フィアットから、およそ1年半ぶりとなるニューモデル「600e」がデビュー、早速公道で試乗することができた。500Xの後継モデルと位置付けられる最新BEVは、安全装備が充実したのもトピック。バランスの取れた走りにも注目だ。
普通に走らせるだけでも明るく楽しい気分になれる
フィアット初の量産ピュアEV、500eの出来映えは文句なしに素晴らしく、先祖であるヌォーヴァ500の唯一無二の世界観も正しく継承していて、とても魅力的だ。けれど500eはパーソナルカーにしてスペシャルティカー。車体の小ささやドアの枚数などを自分のライフスタイルにあてはめにくいという人も少なくない。フィアットらしい“かわいい”を、人を自然と笑顔にするナゴミ系の雰囲気を、諦めなければならないのだ。
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600eは、そうした人たちの心を埋める、電動化時代のファミリーカーとして企画されたモデル。ヌォーヴァ500の姉にたるかつての600がそうだったように、いわゆる“普通の人たち”の“普通の暮らし”を明るく彩るために生まれてきたわけだ。そして初めて触れた600eは、しっかりとそこを満たしたクルマに仕上がっていた。ホッとした。
いたずらっ子のようなちょっとヤンチャな顔つきは、500eに端を発する新世代のナゴミ系フィアットのファミリーであることの証。そしてフォルム全体は系統で言うなら先代にあたるBセグSUV、500Xに似ているのだが、よく見るとシルエットそのものからして微妙に違っていて、新規にデザインを起こしていることがわかる。ボンネットのライン、その先端のオデコからアゴに向かって落ちていく面の角度、ルーフからリアエンドに至るラインなどにクラシック・セイチェントへのオマージュが隠れているように思えて、思わずニヤリとした。
インテリアも同様で、やっぱり500Xの面影はあるのだけど、2本スポークのステアリングやラウンド型メーターナセルなどは間違いなくクラシック・セイチェントへのオマージュだ。それぞれさりげないのだけど、上手いな、と思う。姿を見てもその中に収まってみても、やっぱり自然とどこか楽しい気分にさせられる。デザイナー陣の術中にはまった気分だけど、悪くない。
クルマの基本構成としては、電動化車両用モジュラープラットフォーム、eCMPを骨格とし、54kWhのバッテリーと前輪を駆動する156ps/270Nmのシングルモーターを組み合わせたパワートレインを採用。ステランティスのBセグBEVのスタンダード、と言うべき仕様である。
その走りはどうかといえば、個人的には充分に満足できちゃうパフォーマンスであり、テイストだった。加速はいかにもモーター駆動らしく心地の良い滑らかさ。500Xに対して170kg増の重量を感じさせないどころか、さらに柔軟にして力強いトルクの立ち上がり。路面の表情の変化をスムーズにいなしてゆく乗り心地の快適さ。クイックというわけじゃないけど、とにかく素直に気持ちよく行きたい方向に向きを変えてくれるハンドリング。何かスパッと突き抜けているようなところがあるわけじゃないのだけど、それぞれのレベルがほどよく高い位置にあって、綺麗にバランスしている印象。言い方が適切かどうか自信はないのだけど、普通に乗り込んで普通に走らせて何ひとつ不満を感じることなく当たり前のように明るく楽しい気分になれる。“くつろぎ”感にも似た、過剰さのない必要充分な“普通”であることの心地良さ、といえばいいのかな? そんな感覚が絶えずある。ただしスポーツモードにしてタイヤがきしむくらいの走り方をしたときに見せる身のこなし方は別として。
室内空間は大人4人がゆったり過ごせる広さで、荷室は360〜1231Lと車格のわりにたっぷり。航続距離はWLTCモードで493kmと、まずまずのレベルだ。環境的にBEVで問題ないという人にはぜひ検討していただきたい。だって、どうせなら穏やかでなごやかに過ごしたいでしょ?
【Specification】フィアット・600e La Prima
■車両本体価格(税込)=5,850,000
■全長×全幅×全高=4200×1780×1595mm
■ホイールベース=2560mm
■トレッド=前:1535、後:1525mm
■車両重量=1580kg
■モーター形式/種類=ZK02 /交流同期電動機
■モーター最高出力=156ps(115kW)/4070-7500rpm
■モーター最大トルク=270Nm(27.5kg-m)/500-4060rpm
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■バッテリー容量=54.06kWh
■一充電航続可能距離(WLTC)=493km
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:トーションビーム/コイル
■ブレーキ=前:V ディスク、後:ディスク
■タイヤ=前後:215/55R18
問い合わせ先=ステランティスジャパン TEL0120-404-053
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