オンロードでも快適な乗り心地と静粛性を実現
オンロードでは、このサスペンション設定が不思議な乗り味をもたらす。ラングラーは、ボディ骨格とは別に新型も伝統のラダーフレームを採用する。
ゆえに、現代的なSUVというよりも成り立ちはハッキリいってトラックだ。一般路を走り始めれば、次の瞬間には“やっぱりな”という気持ちになる。ステアリングからは、直進状態の落ち着きが感じられず進路の修正が必要となるからだ。
でも、それは慣れていないためだった。むしろ、クルマ任せにせず修正が当たりまえと思えてしまえば、ステアリングの遊びが大きいわけでもないから応答性が穏やかなだけと納得できる。そうなると、リジッド式はバネ下重量が増えるからサスペンションがバタつく、といった一般常識から無縁でいられることにも驚くし、乗り心地も快適そのものだ。
オンロードでは、ラングラーならではの“心地よさ”は健在。しかし乗り心地と静粛性は向上しており、より快適なドライブが楽しめる。
それに、乗り込んで天井を見上げると、3分割になる着脱式のフリーダムトップが内張りなしにムキ出しになっている。アコースティックウインドシールドまで採用しているのに期待が裏切られたかとガッカリしていたら、走り始めたところでまたまた驚くことに。新型ラングラーは、乗り心地が快適なだけではなく優れた静粛性を実現していたからだ。
試乗車は、直列4気筒エンジンを積むスポーツだったけれど、最大トルクはV型6気筒を超えるので、周囲の流れに乗るだけならアクセルを踏み込む機会はまれ。ペダルに足を乗せる程度、2000rpm前後を保つだけならエンジン音は耳に届かず、周囲の騒音が天井から降ってくることもない。
しかも、オフロードの走破性を重視したパターンがゴツいタイヤを履くにもかかわらず、ウィーンというパターンノイズやゴーッというロードノイズが最小限に抑えられている。こうした騒音の遮断性は、モノコック構造では得難いフレームオンボディ構造ならではの特徴といえる。
こちらは来春導入予定のルビコンの室内。レザーシートには赤いステッチとともにロゴも刺繍されるなど、ヘビーデューティ系らしからぬラグジャリーな雰囲気だ。
さすがに、高度な運転支援装置をフル装備するまでには至らなかったけれど、新型ラングラーは質実剛健でありながら現代的でもあり、走りでは穏やかで優しい一面も実感させてくれた。販売台数の急成長で乗っけから驚かされ、試乗中も感動したり納得したり。
荷室は容量は公表されていないものの、スクエアな形状で使い勝手は良さそうだ。
おまけに、最後にもう一度だけ驚かされたのが価格設定だ。ボディサイズは大柄でも、位置づけとしてはミドルSUVに属するとのこと。ところが、価格はドイツ御三家と比べればコンパクトSUVと変わらないのだから。
“隠れミッキー”ならぬ“隠れジープ”がホイールやウインドー等にあしらわれている。こんな遊び心を忘れていないのもジープらしいところだ。