実車とプラモデルの開発者がクロストーク! タミヤ「1/6 Honda CRF1000L アフリカツイン」発売記念イベントが開催! 前編

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星のマークでお馴染みの模型メーカー株式会社タミヤ(以下タミヤ)は、2017年6月24日に1/6オートバイシリーズ・プラモデルの最新作「Honda CRF1000L アフリカツイン」を発売した。同日、それを記念したトークイベント「RIDE AFRICA TWIN MTG! at タミヤ プラモデルファクトリー 新橋店」が、タミヤのオフィシャルショップであるタミヤプラモデルファクトリー新橋店で開催された。

 

イベント当日発売された1/6スケールのプラモデルの完成見本(写真左)とともに、タミヤプラモデルファクトリー新橋店の店内にはHonda CRF1000L アフリカツインの実車も展示された(写真右)。

 

当日のイベントは2部構成となっており、第1部が実車のアフリカツイン開発に携わった株式会社本田技術研究所 二輪R&Dセンター(以下ホンダ)の飯塚 直氏と、小松昭浩氏のお二人をゲストに迎え、その開発の経緯やアフリカツインの魅力をモータージャーナリストの松井 勉氏と共に語る、いわば“実車編”。第2部は、ホンダからのゲストお二人に、プラモデルの開発にあたったタミヤ開発部の海野剛弘氏、古谷隆久氏を加え、プラモデル開発の裏話やその見どころが語られた“模型編”という内容で行われた。

 

今回は実車アフリカツインの開発者による第1部、“実車編”の模様をお送りしていく。

 

アフリカツインってどんなオートバイ?

 

今回、タミヤからプラモデル化されたHonda CRF1000L アフリカツインは、2015年12月(国内は2016年2月)に実車が発売されたアドベンチャースタイルのオートバイだ。そのルーツは1988年に登場した初代モデルXVR650(RD03)まで遡る。

 

初代アフリカツインXVR650(RD03)が登場したのが今から30年近く前となる1988年(写真左)。2年後の1990年には排気量が750ccに引き上げられたRD04が登場し(写真中央)、1993年にはRD07がリリース。以降はマイナーチェンジを重ね、1999年発売の最終型(写真右)まで、ロングセラーを続けるが、2000年のカラー変更を最後に販売が終了していた。

 

当時、盛り上がりを見せていたパリ・ダカールラリーで、1986年から1989年までの4連覇を果たしたホンダのファクトリーモデル・NXR750の市販版ともいえるスタイルで高い人気を誇ったXVR650は、1990年にはその排気量を750ccにアップ(XVR750(RD04))。1993年には2代目となるRD07へとフルモデルチェンジが行われ、その後、数回のマイナーチェンジを経て2000年にいったん販売を終了。三代目となる今回の新型モデルは、実に15年ぶりの登場というわけだ。

 

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ファンからすると新型登場までずいぶんと待たされたわけだが、それについて、新型アフリカツインの開発責任者であるホンダの飯塚氏は「当時はスーパースポーツがブームでそちらの方に注力していた。それでも(ファンの)みなさんからの要望があって開発に着手できた。お待たせして申し訳なかった。」と恐縮。

 

新型モデル復活のきっかけとなったのが、2013年からホンダが再開したダカールラリーへの参戦。同様のタイミングでアドベンチャーモデル流行の兆しもあり、新型アフリカツイン開発がスタートしたという。

 

そのコンセプトは「Go anywhere」。オフロードでの走破性はもちろん、ハイウェイを使った高速走行まで安定してこなす、飯塚氏いわく「水の上以外だったらどこへでも行けます」という、まさに「世界を旅できるバイク」だ。欧州を筆頭に世界中のオートバイメーカーがこのカテゴリーに数多くの魅力的なモデルを投入する中、15年ぶりに登場するアフリカツインで目指した方向性について飯塚氏は「開発チームが目指したのは、あくまで先代のアフリカツインです。あれがすべてのお手本。(新型は)これに現代の新しい技術と環境性能を上乗せしたものです。」と語り、自身も初代アフリカツインに長年乗っていたという松井氏も「エンジン音や乗ったフィーリング、どこにでも行けると思える感覚まで、新型はまさに先代のイメージそのままでした。」と、ユーザーの立場からも、そのコンセプトが感じられたことを語った。

 

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イベント冒頭には、作家の戸井十月氏が自身のライフワークとして、1997年から2009年までアフリカツインとともに世界の五大陸を巡ったときの旅の映像が、松井氏の解説とともに流された。

 

新しいアフリカツインにふさわしいデザインとは

 

続いては新型アフリカツインのデザインの話題に。世界中に思い入れの強いファンが多いアフリカツインだけに、そのデザイン担当を任されることになった小松氏は当初「これは大変なことになったぞ!」と思ったという。ただ一方で「アフリカツインを作るなら、過去の焼きなおしではダメ。世の中にそういう商品は多数あるが、結局それはオリジナルに勝てない。」という気持ちは強かったという。

 

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デザインの作業は難航し、国内はもちろん、欧州、アメリカまで含めた数多くのデザインスタッフが数え切れないほどのアイデアスケッチを描いた末、長い時間をかけやっと行き着いたのが、アグレッシブな運動性能とそのコンセプトである「世界を旅できるバイク」を感じさせるこのデザインだった。

