ウェットの制動距離がドライと同等に!
最近「オールシーズンタイヤ」の売上が伸びてきています。オールシーズンタイヤは夏の路面でも冬の路面でも対応していて1年間を通して使用できる優れものですが、雪道の性能ははスタッドレスタイヤには及ばないと言われることが多くあります。しかし、その概念が覆る時代は間もなくかもしれません。
住友ゴム工業は11月16日に、オールシーズンタイヤに使用する新しい技術開発について説明会を実施しました。その名は「アクティブトレッド」と言い、これまでのタイヤの常識を覆すような新技術です。
アクティブトレッドの技術は主に「タイプアイス」と「タイプウェット」の2つがあり、まずは「タイプアイス」について紹介します。本来ゴムは温度が高くなると柔らかくなり、反対に低くなると硬くなるという性質です。しかしこのアクティブトレッドではその性質が逆転し、なんと冷えると柔らかくなるというのです。
温度に対して硬さの変化が逆に起こる新素材を北海道大学の野々山准教授との共同研究で開発されたそうで、樹脂と軟化剤をブレンドすることで実現に成功しました。樹脂と軟化剤の混ざり方が温度によって変化することで、高温になると樹脂から軟化剤が排除され、低温になると軟化剤を吸収し樹脂と混ざり合うという仕組みです。これによって、従来では考えられなかった、冷えると柔らかくなるゴムが実現されたというのです。それに加えて、現在低温で凹凸のできるゴムや硬くなりにくいポリマーの開発を引き続き進めているとのことです。
続いて「タイプウェット」についてですが、このタイプウェットの技術は、水に濡れると柔らかくなるゴムの開発です。この技術はイオン結合に着目された技術で、可逆性のあるイオン結合を新たに導入することで、水に濡れると陰イオンと陽イオンが解離し、それがスイッチのように機能します。水に浸けるとイオンポリマーとイオン結合剤が解離し、ポリマーが柔らかく変化することで、雨で柔らかくなるタイヤを実現することができたそうです。
さらに水につけている時間によって硬さの変化にも違いがあり、水につけて2分後に20%、60分で34%も軟化します。これによりウェット路面でもドライ路面に近い摩擦力を得ることができ、なんとウェット時のブレーキの制動距離はドライ時とほぼ変わらないという結果が出ています。水によって軟化したタイヤは乾燥すると元の硬さに戻るということで、何度でも軟化と硬化を繰り返すことができます。
ドライ時のグリップ力は従来のタイヤに劣ることはなく、それに加えてこのタイプアイスとタイプウェット、2つの技術を1本のタイヤにまとめたオールシーズンタイヤを来年2024年の秋ごろに販売を予定しているそうです。
従来のオールシーズンタイヤは、冬の路面ではスタッドレスタイヤには劣り、氷上の走行も難しいと言われていました。しかしこのアクティブトレッドの技術により氷の上でも滑りにくいオールシーズンタイヤの誕生が間近となっています。
これまでオールシーズンタイヤをあまり信用していなかったという方や、スタッドレスタイヤの購入を新たに検討していたという方は、このタイヤの販売を待ってみても良いかもしれません。これまでのタイヤの概念を全く覆したこの最新技術は筆者も大変関心があり、ぜひ商品化した際にはいち早く体験したいと感じました。
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