日産自動車は1月5日、米ラスベガスで開催されたCES(Consumer Electronics Show)2017にて、近未来に向けた指針「ニッサン・インテリジェント・モビリティ」の活動に関するいくつかの成果を発表した。中でも注目は「シームレス・オートノマス・モビリティ(SAM)」と呼ぶ革新的なシステムだ。
不測の事態でも安全にクルマを誘導
人工知能(AI)の発達によりクルマは一段とスマートになり、反応速度も向上し、さまざまな運転環境でも自身で状況を判断できるようになってきた。それでもなお、すべての判断をクルマに任せるには至っておらず、予期せぬ状況に直面した際に、どのように対処すべきかはまだ正確に判断できないのが現状だ。これは完全自動運転に向けた課題のひとつ。この課題解決のために、日産はSAMを生み出した。
SAMは日産車だけでなくすべての自動運転車が、事故や路上の障害など不測の事態に直面した際、クルマを安全に誘導できる手段を提供するもの。仕組みはこうだ。
市街地を走行中の自動運転車が事故現場に遭遇した場合、警官は交通整理の手信号を出す。この場合、信号機ではなく警官の指示に従い、中央分離線を越えて走行する必要が生じ得る。自動運転車はこうした判断は下せない。レーザーレーダーやカメラなどのセンサーは、障害の場所や信号機の色、警官の手信号の動きは認識できるが、適切な行動をとるにはほかのクルマや人の動きを理解した人間の判断が必要だからだ。
こんな状況下では、自動運転車はまず安全に停止し、指令センターに通報。モビリティ・マネージャーから行動すべき正しい判断を仰ぐ。この場合の正しい行動とは、警官の手信号に従い、信号機を無視すること。モビリティ・マネージャーはクルマが通行すべきルートを教える。クルマが現場を通過した後、モビリティ・マネージャーはクルマが自動運転を続けられる状態に戻し、ほかの車両からの支援依頼に応える体制に戻る。
こんなとき、その場所と解決法はクラウド内に蓄積され、同地域を走行中のほかの車両にも伝達される。これによってほかの自動運転車は迂回路を自身で設定できるので、毎回同じ問題を支援する必要なくなるわけだ。
そしてこのSAMの基になった技術が、ロボットを監視するために開発されたNASAの「VERVE技術」というわけ。NASAのロボットは予測不可能な未知の環境で、自動運転技術を使って障害を避け、安全な走行路を計算する。そして走行不可能な地形に遭遇するなど、自動運転による判断が困難な場合、NASAの管理者が望ましいルートを作成し、指示する。
シリコンバレーの日産リサーチ・センターでディレクターを務めるマーティン・シリハウスは次のようにコメントしている。
「われわれの目標は交通インフラの変革を通じ、死亡事故を減らし、渋滞を緩和することです。現在、日産では未来の交通システムのあり方を模索していますが、それは20年後の話ではなく、近い将来のことなのです」。
一方、NASAのエイムス研究センターのEugene Tuディレクターのコメントはこうだ。
「これは産業界への宇宙技術の移転だけでなく、産業界の研究がわれわれの宇宙技術に応用されることを示すものです。クルマの自動運転の研究は、惑星での探査研究に役立つため、将来の宇宙ミッションに貢献する好事例といえます」。
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