【国内試乗】既存のヒエラルキーを覆すプレミアムコンパクト「レクサス LBX」

レクサスの新しいプレミアムコンパクトであるLBXの公道試乗会が行なわれた。高級車の持つ既存のヒエラルキーを覆す存在であるというLBXの実力はどれほどのものなのか? その模様をリポートしよう。

優れた走りの質感はまぎれもなき高級車

小さな高級車が欲しいという気持ちを持っている人は少なからずいるはずだが、ヒットを飛ばすのはなかなかに難しい。古くはホンダ・コンチェルトやトヨタ・プログレなどが、ボディサイズのヒエラルキーにとらわれない高品質なモデルを世に問うたが、1世代限りで消滅。だが、時代が移りかわり、最近ではダウンサイジングがスマートだという認識が広がり、標準よりもちょっと贅沢な日産ノートオーラなどが人気だ。

エンジンは1.5L直3エンジン+ハイブリッドで最高出力91ps、最大トルクは120Nmを発揮。エンジンマウントは専用品で3気筒ながら振動は抑えられている。AWD(E-Four)モデルも選択可能だ。

新たにレクサスのラインナップに加わったLBXはBセグメントのコンパクトSUVながら車両価格460〜576万円と、本格的な高級車だ。サイズと価格でみればMINIやアウディQ2などがライバルで、日本市場でどう受け止められるかが興味深いモデルでもある。

メーターは12.3インチのTFT液晶だ。

プラットフォームはGA-Bでヤリスクロスに近いが、全面的に手が入れられている。ボディは素材の見直しや接着点の強化などで剛性を向上。とくにステアリング周りにはこだわり、正確性の高い操作感を狙っている。

シート表皮は「Relax」グレードではセミアニリン本革仕様。「Cool」では本革+ウルトラスエードのコンビ仕様となる。さらにオーダーメイドシステムである「Bespoke Build」も用意され、好みに合った1台を作り上げることも可能だ。

フロントサスペンションはジオメトリーを刷新。キャスター角を大きくとって旋回時の安定した手応えやリニアなコントロール性を実現。リアサスペンションはFFがトレーリングアーム、4WDがダブルウイッシュボーン。タイヤは225/55R18と大径かつ幅広だが、締結剛性を高めるハブボルト化がなされているのできちんと履きこなしてくれそうだ。

今回の公道試乗に先立ってプロトタイプを富士スピードウエイのショートコースで乗る機会があったのだが、シャシー性能は想像以上に高く、ヤリスクロスなどトヨタブランドのGA-Bとはまるで別モノだった。ただし、シャシーがしっかりした分、パワーユニットの力感が物足りなく思えたのが気になるところではあった。完全にシャシーが勝ってしまっているのだが、スピード感が希薄なサーキットより、公道ではまた印象が変わるだろうとも予想できた。

それは概ね当たっていた。実際の交通の流れのなかではアクセルを踏み増したときの電気アシストが素早いうえに強く、1.5L直3のハイブリッドとしてはかなり頼もしい。アクアで初採用されたバイポーラバッテリーの効果や専用セッティングでドライバビリティを高めているのだ。アクセル全開ではそれなりのパワー感になってしまうが、常用域で物足りないことはない。ブレーキフィールも電動車としては最上級の部類だ。

リアシートの足元中央にはUSBのほかコンセントの出力も備える。

サーキットでも剛性感のあったシャシーは公道では余裕たっぷり。とくにステアリング周りのしっかり感は特筆モノで、コーナーへ入っていくのが気持ちいい。フロントタイヤからステアリングホイールまで、どこにも力が逃げることがなく、切ったら切った分だけ正確にノーズがインを向いていく実感が高いのだ。ボディのコントロールも上手で、フラットライド感が高い。BセグメントSUVでここまでダイナミクス性能が高いのは見事だ。

ラゲッジルームはFWDモデルが2段デッキ構造となっており、底板の取り外しで容量を拡大できる(AWDモデルはハイデッキ仕様のみ)。リアシートは6:4の分割可倒式で長尺物の積載にも対応する。

ただし、乗り心地はちょっと硬めで低速域ではゴツゴツと感じることもある。静粛性にも力を入れていて、たしかにヤリスクロスと比べればかなり静かになっているものの路面の善し悪しでロードノイズの変化の幅が大きく、いきなりやかましく感じることもあった。コンフォートとスポーティのバランスでいえば後者寄りで、イメージ的にはMINIのジョンクーパーワークスのような雰囲気だ。

タイヤサイズは前後:225/55R18。「Relax」グレードではダークグレーメタリック塗装のアルミホイールが標準装備。

引き締まった硬派なモデルが好みならば歓迎する乗り味だが、ユーザーはどう受け止めるだろうか。ダイナミクス性能は間違いなく高いので、新たな小さな高級車として広く受け入れられることに期待したいものだ。

4隅の張り出したフェンダーが特徴的なスタイルは、セグメント以上に見た目にどっしりとした印象を与える。高級車としての存在感は十分だ。

「Cool」グレードではダークグレーメタリック塗装+切削光輝加工のアルミホイールを標準装備。

ラゲッジルーム底板の下に備わる5 0Lのスペース(FWDモデルのみ)。

【Specification】レクサスLBX Cool FWD
■車両本体価格(税込)=4,600,000円
■全長×全幅×全高=4190×1825×1545mm
■ホイールベース=2580mm
■トレッド=前:1570、後:1570mm
■車両重量=1585kg
■エンジン型式/種類=M15A-FXE/直3DOHC12V
■内径×行程=80.5×97.6mm
■総排気量=1490cc
■最高出力=91ps(67kW)/5500rpm
■最大トルク=120Nm(12.2kg-m)/3800〜4800rpm
■モーター形式/種類=前:IVM/交流同期電動機、後:—
■モーター最高出力=前:94ps(69kW)/ —
■モーター最大トルク=前:185Nm(18.9kg-m)/ —
■燃料タンク容量=36L(レギュラー)
■燃費(WLTC)=27.7km/L
■トランスミッション形式=CVT
■サスペンション形式=前:マクファーソンストラット/コイル、後:トーションビーム/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:225/55R18

【Specification】レクサスLBX Cool AWD
■車両本体価格(税込)=4,860,000円
■全長×全幅×全高=4190×1825×1545mm
■ホイールベース=2580mm
■トレッド=前後:1570mm
■車両重量=1665kg
■エンジン型式/種類=M15A-FXE/直3DOHC12V
■内径×行程=80.5×97.6mm
■総排気量=1490cc
■最高出力=91ps(67kW)/5500rpm
■最大トルク=120Nm(12.2kg-m)/3800〜4800rpm
■モーター形式/種類=前:IVM/交流同期電動機、後:IMM/交流同期電動機
■モーター最高出力=前:94ps(69kW)/ —、後:6ps(5kW)/—
■モーター最大トルク=前:185(18.9)/ —、後:52Nm(5.3kg-m)/—
■燃料タンク容量=36L(レギュラー)
■燃費(WLTC)=26.2km/L
■トランスミッション形式=CVT
■サスペンション形式=前:マクファーソンストラット/コイル、後:Wウイッシュボーン/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:225/55R18

問い合わせ先=レクサスインフォメーションデスク TEL0800-500-5577

フォト=篠原晃一 ルボラン2024年4月号より転載

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石井 昌道
AUTHOR
2024/02/23 17:30

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