 

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マスの集中化による機能性の追求とオン・オフそれぞれの走りを両立した新型アフリカツインのデザイン。

 

また、デザインを実際の車輌へと落とし込むクレーモデル(粘土を削りながら実際に車輌のカタチを作る)の作業では「今はコンピューターで、ダメなものはすべて数字で出てしまう。たとえばフロントフェンダーを2〜3mm削ったり足したりするだけでもハンドリングが大きく変わってしまう」と、この段階でのエンジニアリングや設計メンバーとのやりとりにも大きな苦労があったことを熱く語った。

 

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これに対し松井氏から「二輪の開発は大変なんですよね。」と、ねぎらいの言葉がかけられたが、小松氏は「大変なんですけど、正直めちゃくちゃ楽しいんです! 本当に楽しくてしょうがないので続けてこられた。」と笑顔で応えた。

 

新型アフリカツインには、初代モデルを思わせるトリコロール(パールグレアホワイト)(写真左上)と、ダカールラリーに参戦したファクトリーマシンをイメージしたヴィクトリーレッド(写真右上)に加え、キャンディープロミネンスレッド(写真左下)、デジタルシルバーメタリックという(写真右下)、全4色のカラーバリエーションが用意されており、それぞれに購入する客層のイメージがあるという。

 

車体を彩るカラーリングについても、アフリカツインのイメージを踏襲しつつ、焼きなおしではない現代的なカラーリングへと仕上げるのには苦労したという。たとえば初代モデルを彷彿とさせるトリコロールのラインなどは、あらゆる方向から美しく見えるようバランスをとるプロセスに長い時間がかけられた。また、生産時の工場での再現性にも考慮が必要となるため、「工場はラインの流れ作業で行われるが、その短いプロセスの中でこれを成立させるのはいままでになく難しかった。それをカラーリングのデザイナーが歯を食いしばってやってくれた。デザインの中でもいいチームワークで仕事ができた思う。」と、苦労を共にしたデザインチームを小松氏も絶賛した。

 

旅するバイクを支える車体

 

世界のあらゆる道を走る「Go anywhere」を実現するため、新型アフリカツインは車体にもさまざまなトライがなされているという。

 

 

車体の基本ディメンションは、タイヤの位置や大きさ、フレームの骨格、エンジンのポジションなどをまず決めていき、マスの集中化を考えながら、一番重いエンジン周辺にABSモジュールやバッテリーなどの重い部品を配置していく。この作業は後々行き違いが起こらないよう、デザインチームなどとも協議して行われたという。

 

 

ここで飯塚氏がアピールしたのが、エンジンとセミダブルクレードルタイプのフレームとを結合するエンジンハンガーの部分だ。「一般的なオンロードのオートバイでは片側3箇所くらいが普通なんですが、今回の新型アフリカツインではこれを片側6箇所に設定しています。当初は4箇所だったんですが、先ほども言ったオフでの走行性能と高速道路での安定性を両立させるために6箇所に増やしました。またエンジンにもある程度剛性を持ってもらうことで、逆にフレームとの結合部分の剛性を落とす工夫などもしている。たとえば普通よりも小さなボルトを使うとかプレートの厚さや形状を工夫して、オフロードでも軽快に、オンロードでも安定して走れる剛性のバランスをとっています。」と語り、とくにエンジン後ろ側のハンガーは気を遣ったという。

 

 

一方、電子制御で2つのクラッチをコントロールすることで、クラッチ操作やシフトチェンジの必要のないDCT(デュアルクラッチトランスミッション)搭載のエンジンも、新型アフリカツインの魅力だ。実際にDCTモデルに試乗した松井氏も「クラッチ操作をしないだけで、こんなにバイクを動かすことに余裕ができるんだ、ということを体験した。本当にビックリした。」と、その走りに舌を巻いたという。

 

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また、クランクを270度位相とすることで従来モデルの90度Vツインと同じ点火タイミングが与えられたパラレルツインのエンジンは、バルブ機構へのユニカムの採用やエンジンケース内蔵のウォーターポンプ、セミドライサンプによるオイル潤滑などにより徹底したコンパクト化がなされ、結果、現行車では最大となる最低地上高250mmを実現し、オフロードでの走行性能を高めている。

 

 

特徴的なフロント21インチのタイヤを支えるフロントフォークは、φ45mmフルアジャスタブルの倒立式。当初は飯塚氏の考えでφ43mmにトライをしていたが、結果的に45mmの方が軽量に仕上がることがわかり「私の予想していたのがウソで、設計者の方が正しかった(笑)。」とのことで、このサイズになったという。

 

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さらに、「旅するバイク」であるアフリカツインにピッタリなアクセサリー類が、オプションとして多数用意されていることも併せて紹介された。

 

 

最後に南アフリカで開催され、松井氏も参加したというアフリカツインのメディア向け発表会の模様や、昨年夏、ロサンゼルスからメキシコへと、北米大陸をアフリカツインで旅した際の映像が流され、第1部はフィナーレを迎えた。

 

アフリカツインがどのようなオートバイであるかを存分に知ることができた、あっという間の1時間。次回はその魅力を1/6サイズに凝縮したプラモデルの開発エピソードをタミヤ開発部スタッフ自らが語った“模型編”の模様をお伝えします。

 

 

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