インテリアはハイテクスポーツカーの趣
さて、いよいよ試乗の時がやってきた。ドイツ・ドレスデンにあるユーロスピードウェイ・ラウジッツのピットロードに並んだパナメーラは全4台で、ボディカラーこそ違うものの、それらはいずれもトップグレードのターボだった。もちろん新開発された足回り関連の装備はフルに搭載しており、それはすなわち空気容量を60%増した3チャンバーのエアサスペンションであり、俊敏さと高速安定性を両立する911譲りの後輪操舵システム「リアアクスルステアリング」であり、油圧式から電動式になり、いっそうレスポンスが向上したアクティブスタビライザーの「PDCCスポーツ」である。
運転を担当するポルシェのテストドライバー氏に挨拶し、オフホワイトというか、薄グレーに近いクルマの助手席に乗り込んでみる。インテリアの品質感は相変わらず高く、このクラスのベンチマークといえるメルセデス・ベンツSクラスにも引けを取らないほど。インパネの基本的なデザインも先代を踏襲しているのだが、中央のタッチ式ディスプレイは12.3インチに巨大化しているし、センターコンソールにずらりと並んでいたアナログのスイッチが姿を消し、代わりに流行のブラックパネルに触れて機能を選ぶ方式になったので、室内はずいぶんとすっきりした。そして911から受け継ぐ5連メーターは、確かにドライバーの正面にあるにはあるのだが、中央のタコメーターを除いて左右ふたつは7インチのディスプレイによってCGとして表示されることに……。ポルシェのアイデンティティともいえるアナログ5連メーターが消えたことに一抹の寂しさを覚えるが、まぁ911じゃないから個人的には許容の範囲内。それ以上にアナログを極めたポルシェというクルマを、デジタルであれこれ好き勝手に遊べそうな期待感の方が上回る。
「まずは『ノーマル』モードで行きますよ」と、テストドライバー氏。ノーマルではエンジン出力、トランスミッションの変速プログラム、サスペンションの固さ、ステアリングの重さなどがもっとも快適な方向に制御される。ここユーロスピードウェイ・ラウジッツは全長4.5km、14のコーナーを持つDTMも開催される本格的なサーキットなのだが、まずはそこを優雅に鼻歌交じりのスピードでクルージングするのだ。とはいってもそこはラウジッツ、のっけからタイトなコーナーが5連続でやってくるのだが、進入前のブレーキング、ステアリングを切り込んで行って旋回、最後に脱出でアクセルオン……という一連の操作に対し、ほとんど体を揺すられないことに感心してしまう。つまりエアサスペンションが瞬間的に減衰力や車高を調整し、PDCCスポーツがスタビライザーを引き締めることで、どんな状況にあってもクルマを上手にフラットに保っているのだ。
だが路面状態のいいサーキットだけに、普通に走っているだけじゃ舗装のひび割れやジョイントからの突き上げなど、一般道でよくあるような衝撃をどう吸収してくれるのかはわからない。そこで「ちょっと縁石に乗り上げてよ」とリクエストすると、テストドライバー氏、ニヤリと笑ってややイン寄りにコーナリング、赤、白、青が連続するトリコロールなカーブストーンに片輪を突っ込んでくれた。すると「ドドドドドドッ!」と音だけはびっくりするほど盛大に入ってくるのに、体に伝わってくる衝撃は目で見て想像したよりもはるかに優しいではないか。サーキットの縁石はちょっと極端な例だけれど、これなら一般道での乗り心地にも大いに期待することができそうだ。