純粋主義とeパフォーマンスを融合させたこの新しいコンセプトカーは、ポルシェがアニバーサリーイヤーを祝うために発表したクローズドモデル
ポルシェは、2023年の「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」において、英ウェスト・サセックスにあるリッチモンド公爵邸の敷地内で、15以上のニューモデルとクラシックモデルを発表した。そのハイライトのひとつが、ブランド初のスポーツカーである「356 No.1ロードスター」であり、「ポルシェ ビジョン357 スピードスター」だった。「ポルシェ ビジョン357 スピードスター」は、デザイン面では356へのオマージュであり、技術面では「718 GT4 eパフォーマンス」をベースとした、全電動式の一台だ。
6台のル・マン優勝車も展示されるなど、新旧のモータースポーツファンの目を楽しませたこのイベントに出展された「ポルシェ ビジョン357 スピードスター」はポルシェの最初のモデルライン、フェリー・ポルシェの夢のスポーツカーにちなんだものだ。また、356はコンバーチブルとクーペの両方でブランドの記憶に刻まれているため、コンセプトカーにも同じ理屈が当てはまる。
ポルシェ ビジョン357 スピードスターは、ブランドのエッセンスを体現した一台だ。ドライビングプレジャーとドライビングダイナミクス、そして極めてピュアなフォルムが融合している。つい数週間前に発表した「ミッションX」と同様、このモデルも新鮮なデザインの遺伝子を受け継ぎながらも、ポルシェのDNAが輝いていることを示している。
ビジョン357 スピードスターは、ポルシェ718 GT4 eパフォーマンスのテクノロジーをベースにしている。つまり、電気モーターとバッテリー技術は「ミッションR」から、シャシーは「718 GT4 クラブスポーツ」から得て作られているのだ。グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでのワールドプレミアに続き、このデザインスタディは2023年9月末に米国で開催される「レンシュポルト・リユニオン」にも出展される予定だ。
【写真19枚】新鮮なデザインの遺伝子を受け継ぎながらも、ポルシェのDNAが輝く一台
エクステリアデザイン:短くなったフロントウインドスクリーンと片側トノカバー
このコンセプトカーは、スピードスターにありがちなスクワットで短くなったフロントガラスを持ち、モノリシックなボディをさらに強調している。右サイドには、かつてオープンスポーツカーによく見られたトノカバーが装着されている。運転席のヘッドレストは、技術的にデザインされたカーボン製のロールオーバー・エレメントによって宙に浮いているように見える。その後ろには、チャージポートドアとクラシックなスピードスター・トップのアンカーがある。
マーブル・グレーとグリヴェロ・グレー・メタリックという2つのグレーを基調とした2色のコンセプトは、歴史的なモータースポーツの先駆者たちにインスパイアされたもので、たとえばレースシーンで飛石から身を守るために使用されるフロントフェンダーや、ダークなメタリックカラーを採用したフロントウイングなどがそうだ。フロントホイールもグリヴェログレーメタリックで塗装されている。さらに、ラップアラウンド・フロント・ボンネットのクイック・リリース・メカニズムなどには、マイアミ・ブルーのコントラストが施されている。
大きな”75″のアニバーサリーロゴ、”1948″と”2023″の2つの年号には、グリベロ・グレー・メタリックとマイアミ・ブルーが使用されている。その上には、後輪の前にコミック風のユニコーンが描かれた。この神話上の生物は、ポルシェのデザイナーがコンセプトカーのために特別に描いたもので、「スピードスター」のパンチの効いたロゴも彼らの手によるものだ。エクステリアミラーの代わりとなるのがカメラだ。
クラシックカーのようにドアではなく、フェンダーの前方に配置されている。オープントップの357では、翼を思わせる空力的に最適化された新しい形状が採用されている。フロントの4点式ライトは、ポルシェ356を想起させる丸みを帯びたデザイン。リアライトは、ボディに削り出されたポイントのパターン配列の後ろに配置されている。リヤの縦型グリルパターンも、ポルシェの初代モデルラインを彷彿とさせる。サードブレーキライトはグリルデザインと一体化している。
ワイドなトラックは強気な印象を与え、走行安定性を高める。20インチホイールはマグネシウム製で、カーボンファイバー製のハブキャップとセンターロックが装備されている。ドラムブレーキを装備した356Aと356Bのリムは、ボルトサークルが205mmと、際立って大きかった。
インテリア・デザイン:純粋主義、縮小されたコックピット
