大自然の恵みと猛威はいつも背中合わせにある「島原街道」(長崎県)【日本の街道を旅する】

神火山がもたらす恵みも計り知れないほど大きい

サンセットロードとも呼ばれる西海岸の道。

「噴火のはじまった頃は、雲仙観光の目玉がまたひとつ増えたと、喜ぶ関係者さえ多かったとですよ」
こんな打ち明け話を聞かせてくれたのは島原市役所の商工観光課の人だった。ところが周知の通り、普賢岳の噴火は5年にもおよび、観光業界も大打撃を受けることになる。

対岸の熊本との間は通常のフェリーが1日10便運行されている。写真の高速フェリーなら所要時間はわずか30分だ。

「とはいえ、地元で山を恨むような人はあまりおらんでしょうな」
その理由は火山のもたらす恵みもまた、計り知れないほど大きいことを知り尽くしているからだろう。

島原まゆやまロードを走ると、火砕流や土石流の痕跡を目の当たりにする。

南島原駅近くの景勝地、九十九島は『島原大変……』のときに眉山から転げ落ちた巨岩の残骸。島原城下を潤す清らかな湧水群も、このときの地殻変動によって生じたものである。もちろん、雲仙をはじめとする名湯も火山活動の副産物にほかならない。

雲仙の温泉街。地獄で発生した水蒸気が道路を覆い尽くすこともある。

平成の噴火が始まったとき『溶岩ドーム』と呼ばれ、その後『平成新山』と名付けられた雲仙の最高峰(1486m)は、日本で(おそらく世界でも)もっとも新しい山であり、大地の息吹をこれほどリアルに、間近で目にできる場所はほかにはないだろう。さらに言えば、平成の噴火から島原の中心街を守ったのは、何を隠そう『島原大変……』を引き起こした眉山なのである。これが巨大な堤防となり、火砕流や土石流の向きを南寄りに変えたのだ。

雲仙地獄で蒸し上げたゆで卵。ホクホク!

うるわしき西海の海と山をめぐる島原街道。この道を旅していると、大自然の恵みと猛威が背中合わせにあることをあらためて思い知らされる。

煮えたぎる雲仙地獄の熱湯でキリシタンへの拷問が行なわれたという話を聞くと、ちょっと複雑な気分になる。

※掲載データなどは2011年9月末時点のものです。実際におでかけの際は、事前に最新の情報をご確認ください。

注目の記事

「ル・ボランCARSMEET」 公式SNS
フォローして最新情報をゲット!