EVカーシェアもスタート
フォルクスワーゲングループ(VW)がデジタル化に向けての大きな動きをスタートさせる。「ODP(ワン・デジタル・プラットフォーム)」と名付けられたデジタル・プラットフォームを構築し、VWグループ内で共有。クラウドも活用してクルマとユーザー、顧客向けサービスをつなげるもので、従来のデジタルプラットフォーム「フォルクスワーゲンWe」を超えて、より効率的な「つながるサービス」が可能になるとしている。
「One Digital Platform」(ODP)は、フォルクスワーゲンの各種サービスに加え、外部パートナー企業によるサービスから構成されたクラウド技術。近い将来、共同プロジェクトの発表も示唆されている。
現在、VWの最新モデルはVWコネクトでインターネットにつながり、これは後付けも可能だが、2020年にはVW全車がこのシステムを標準搭載する。VWはこのコネクテッド機構の普及により「クルマもIoT(モノのインターネット)の一部になる」としており、統一したプログラミング言語でのクルマも制御も可能となるという。結果として現在はクルマに搭載されているコントロールユニットの数(70個に達するという)を減らすこともでき、VW自身は明言していないものの、コストダウンに加え、制御機構に由来するトラブルの削減も図ることができそうだ。
まずは2025年までにグループ内のVWブランド車向けに35億ユーロ(約4550億円)を投資するとともに、その一方でデジタル関連サービスから数十億ユーロの売り上げも見込んでいる。
「つながる」コネクテッドカーに関してはトヨタ自動車がひと足先に決意表明しており、2018年1月にラスベガスで開催されたCESでは豊田章男社長が「モビリティサービスのプラットフォームを作る企業となりたい」と述べている。脱クルマメーカーとも受け取れる宣言だったが、世界の自動車マーケットで覇権を競うVWもここにきて「自動車メーカーからモビリティサービス・プロバイダーへの変革」を明言。世界の2大巨頭がモビリティサービスへと大きく舵を切ることで、自動車を取り巻く世界の変化が始まることになりそうだ。
性能のいいハードウェア(=自動車)を開発し、販売するのはもちろん、クルマ自体にIoTのハブ(要)の役割を担わせることで確かに利便性は高まる。今回、VWが方向性を打ち出してきたことで他の自動車メーカーだけでなく、サプライヤーやIT関連企業、通信企業なども巻き込んだ新たなマーケットが生まれてくる可能性が一段と高まったが、果たしてそれがユーザーにとってメリットがあるのかどうか。コスト負担が増えることなく、クルマの楽しさや環境性能を高めていく方向にいくのか、しっかり監視していく必要もあるだろう。
VWは、合わせて2019年後半には電気自動車(EV)によるカーシェアリング「We Share」をベルリンで開始し、2020年には欧州や北米でも展開する考えも明らかにした。まずはe-ゴルフ、e-up!で開始し、2020年には新ブランドのEV「I.D.」を投入する予定だ。
電動化や自動運転も含む次世代モビリティと、それを活用したモビリティサービスが数年後にはどこまで進化しているのか。VW、トヨタなどのグローバルメーカーだけでなくさまざまな企業の思惑が複雑に絡み合うだけに、その全貌がハッキリするまでにはまだ時間がかかりそうだが。
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