インテリアは必要不可欠なものだけに絞り込まれ、ドライバーのために完全に調整されている。低く構えたシートポジションは、真にスポーティ。CFRP製のシートシェルはモノコックに一体化されている。ドライバーはレーステックスで覆われたパッドに座り、マイアミブルーのベルトストラップ付き6点式シートベルトでしっかりと固定される。
インストルメントクラスターは、ステアリングコラムの上に透明な表面として配置されている。レーシング・ステアリング・ホイールは軽さを象徴し、衝撃吸収装置は宙に浮いているように見える。一方、各コントロールは、エクステリアのアクセントカラーであるマイアミ・ブルーを再現している。
ダッシュボード全体はカーボン織仕上げ。従来の小物入れの代わりに、右上部のマイアミブルーのストラップでアクセサリーを固定することができる。シンプルな布製ストラップは、従来のドアハンドルの代わりとなる。このレーシングディテールは軽量化にも貢献している。
アイコンのパレード:フェスティバル・オブ・スピードのポルシェの他のモデル
ヴィジョン357はグッドウッドにおけるポルシェのハイライトだが、このスポーツカーメーカーがこのイベントに出展する希少なモデルは、ヴィジョン357だけではない。ポルシェは、15台以上のニューモデルとクラシックモデルをウェスト・サセックスに持ち込む予定だ。
フェスティバル・オブ・スピードでは、ポルシェの特別パレードが毎日2回、有名な丘を登る。パレードの先頭を走るのは356ロードスターNo.1。それに続くのは、1983年の「928 “トリゲマ” レースバージョン」「カイエン・トランスシベリア」「959」「911ターボS (993型)」、そして特別な「911カレラS (991型)」である。このワンオフモデルは、1963年の象徴的なスポーツカーの登場以来、100万台目に製造された911だ。
ポルシェはまた、グッドウッドで開催される「ル・マン24時間レース」の100周年も祝っている。ポルシェは19回の総合優勝という記録を保持しているレースだ。ポルシェはまた、グッドウッドで3台のクラスチャンピオンと3台の総合優勝車などを展示する。これには「718 W-RSスパイダー (1961年の2.0Lクラス優勝車)」「935 マルティーニ (1976年のクラス優勝車)」、”ピッグ”デザインの「911 RSR (2018年のGTE Proクラス優勝車)」が含まれる。総合優勝のトリオには、「936/81 スパイダー」「911 GT1 ’98」、そして2017年の「919 ハイブリッド」が含まれる。
ポルシェ・スポーツカーの75年を記念するフェスティバルでの初披露に続き、「718 スパイダーRS」と「ミッションX」は、グッドウッドで初めて一般公開された。ピュアなロードスターである718 スパイダーRSの開発は、ワインディングロードで最高のドライビングプレジャーを味わうために行われた。ミッションXコンセプトカーは、ル・マン・スタイルの前方に開くドア、高性能で効率的な電動パワートレインなど、ハイパーカーを華麗に再解釈したものである。
シュトゥットガルトに本拠を置くスポーツカーメーカーの現行モデルに加え、グッドウッドではポルシェ「ジュニア108」ディーゼルトラクターも展示された。ポルシェ356が生産されていた時代、顧客からの開発依頼はポルシェにとって不可欠なものだった。1949年から1963年7月までの間に、ポルシェの名を冠した約12万台のトラクターがライセンス生産されている。
唯一無二:グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード
かつてイギリスの『サンデー・タイムズ』紙は、フェスティバル・オブ・スピードの伝説的なヒルクライムを「モナコGPとロイヤル・アスコットを掛け合わせたようなもの」と評した。干し草の俵が敷き詰められた1.86kmのコースは、ドライバーにとってもクルマにとっても過酷な挑戦である。
サーキットは、第11代リッチモンド公チャールズ・ヘンリー・ゴードン=レノックスの屋敷であるグッドウッド・ハウスの敷地内を走る。この熱心なモータースポーツ愛好家が、1993年にグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードを設立した。
イングランド南部のウェスト・サセックス州にあるこの会場で、ヒストリックカーや最新のレーシングカーが競われるこのイベントには、毎年18万人ものモータースポーツファンが参加している。ポルシェブランド75周年を記念して、アーティスト、ジェリー・ジュダ氏による彫刻がフェスティバル・オブ・スピードの目玉となった。
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