「エンジンとタイヤ以外は自社製作が可能」な体制が整った
しかし創始者である林みのる氏が70歳を迎えた2015年に引退したことに伴い、童夢は2013年に東レへ童夢カーボンマジックを、2014年にトヨタへ風流舎を売却。その売却益をロードゴーイング・スポーツカーの開発費に充てると発表した。残念ながらそのスポーツカー計画は陽の目を見ずに頓挫することとなってしまったが、新たに社長に就任した髙橋拓也氏の元で米原駅前に新社屋を建設。FIA F4マシンのF110とスーパーGT GT300クラスで活躍するマザーシャシーの製造、販売を中心にレーシングカー・コンストラクターとしての活動を継続。F110を累計100台近く販売するなど、成功を収めてきた。
そんな童夢が再び動き出した。
なんとこの1月に、新しいカーボンコンポジットの開発・製造拠点となる『Dome Advanced Carbon Laboratory(童夢アドバンスド・カーボン・ラボラトリー)』が本社横に完成。2月1日から本格稼働をスタートしたのである。
1階に設備・作業エリア、2階に管理室・倉庫エリアを配した新拠点の延べ床面積は778.3平方メートル。そこに大型&小型のオートクレーブをはじめ、金属加工も可能な大型5軸NC加工機、カッティングプロッター、冷凍保管庫、塗装ブースなど最新鋭の設備を設置。ワンオフの小パーツから、レーシングカーのモノコック、ボディの量産に至るまで、あらゆるニーズに即時に対応する体制が整った。
さらに4月1日からは、車両の空力開発に欠かせないムービングベルト(移動地面板)を備えた高性能、高機能の風洞実験設備『風流舎』が再び童夢のもとで運用を開始。これにより「エンジンとタイヤ以外は自社製作が可能」と自他共に認める設備を手に入れることとなったのである。
ここで重要なのは、どんなに高機能で素晴らしい設備があっても、それを適切に使いこなすノウハウがなければ、なんの意味も持たないということだ。その点、童夢には過去40年間にわたるレーシングカー、自動車の設計、開発で得た膨大な経験と実績、データ、そしてそれらを熟知し、新たなアイデアを生み出す豊富な人材が揃っている。
また企画から研究、設計、製造までを自社内でできるスキームができたことで、高品質、高精度の製品や、最新のコンポジット技術を用いた全く新しいコンポーネントの提案が、迅速かつ高い機密性を確保して提供することが可能となったのが最大の強みであるという。
では、これらの体制を再構築した童夢が、どこに向かい、何を生み出そうとしているのか? 次回は髙橋拓也社長のインタビューをお届けすることにしたい。
【後編へ続く】
取材協力:童夢 http://www.dome.co.jp/
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