デザイン、快適性、上質感など、クルマの固定概念を良い意味でツイストしてみせたBMW iX。自動車の新しいカタチを指し示したモデルでありながら、EVであっても同クラスのICEと違わない価格設定も見逃せない。早速、第一印象をお届けしよう。
フラッグシップに勝るとも劣らぬ快適性を実現
BMWは、欧州プレミアム系では電動化のパイオニアだ。2013年、サブブランドとしてBMW iを立ち上げ工場まで新設。しかも、世界同時発表したi3はEVの決定的な弱点となるバッテリーによる車重の増加に真正面から対応。ボディ骨格はCFRP(カーボン繊維強化樹脂)製、シャシーはアルミニウム製、ボディ外板は熱可塑製プラスチック製として、レーシングマシンのような構成により大幅な軽量化を実現したのだ。
そして2021年、BMW iはフェーズ2として新展開を開始。サブブランドのフラッグシップとして、iXを投入してきた。見所は、xDrive50で650mmに達する航続距離や前後2基のモーターが発揮する765Nmの最大トルクなど数多い。
だが、注目すべきは軽量化に対する取り組みだ。EV専用のプラットフォームを新開発し、CFRP、アルミニウム、高性能熱可塑製プラスチック、高張力鋼板を最適使用するインテリジェント・マテリアル・ミックスを採用。ボディサイズがほぼ同じで750Nmを発揮するエンジンを積むX5Mと比べ、130kg重いだけだ。
たとえば、メルセデス・ベンツEQCはGLC63に対して車重は390kg上乗せされる。EQCが重すぎるわけではなく、航続距離を伸ばそうとするとEVの車重増化は避けられないわけだ。
前置きが長くなったが、軽量化を実現したiXは重い車重を高出力モーターに任せ強引に加速させる印象がない。重力というか引力というか、かつてない作用により加速するような走りとなる。
マイ(走行)モードがパーソナルなら、アイコニック・サウンド・エレクトリックによりアクセル操作に対してSFドラマの宇宙船滑空音のような演出を重ねてくる。モードをスポーツにすると、車外まで聞こえていそうなボリュームでエンジンとは別モノの快音が聞ける。それだけに、アクセルを踏み続け523psに達する最高出力を発揮させても、圧倒的な速さを獲得しながら荒々しさは感じない。
また、iXはi3でアクセルを戻したときに強い回生ブレーキが効くので慣れずに違和感として残るという指摘を改善してきた。減速の強さはパドルおよびBレンジと合わせ、4段階で選択可能だ。Bレンジなら、アクセル操作だけで日常の加減速がこなせる。
iXは、バッテリーを床下に敷き詰めているので低重心化により基本性能の段階でボディのムダな動きが抑えられる。そのため、サスペンションを引き締める必要がない。試乗車は、アダプティブ・エア・サスペンションを標準装備するため、モードがパーソナルなら乗り心地は超しなやかだ。
ステアリングの手応えはいくらなんでも軽すぎるが、応答性の正確さは確かめられる。モードがスポーツなら適度に手応えが増すので、コーナーを気持ちよく駆けぬける場面では安心できる。
EV専用のプラットフォームにより、吸遮音性にも最大限の配慮がされている。エンジン音のマスキングがなくてもロードノイズが巧みに抑制され、静粛性が極めて高い。乗り心地を含め、iXの快適性は7シリーズを超えている。
ちなみに、iXは価格設定が驚異的だ。ボディ骨格にCFRPを多用し、アダプティブ・エア・サスペンションを装備しながらX5MどころかM50iよりも安いのだ。
【SPECIFICATION】BMW iX xDrive50
■車両本体価格(税込)=11,160,000円
全長×全幅×全高=4955×1965×16950mm
■ホイールベース=3000mm
■トレッド=(前)1660、(後)1690mm
■車両重量=2530kg
■モーター形式/種類=HA0002N0(前) HA0001N0(後)/交流同期電動機
■モーター最高出力=523ps(385kW)/-rpm
■モーター最大トルク=765Nm(78.0kg-m)/-rpm
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■バッテリー容量=60.6kWh
■航続距離(WLTP)=650km
■サスペンション形式=(前)Wウイッシュボーン/コイル、(後)後マルチリンク/コイル
■ブレーキ=(前)Vディスク、(後)Vディスク
■タイヤ(ホイール)=(前後)255/50R21
公式サイト https://www.bmw.co.jp/ja/all-models/bmw-i/bmw-ix-new/2021/bmw-ix.html
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