エアバッグ訴訟費用や不適切な車両完成検査に振り回されながらも、各社とも利益は確保
タカタ製エアバッグに起因する集団訴訟や、国内工場での不適切な車両完成検査など、不安定要素に振り回されつつも、’17年度上期(4〜9月)の日本メーカーの中間決算が出揃った。6カ月間の世界販売台数は7社揃って前年同期比プラスとなり、マツダ、スバル、スズキの3社は過去最高を更新。それにともなう連結売上高も7社ともプラスとなり増収を確保。為替レートが円安で推移したこともプラス要因となったようだ。’16年度の上期は円高の進行で売上高が全社ともマイナスという事態に見舞われたが、今回はそれを取り戻した形だ。’15年度のように1ドル=120円とはいかないものの、112〜113円あたりで推移したのが好材料となった。
一方で本業の儲けを示す営業利益は明暗が分かれた。予想されていたとはいえ4社がさまざまな要因で減益となり、ホンダ、日産、マツダは2ケタ減。下期に回復を図ることになる。トヨタ自動車は’16年度決算を発表した時点で円高進行により減益を予想しており、今回のマイナスも織り込み済み。だが減少幅は予想を下回り、’17年度通期では増益を見込んでいる。このまま急激な円高などに見舞われなければ、2年度連続の減収は避けることができそうだ。
ホンダはタカタ製エアバッグを巡る集団訴訟の和解金が537億円におよび、年金制度改定のための出資840億円を計上したことで販売増やコストダウンで得た利益を食われてしまう。’17年度通期でもその影響は残るが、減益幅はかなり圧縮できると見ている。
そして日産自動車はやはりタカタ製エアバッグ和解金および不適切な完成検査による国内出荷停止が大きく響き、さらに販売コストの増加もあって営業利益は大幅に減少。純利益の減少は小幅に抑えたが、’17年度通期でも400億円の利益減を見込んで営業利益を下方修正。世界販売が伸びているのが救いだが、しばらくは厳しい状況が続きそうだ。
完成検査による国内出荷停止が大きく響き、会見では’17年度通期で400億円の利益減を見込み、営業利益の下方修正を発表した日産。
そんな中でひとり気を吐くのがスズキで、売上高、営業利益、純利益、世界販売台数が揃って過去最高を更新。日本、インド、欧州と主力市場で販売台数が増加したのに加え、円安も利益増に貢献。通期予想も上方修正し、さらに利益を上乗せする構えだ。
マツダは販売台数が過去最高、売上高も増加ながらアメリカでの販売減などが影響して営業利益は減少。次世代エンジンの開発費用がかさんだことも影響しているが、通期予想は下方修正せず、下期で取り戻して増収増益を見込んでいる。スバルも世界販売が過去最高となり、営業利益もプラスを確保したが、タカタ製エアバッグ和解金の計上などで純利益は減少。さらに不適切な完成検査により販売台数の減少が見込まれるため、’17年通期の営業利益を下方修正。増益を見込むマツダとは対照的な見通しとなった。
燃費偽装以来、厳しい状況に置かれていた三菱自動車は、販売台数増により売上高もプラスとなり、営業利益、純利益ともに400億円を超えて赤字からついに脱却。中国を含むアジアや北米での販売も持ち直し、設備投資や研究開発費も増やして復活の道を歩み始めている。
為替は今後どうなるか見通しにくい面もあり、必ずしも視界良好とはいえないが、手堅い計画で利益確保を目指す日本メーカー。IT化が進む今後も日本経済を支える屋台骨であることに変わりはなく、雇用の確保を含め、頼れる存在であって欲しいところ。下期はいい方向へ向かうことを祈りたい。