地中深く掘り進められて構築された空間は、まるでシェルターのような強固さを誇る、他に類を見ないスペシャルステージ。
いつもであればプロローグ的な前書きにある程度のボリュームを割いてから、施主とガレージにまつわる物語を綴るケースが多いのだが、今回は兎にも角にも記事内で展開している写真をじっくりと見ていただき、イメージを膨らませることから始めてほしい。それというのも取材のためにガレージへ伺った私自身、まるで迷宮のようにさまざま意味と用途を成すスペースが複雑にレイアウトされていることに、圧倒されたからである。
そうは言っても、このガレージの深い魅力は写真だけでは伝わらないと思うので、まずは現在のガレージが完成するまでのことを、施主であるNさんから伺った話を元に紹介してゆこう。現在の場所にNさんが住まいを建てたのは、いまから40年ほど前となる1980年代のこと。当初から、基礎となるグランドレベルに複数台入るガレージを持つ家ではあった。時が経つにつれて家族構成や生活スタイルにも変化があり、その都度リフォームや増改築を行っていった。
【写真17枚】建て替えではなく、アップモデルで施工したガレージ。
最初に建てときから30年以上の時が経った頃、一度リセットする形で建て替えを検討することがあったという。しかし長年住み慣れた家だという、心の内にあった”愛着”や、これまで使ってきたモノたちを整理するという労力などを考えた際、建て替えではなく、アップモデルする方向で進めていった。
「子どもたちも大きくなり、今後将来のことを考えると、いま建て替えをするメリットはあまり感じられなくなったんです。そこで自分はもちろん、家族みんなで楽しむことができる空間を足すことにしたのです。阪神の震災時には、この場所も結構揺れました。そのこともあって、シェルターのように頑丈なガレージを作り、それを既存の住宅の基礎と合わせることで、堅牢なフレームにすることを思い立ったのです」
とNさんは話してくれた。
まるで迷宮のような空間は、それぞれに意味があるもの。
Nさん自身が「man cave(=男の隠れ家的なスラング)」と呼ぶガレージを紹介していこう。地中奥深く掘り進めて作られたガレージは、中規模マンションの基礎となる厚さのRC造だ。まずは以前からあったというガレージから拝見する。そこにはロールスロイスとベントレー、日常の移動用のBMW・i8の3台が収められていた。
その奥には化粧室が新設されたほか、新たなガレージスペースと繋がっている。しかしそこから進まずに、一旦道に面したシャッター側から新ガレージに入る格好で、話を戻そう。まずお子さんが使われているブラバス・スマート、その後ろにマクラーレン。その奥の仕切りスクリーンが上がると、BMW・i8やBMWモトラッドのクローズドコース専用スペシャルマシンであるHP4やR1250GSアドベンチャー、電動モデルのeエボリューションなどが並ぶ空間が広がる。
新たに追加したガレージは、サブフレーム的な役割も持たせた。
そこはBMWというブランドイメージに非常にマッチするクリーンなガレージルームであり、一画にはデスクスペースも用意されているほか、ジムマシーンが置かれ身体をトレーニングすることができる。そのスペースの奥側にはバイク用のリフトが設置されている。
その上部に設置された横引きシャッターが開き、リフトを上昇させると、上の部屋へとバイクを移動させることができる。さらにその上の部屋の奥には、プールも有する広々としたガーデンスペースがあり、そこに用意されたガラスルームへ、バイクをショーアップすることができるようになっているのだ。
言葉で説明すると以上のようになり、ページが許すのであればもっと詳細に書き上げることもできるのだが、実際に足を踏み入れなければ、なかなかその世界観は通じにくいかもしれない。しかしこれだけは言える、私はこのガレージを取材した際に、頭の中にはサンダーバードのテーマ曲が流れ、終始ワクワク感に心が躍っていた。
類稀なる本格的な秘密基地的なガレージ。なかなか実現できるものではないかもしれないが、参考にするポイントは多々あるはずだ。
◆PLANNING DATA
所在地:奈良県生駒市
ガレージ面積:約170平米
敷地総面積:3,040平米
構 造:RC造
建築費:おおよそ1億円
外壁/内装仕上げ:タイル/タイル、クロスなど
竣 工:2017年
愛 車:BMW・i8、BMW モトラッド・HP4、ベントレー、ロールスロイスなど
設 計:ガーデンカンパニー&アーキテクツ 群馬県太田市東矢島町202
Phone:0120-925-514 https://gardencompany.co.jp/
◆OWNER’S CHECK
・一番気にいっているところは?
ガレージを設計する際にアイデアの参考になると思います。
・ちょっと失敗したところは?
予算をオーバーしてしまったところ。
・次の夢はなんですか?
人が乗れるドローンの発着場を用意したいです。
・読者へのアドバイスを!
努力をすれば良いものを作れると思います。
『GarageLife Vol.95』掲載
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