだ。エンジン音は耳に届かず、平滑な路面からはロードノイズも聞こえない。風切り音も気にならず、こうした場面での静粛性の高さは5シリーズに迫る。
スポイラーのようなトランクリッドエンドは空力にも効く。
浜松いさなJCTから浜名湖SAまでは、急な下り勾配が連続する。この区間で、燃費を伸ばしたいところ。実際に、モニターに表示される燃費は見る間に向上し、結果的には21.7km/L(平均速度93.1km/h)を記録。想像を大きく上回る好燃費だ。
浜名湖SAから静岡ICを目指す。この間は、走行モードを「ECO PRO」に、アクティブ・クルーズ・コントロールを95km/hに設定したクルマ任せにしてみた。リポーターの“黄金の右足”と“キカイ”の燃費勝負だ。結果は、リポーターの惨敗。なんと、23.0km/L(平均速度92.9km/h)にまで到達したのだ。もはやハイブリッド車の燃費に匹敵する記録だ。
惨敗の理由として、交通の流れが整っていたことや強めの追い風(風速9m)も影響しているだろう。だが、330iというより新型3シリーズに与えられた、Cd値(空気抵抗係数)0.23という優れたエアロダイナミクス性能の効果も見逃せない。いかにも空力が良さそうなトヨタ・プリウスでもCd値0.24だ。そういえば、新東名高速を走行中に先行車に追いつきアクセルを戻しても、失速感がほとんどなかった。印象としては、駆動系に余計なフリクションがないことも好燃費に結びついていそうだ。
新型3シリーズはエクステリアとインテリアの質感が大幅に向上。大柄なリポーターのドラポジに合わせて後席に移っても乗車スペースには余裕がある。
リポート:萩原秀輝/H.Hagihara フォト:小林俊樹/T.Kobayashi BMW COMPLETE 2019 VOL.71 より