ADVAN Sport進化のポイントは?
──ところで横浜ゴムは1989年にポルシェに純正採用されて以来、ずっと海外メーカーでの純正装着タイヤに採用されていて、以前のV103もさまざまなモデルに装着されてましたよね。そのV103からV105への進化のポイントはどんなところですか?
【大聖】まず、開発の背景には環境問題がありました。自動車メーカーはクルマの燃費を良くしなければならず、そこに貢献するためにはタイヤの転がり抵抗を改善する、という土台があったんです。出荷先の国によっては、いくら性能のいいタイヤを作っても、環境性能をクリアしなければ販売すらできないのです。ADVAN Sportでは、もちろんその環境性能をしっかりと構築するのが前提ではありましたけど、ドライとウェットの両方の操縦安定性と制動性能の向上を必須条件として開発を進めました。それらの全てが、特に欧州のプレミアムモデルではクルマの改良に応じて強く要求されるポイントなんです。
──V105の最大の長所はどんなところですか?
【川口】いろいろあるのですが、まずは高強度、高剛性というところでしょうか。V105はいわゆるマトリックス・ボディ・プライという構造を採っていて、長めのカーカスを斜めに配列しながらベルト下まで折り曲げて持っていくことで、強度や剛性を高めています。
【大聖】それはレーシングタイヤに使う手法で、ハンドリング性能やトラクション、制動に効くんです。タイヤの単体重量を増やすことなく部分的に剛性をアップすることができる。追加物なしに捻り剛性を上げられるんです。通常、スリックタイヤやSタイヤは化学繊維ですが、ADVAN Sportはレーヨン、天然素材を使ってます。だから高速でも熱に強くて溶けない。このような素材や製法まで工夫することにより、操縦安定性も万全です。
【川口】レーヨンは高価で、管理も難しいんです。自動車メーカーから定期的に品質の監査が入るくらい繊細な素材なんですよ。素材の段階からものすごく手間をかけてます。
【大聖】ブロックのエッジを面取りしていることも、長所を生んでいますね。エッジをキツくすると有効な溝の体積が減って、ウェット性能もダウンしちゃうんです。ブロックの面取りをしてエッジを丸めることで剛性不足を解消できるし、接地圧も均一にコントロールできるんです。もうひとつ、V105のブロックは断面の形状が微妙に凸状になっていて、それも接地圧のコントロールに有効です。
──さすがに自信を持ってリリースされてるだけあって、いろいろと出てきますね。ならば、V105のアドバンテージをひと言でまとめるなら……?
【大聖】ドライの性能とウェットの性能を高い次元でバランスできていること。それに高速耐久性のマージンですね。( )付きYレンジは300km/h超を保障するものですが、十分な安全マージンを持って設計しています。まぁ、ヨーロッパでのみ有効な話ではあるんですが。
──ライバルに据えている製品だとかブランドはありますか?
【川口】アフターマーケットで申し上げるなら、V105の設計コンセプトがヨーロッパOEですから、あちらの大手タイヤメーカーとのシェア争いを想定して作り込みました。
──ずばり、勝ってると思われますか?
【川口】はい、少なくともウェット性能では自信があります。
──即答! 相当の自信作ですね。
【川口】これもあくまでアフターマーケットでのお話なんですが、ストリート用スポーツタイヤの“NEOVA”で、もともとADVANのドライ性能は高い評価をいただいてたんです。V105は、それに加えてさらにウェット性能を向上させるという目標で開発しました。2013年に発売してみたら、ユーザーさんの評価で“まるで水掻きがついているようだ”というようなコメントもいただきました。狙い通りの性能を体感いただけたので、とても嬉しかったですね。それに日本国内もさることながら、特に欧州でも高く評価していただきました。現地の自動車専門誌のテストでもナンバーワンの評価をいただいたくらいです。
……と、お話がようやくヨーロッパに戻ろうとしているところで恐縮ながら、続きは次回へ。とりわけジャーマン・ブランドに関心の高い人には、それぞれの自動車に対する開発アプローチのようなものが窺い知ることのできる、興味深いお話をお届けすることができるだろう。お楽しみに!
ADVAN Sport V105製品サイト https://www.y-yokohama.com/product/tire/advan_v105/
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