円安傾向の差益で利益を確保。2018年度の予想はちょっと厳しい状況に
日本メーカーの2017年度の決算(2018年3月期決算)が出揃った。世界的な自動車販売の好調で売上高は増加傾向にあり、利益に関しても全般的に悪くない業績となっている。その結果は別表のとおりだが、米国市場を主体とするメーカーは、トランプ大統領が公約を実行した法人税減税(約40%の減税)の恩恵を受け、純利益が大幅に増加。2017年度1回限りのこととはいえ、さまざまな出費がかさむ時代だけに、嬉しいプレゼントとなったようだ。
世界自動車工業会(OICA)によると2017年の世界の自動車販売台数(四輪車)は9680万4390台となり、2016年の9390万5634台と比べて約290万台も増加している。リーマンショック以降は順調に伸びており、米国、欧州、日本など先進国では伸び率が鈍化しているものの、中国やインドをはじめ新興国では増えている。もう少しで1億台に到達しそうだが、そんな増加傾向のなかで日本メーカーも世界で稼いだと見ていいだろう。
円安傾向が続いたことにより利益増も見逃せない。営業利益に占める為替差益はトヨタが約2650億円、ホンダが約219億円、マツダが約400億円としており、開発コストの増加や、ホンダの場合はタカタ製エアバッグの集団和解金のマイナスなどを補っている。
ところで各社とも同時に2018年度決算(2019年3月期決算)の予想も発表するが、その数字が厳しいものになっている点に注目したい。まず、米国の法人税減税の効果が消えるのに加え、円高傾向の進展による利益減も見込んでいる。トヨタとホンダは1ドル=105円まで円高が進むと予想し、マツダも107円と予想して為替差損を計上。トヨタは為替差損2300億円と見込んで営業利益が4.2%減の2兆3000億円、純利益が15.0%減の2兆1200億円と予想。 ホンダも差損が2070億円と見込んで営業利益が16.0%減の1335億円、純利益は米法人税減税の反動で46.2%減とほぼ半減すると見ている。マツダも220億円の為替差損により営業利益は28%減の1050億円、純利益も29%減の800億円と予想し、中期計画である構造改革ステージ2の目標は達成できないと、早々と白旗を上げてしまっている。
たしかに予想は甘くみるよりも厳しい見通しとしておいたほうが気も引き締まるであろうし、世界経済の先行きが見通しにくくなっている今、危機管理という面でも正しい姿勢かもしれない。為替差損だけでなく、環境対策のための開発費などコスト増要因も少なくはなく、決して楽観視できないということだろう。ちなみに2016年度(2017年3月期)も円高進行により7社中6社が営業利益減と厳しい状況だったが、2018年度もその再来となってしまうのか。あらためてグローバル経営の難しさを感じる。
グローバルレベルで新車販売は伸びていくことはほぼ確実ながら、そこで利益を確保するのは容易ではない。手綱さばきが問われる状況は今後も続きそうだ。
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