自動車メーカー&サプライヤーも協力
物損、人身を含めて交通事故の現場で意外に多いのが駐車場。保険会社などの調査では、ペダル踏み間違え等による重大事故だけでなく軽度な接触も含めると、交通事故のうち駐車場での件数は3割にも上るというデータもある。こうした事故を減らしつつ、駐車が苦手というドライバー心理の緩和にも貢献してくれそうな技術のひとつが「自動バレーパーキングシステム」だ。
こうした自動運転技術の普及に向けて、クルマ社会の健全な進展への貢献を目的とした試験研究機関、一般財団法人「日本自動車研究所(JARI)」は、去る11月13~15日にかけて東京お台場のデックス東京ビーチ駐車場を会場にその「自動バレーパーキングシステム」の社会実装に向けた実証実験を行った。
今回の実証実験には、「アイシン精機」「デンソーテン」のほか、「トヨタ自動車」「三菱電機」も協力する「自動バレーパーキングシステムデモ」のほか、日産自動車は「自動駐車システムデモ」でEVのリーフを使って「プロパイロット パーキング」を披露。
さらに、「リモートパーキングシステムデモ」では、コンチネンタル・オートモーティブが、フォルクスワーゲン・パサートをベースとした最新の実験車両でスマホ・アプリを使ったリモートパーキングを公開した。
その中でメインといえる「自動バレーパーキングシステムデモ」のシステムは、クルマ、管制センター、駐車場インフラの協調制御で構成され、2021年までにペーパーの発行を目指す国際標準化(ISO 22374)を視野に入れ、各国と協議を推進中とのことだ。
レベル4自動運転に相当
「なにやらまだ自分に縁がなさそう……」というのはちょっと早計かも。すでに車両側に搭載されているセンサー(車載カメラやソナー)などを使い、JARIの仕様に従ってシステムを構築することで早期の実用化と普及に向けたシナリオを描いているからだ。
このJARIによる自動バレーパーキングシステムは、まず、駐車場に入ってきたクルマが駐車場の地図情報を受信すると、クルマの加速度センサーなどに加えて(屋内駐車場や地下駐車場などGPS信号を受信できない想定)、駐車場内に配置された座標(マーク)で自車位置を把握して10cm単位で補正するというもの。なお、通信はLTEを使っていて、将来的には5Gの利用もあるだろう。
GPS信号が受信できれば、管制センターや座標などのインフラは必要ないかもしれないが、駐車場は先述のように屋内や地下にもあるため、同システムを使ったバレーパーキングシステムを中心に開発が進められている。要するにクルマが自走しながら駐車可能な枠を検出すると、自動的に駐車場内のスペースに止まるというもの。
現時点では、ナビやスマホなどで駐車場の満空情報を取得し、スペースの予約や係員によるパーキング運用が普及しつつある段階だ。例えば、中部国際空港(セントレア)では、有人のバレーパーキングシステムが好評を得ているというから、将来的に「自動バレーパーキングシステム」の導入で、有人から無人化(管制センサーは必要)を目指すものと考えて良いだろう。そして次の段階では、今回の実証実験のような一般的な駐車場でのリモート駐車などの駐車支援サービスが想定されている。この段階でも駐車場のインフラや管制センサーの普及が必要だ。
2020〜2021年度の実用化を目指す
そして次の段階では、一般車両や歩行者などの進入を制限した限定エリアにおいての自動バレーパーキングサービスを想定している。先述のように、クルマに搭載済みのカメラシステムやソナーなどの普及型センサーを使うので、駐車場側のインフラが整えば自動バレーパーキングシステムが実用化できるというのがポイント。車載通信機器などによるアップデートで対応すれば、ユーザーはクルマを買い替える必要もないはずだ。
実現されれば、ユーザーは駐車場の出入口でスマホを操作して愛車が来るのを待ち、荷物を積み込んで出発すればいい。今回公開された実証実験では、安全管理のためにドライバー役が乗り込んでいたが、あくまで手放し(一部手動運転)で駐車などを行っていた。これで利便性が高まるのはもちろん、自動駐車の精度がもっと高まれば、車両の間隔を狭めて駐車場のスペース効率を高められるという利点も期待できるのだ。
経済産業省や国土交通省では、2020年度から専用車両、専用駐車場での自動バレーパーキングをスタートし、順次一般車両、一般駐車場に拡大。2021年度以降の実用化を目指した、機能実証実験でのシステム実証から社会受容性の評価、そして同システムの効果の評価へと進めていくとしている。