【国内試乗】「BMW 320i M Sport」新世代モデルを徹底検証

ハードな設定はBMWらしい走りを期待すればむしろ好ましい

今回試乗したMスポーツ仕様のサスペンションはかなり硬めの設定となる。ただ、BMWらしい走りを期待する人にはむしろ好ましいはずだ。また、硬いから乗り心地が悪いというわけではない。ディーラーで試乗をする際に、誤解しないように注意していただきたい。硬くてもサスペンションがスムーズに動けば、路面からの突き上げなどの不快な振動が抑えられるからだ。
なおかつ、新採用のストローク依存型ダンパーも威力を示している。ストロークが長くなる(伸びる)際に減衰力が高まる、パッシブな可変ダンパーなのだ。路面段差などを通過しても、大きな衝撃を抑え込みつつボディの縦揺れをスムーズに収束させる。逆に、ストロークが短くなる際の減衰力を低くすることが可能となり、目に見えないような路面の荒れを通過してもブルブルという振動とは無縁でいられる。

320iが搭載するのは日本市場のために専用開発された2L直列4気筒直噴ターボエンジンだ。充実したトルクを発揮することが特徴であり力強さの余裕が実感できる。

なおかつ、従来型よりも25%剛性が向上したボディも乗り心地を犠牲にしない重要なファクターだ。高剛性ボディが通常レベルの振動を遮断し、それでも伝わってくるタイヤがドスッ打音を発するような強い衝撃は巧みに減衰するからだ。

Mスポーツは18インチタイヤを標準装備する。接地感はやや硬めだがサスペンションがスムーズに動くので不快感はない。

その意味で、新開発ボディはロードノイズの抑制にも役立っている。舗装の骨材がハッキリ視認できるようなザラついた路面では、ゴーッというロードノイズは聞こえるが、振動によるノイズはボディが減衰する。ピラーを通じて耳元から聞こえることもなく、音源が分散されずに床下から届く感じなので騒がしさを意識させない。
もちろん、Mスポーツらしい走りへの期待は十分に満足させる。高速でコーナーを通過する場面などでは、微小な舵角からステアリング操作の通り忠実にクルマが向きを変えることがわかる。その切れ味はスムーズそのものであり、「COMFORT」モードなら手応えが重すぎることもない。「SPORT」を選べば手応えが増すものの、ダイレクトなハンドリングを楽しむには適度な範囲だ。都市高速だけではなくワインディングロードを駆けぬけたくなる気分にさせる設定といえる。

都市高速で先行車を追い抜く際でも、アクセルを少し踏み足すだけで十分。応答性はターボを意識させないほど速やかであり自伝吸気式エンジンのようだ。8速で100km/h時の回転数は、わずか1400rpm。静粛性は5シリーズに迫るほどだ。

リポート:萩原秀輝/H.Hagihara フォト:山本佳吾/K.Yamamoto BMW COMPLETE 2019 VOL.71 より

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