日中はまだ暑い日が続きますが、朝晩は随分と秋の気配が感じられるようになったミュンヘンです。
ミュンヘンは言わずと知れたBMWの本社があり、街にはBMWが溢れています。地元の方もそれを誇りに家族代々BMWに乗っておられる方も多数いらっしゃいます。
しかし、南ドイツに世界に名だたる自動車メーカーが集中しており、こちらミュンヘンはBMWのみならず、南ドイツにあるアウディやメルセデス・ベンツ、ポルシェの所有率も非常に高いのです! そんな事もあり、ミュンヘンのメルセデス・ベンツNiederlassung(直営ディーラー)は、本社のあるシュトゥットガルトのを大きくしのぐほどの巨大な施設があり、そこは行くだけでも毎回楽しくめちゃくちゃテンションが上がります。日本からご旅行等でミュンヘンを訪いらっしゃる方の大半がご存知ない施設かと思いますので、今日はクルマ好きにはたまらない超穴場スポットのご紹介をさせていただきたいと思います。
この正規ディーラーの目の前はMittlere Ringという、ミュンヘン市内をぐるりと囲む東京でいうところの首都高速のような道路が通り、いつも私は車窓からここを見るのがとても楽しみです。夜はライトアップがされていて、表に面する全ての面には季節ごとに展示車両が入れ替えられます。
このしゃれた空間デザイン性はそれだけ観ていても圧巻なのですが、クリスマスシーズンにはガラスの壁面全てをアドベントカレンダーに見立て、上部に『シュテルン』が回るタワーをクリスマスツリー風のカラフルなライトアップが施されとても華やか! 毎年その時期はこの前の道路を通るのをとても楽しみにしています。
エントランスを入ると右手のガラスで囲った特別高級感のあるエリアは、以前は一般人が立ち入るのをためらうような、マイバッハ専用のエグゼクティブでセレブリティ溢れる特別感満載のフロアでしたが、いつの間にかスマートのEQコーナーになっていてビックリしました。
吹き抜けの解放感溢れる空間は、それだけで圧倒されます。当然ですが、右も左も上も下も全てがメルセデスです。新車や認定中古車、クラシックカーがフロアごとに分かれてびっしりと並んでいてワクワクもの! この施設内には巨大な整備工場も備えていますので、並んでいる認定中古車もトップ整備士さんの手で徹底的に整備され、中古車は新車と見間違える程にピカピカ。お買い得車もたくさんあって目移りしました。買う気もないのに、スペック表を見ながら真剣に考えてしまいました。日本に正規輸入されていないモデルもここではゆっくり見る事ができます。
その中でも『Verkauft』という赤い札が挟んである車両は、『売約済』という印。この巨大な正規ディーラーに展示してある車両は、ほぼ全てが購入可能なのです。クラシックカーにおいては、車両のヒストリーもスペック表といっしょにしっかり提示されています。一番高価な車両は280SE 3.5 カブリオレ、お値段はナント339,000ユーロ(約4300万円!)。思わず何度も見直してしまいました。しかし、メルセデス・ベンツクラシックでオリジナルの鑑定を受け、レストアされた超稀少車ですから、探しておられる方にはむしろお安く感じるのかも知れませんね。
クラシックコーナーにはメルセデス・ベンツの歴史を表す写真や説明、そしてクラシックカーにぴったりなレトロなレイアウトがとてもステキです。
私の大好きなAMGコーナーでは、今季も絶好調のF1のルイス・ハミルトンの迫力ある写真とともにカッコいいクルマがたくさん並びます。AMGの全種類の車両のエキゾーストノートが聴ける設備やDTMマシン、元F1ドライバーのニコ・ロズベルクのステアリングの展示もあり、楽しむ一方でたくさんゼロが並ぶ価格表に自分の経済力のなさに苦笑いするのでした。友人知人がアッファルターバッハのAMGに勤務している事もあり、直営ディーラーの写真をスマートフォンで送ったところ、彼らもこの施設の事を知らず「そこどこ⁉」とビックリしていました。
世界中の自動車業界が急速にEV化へ進み、その中でもメルセデスは特に力を入れていると言っても過言ではないでしょう。2019-20年からEVレースのフォーミュラEに参入、その最先端のテクノロジーを量販車にも組み込まれ、活かされるといいます。ところで、日本でEQモデルをご購入の方には、充電用のウォールボックスがプレゼントされるという企画を目にしましたが、ドイツの場合はどうなのかと気になってセールスの方に伺ってみました。
残念ながら、ドイツではウォールボックス無料キャンペーンは実施しておらず、必要とする方はメルセデス・ベンツのオリジナルまたは社外品を自分で購入する必要があるそうです。
ただ、ドイツはコロナの経済復興の一環として、政府からの新車購入助成制度が2021年12月31日まで利用でき、特にEVやプラグインハイブリットカーに関しては割引率が高く、最大9000ユーロもお得に購入できます。「その浮いたお金で新車と一緒にウォールボックスやオプションをご追加なさってはいかがですか?」とご提案をいただきました。
施設内にはキッズコーナーや『Daimler‘s Bar』というカフェ・レストランを併設されていて、たくさんのステキな車両に囲まれてお食事やコーヒータイムを楽しむ事もできます。
ミニカーやグッズのショップや車両のオリジナルパーツの購入できるカウンターも併設していますので、日本では手に入りにくいパーツもここでは問題なく注文・購入できますよ。
シーズンごとに正面フロアの展示車やイベントが変わりますので、いつ来ても楽しく無料で楽しめる直営ディーラー。いまはまだコロナの影響で海外旅行ができませんが、渡航制限が解除された際には、ぜひこちらにもお立ち寄りになってみてはいかがでしょうか。
また余談ですが、前回ここへ他社製の愛車で来た際には、施設内のパーキングには入れず、遠く離れた工業地帯の駐車場へ案内された事もあり、この日は家からママチャリを漕いで乗り付けました(笑)。受付のキリっとしたイケメン男性に、他社のクルマでは施設内のパーキングは駐車不可なのですか? と前回の事もあり、思わず聞いてしました。手違いをお詫びくださいましたが、ちょっと複雑な気分……。
この記事を書いた人
武蔵野音楽大学および、オーストリア国立モーツアルテウム音楽院卒業。フリーランスの演奏家を経て、ドイツ国立ミュンヘン大学へ入学。ミュンヘン大学時代にしていた広告代理店でのアルバイトがきっかけでモータースポーツの世界と出会い、異色の転身へ。DTM、ル・マン/スパ/ニュルブルクリンクの欧州三大24hレースを中心に取材・執筆・撮影を行う。趣味は愛車のオープンカーでヨーロッパのアルプスの峠をひたすら走りまくる事。蚤の市散策。
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