キャデラックのフラッグシップSUVである新型エスカレードに試乗する機会を得た。注目すべきはその堂々たるエクステリアのみならず最先端テクノロジーを随所に纏った、安全で快適なパフォーマンスを発揮する仕上がりだということだ。
高級車に相応しい快適な乗り心地
編集部のK女史がいつものように迎えに来てくれたのだけれど、「来る途中にすっごいジロジロ見られたんですよ!」と少々ご乱心の様子だった。その理由はすぐに察しがついた。身長154cm彼女が運転席に座ると、外からはまるで子供が運転しているかのように見えるからだ。大人が子供に映ったり22インチ(!)のタイヤが20インチくらいに思えるほど、キャデラック・エスカレードのボディは甚だしく大きいのである。
エスカレードのボディサイズは全長5400mm、全幅2065mm、全高1930mm。特に大きさを痛感させられるのは全幅だ。日本の道路事情だと、全幅が2mを超えるといつも以上に左右方向へ気を回す必要がある。これは何も運転中だけではなく駐車の際も同様で、スペースによっては物理的に駐車できない場面も増えてくる。ボディが大きいので当然のことながら室内スペースも余裕たっぷりだが、運転席と助手席の距離感が普通の乗用車とはあきらかに違っていて、隣に座るK女史がいつもよりもずっと遠くに感じてしまった。
こんな巨大なボディでも唯一の救いは、運転席からの視界がいいことである。ボンネットの両端が目視できるので、イチかバチかで突っ込んでいく必要はない。こういうクルマで不本意にバンパーやボディを擦ってしまった時は「行けると思った」という”後の祭り”がほとんどで、エスカレードであればそれは回避できるだろう。
ボディサイズさえ容認できれば、エスカレードは似たようなクルマが他にはまったく見当たらない孤高の魅力を持つ存在である。プラットフォームは依然としてラダーフレームを用いているものの、リアサスペンションは独立懸架となり、GMが誇るマグネティックライドコントロールの最新版と組み合わせたエアサスペンションを装備している。これにより、従来型で感じられたちょっと雑な乗り心地はほとんど姿を消し、快適性は
飛躍的に向上。高級車にふさわしいものとなった。リアにはEデフが置かれているので、ボディサイズの割にはよく曲がる印象を受けるし、操舵応答遅れも見られない。巨大な物体でありながら、それを自分が思い通りにコントロールしているダイレクト感が新型の魅力のひとつだろう。
エンジンは6.2LのV8OHV。これを見て「あ!」と思った方は流石です。このユニットはシボレー・コルベットと同型式のもの。しかしエンジンの制御マップはエスカレード用に書き換えられていて、高回転までよく回るコルベットとは対照的に、低い回転域から潤沢なトルクがジワジワと溢れ出す。加えて、組み合わされる10速ATは低めの回転数を保ちながらスムーズにシフトアップを繰り返す。ジェントルで力強い動力性能は、紛れもない高級SUVそのものだった。
4輪駆動システムは2WDと4WDが任意で選べるようになっていて車高調整もできるから、そこそこのオフロード走破性も備えているだろう。しかしエスカレードのオーナーのほとんどはオンロードでのドライブを楽しむに違いない。アメリカのTVドラマでは、”黒いデカいSUV=悪者のクルマ”の場面が多いが、どうかスマートに乗っていただきたいと思う。「強面だけど実は優しい」というのもまた、TVドラマでは人気のキャラクターなので。
【Specification】キャデラック エスカレードスポーツ
■車両本体価格(税込)=15,200,000円
■全長×全幅×全高=5400/2065/1930mm
■ホイールベース=3060mm
■トレッド=(前)1730mm(後)1730mm
■車両重量=2740kg
■エンジン型式/種類=L87/V8OHV16V
■内径×行程=103.2×92.0mm
■総排気量=6156cc
■圧縮比=-
■最高出力=416ps(306kW)/5800rpm
■最大トルク=624Nm(63.6kg-m)/4000rpm
■燃料タンク容量=90L(プレミアム)
■燃費=-
■トランスミッション形式=10速AT
■サスペンション形式=(前)Wウイッシュボーン/エア、(後)マルチリンク/エア
■ブレーキ=(前後)Vディスク
■タイヤ(ホイール)=(前)275/50R22、(後)275/50R22
公式ページ https://www.cadillacjapan.com/escalade/model-overview.html
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