老舗の国内工場に一本化
ミシュランタイヤが2018年10月より販売を開始する、トラック・バス用ワイドシングルタイヤの「MICHELIN X Oneリトレッド」。後編では、日本ミシュランタイヤがリトレッドタイヤの生産を契約・委託している新潟県糸魚川市の高瀬商会の工場が取材できたので報告しよう。
かつてミシュランは、台湾の自社工場でもリトレッドタイヤを製造していたが、輸送コストやリードタイムを考慮して、2012年以降は国内生産を高瀬商会に一本化。1931年に通産省(経産省)指定のタイヤ更正工場になるなど、長年リトレッドタイヤの生産を手がけるスペシャリストである高瀬商会は、「X One」以外のリトレッドでもミシュラングループ本社の品質基準承認を得ているのだ。
リトレッドの工程
さてリトレッドの生産工程を追ってみると、まず「洗浄」では、その名のとおりリトレッドするタイヤをブラシと自動洗浄機で水洗いし「乾燥」させる。続いて「釘穴検査」機で貫通の有無を確認。タイヤの内部に高電圧を流し、貫通傷があるとバチバチと音がするそうだ。さらに、「シアログラフィ」で超音波ウルトラソニックで部材間の剥離を探し、「目視検査」で目視と触診で傷や変形をチェックする。
傷の検査をクリアすると「バフ掛け」が行われる。トレッドをサイズとパターンに応じた設定値に削り、「スカイピング&修理」工程で、傷口をきれいに削った後に修理。その後、「セメティング」において、削ったゴムの表面が酸化しないように加硫用のセメントがペイントされる。さらに、溶けた合成ゴムで削った部分が埋められる「フィリング」を経てトレッドを準備するのだ。
台上で伸ばされたトレッドに液剤を塗り、ビニールを巻き直して準備が整うと、「ビルディング」でケーシング(カーカス)にサイズとパターンに応じたトレッドが貼り付けられる。
タイヤを「エンベロープ」と呼ばれるカバーに包んで加硫機に投入して低温で長時間「加硫」する。加硫により分子レベルで結合させることで信頼性が担保されるわけだ。その後、「高圧検査」でリトレッドの耐久性が確認され、目視の「最終検査」を経た後、温かいうちに専用塗料が塗られる(仕上げ塗装)。
リグルーブも体験
そして今回の取材では、削りすぎを防ぐ専用器具でマニュアルに沿ってタイヤにパターン(溝)をふたたび刻む「リグルーブ」を体験。摩耗で低下したウェットグリップなどの性能を取り戻すあるいは維持することで、タイヤの寿命を最大25%伸ばせるとともに、摩耗によってトレッドの発熱が抑制され、転がり抵抗が低くなることで燃費が改善するという意外な利点も得られるとのこと。これは、ミシュラン独自の強固なケーシングがあればこそ実現可能なのだ。
人材不足が深刻化するなど運送業界にとって厳しい状況が続く昨今。日本ミシュランタイヤでは、前編でも紹介した「Reduce=ロングライフ」「Reuse=リグルーブ」「Recycle=リトレッド」という「ミシュラン3R」で、運送業界のタイヤ経費節減と環境保全に貢献するとしている。
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