1897年の創業以来、世界中のセレブリティを魅了するグローブ・トロッターから創業120周年を記念したコレクションが発表された。F1にも採用されている最先端素材、カラード・カーボンを纏った全世界120個の限定販売である。
※この記事はル・ボラン2017年11月号からの転載です。掲載商品は現在販売していないものもあります。
グローブ・トロッター/120( ワントゥエンティ)コレクション
先日、江戸東京博物館に行ったところ、江戸の庶民の暮しを再現した実物大のジオラマに興味をそそられた。四畳半ほどの狭い部屋はリビングであり、ダイニングであり、寝室にも早変わりする。家具と呼べるのはちゃぶ台程度で、押し入れもないので布団は衝立で隠す。そしてクローゼット代わりに使ったのが柳行李で、引っ越しの時は家財道具もこれに収めて移動した。断捨離ではないけれど、そんな身軽な生き方に憧れる。
考えてみると現代の柳行李がスーツケースなのかもしれない。自分が持てる必要最低限のモノを積め、旅先では便利な収納にもなる。日本ではまだまだ柳行李が一般的だった120年前、誕生したトラベルケースのブランドがグローブ・トロッターだ。
当時のハイテク素材でもある、堅牢かつ軽量なヴァルカン・ファイバーを採用し、いまもそのスタイルを変えない。伝統を重んじながらも、時代の先進技術を採り入れるアヴァンギャルドはまさに英国気質といえるだろう。その精神を受け継ぎ、120周年記念で採用したのがカラード・カーボンである。
これはF1のR&D会社であるハイプテックスの特許素材であり、サーキットで培われた最先端のカーボンだ。レーシングマシン用に開発され、スーツケースでは世界で初めての採用になる。
実はグローブ・トロッターでは110周年にもカーボンを使った記念コレクションを発表している。デザインを監修したのは英国人デザイナーのロス・ラブグローブで、それは有機的かつミニマルなスタイルだった。対して今回はあえてクラシックなスタイルはそのままに、カラード・カーボンの魅力を全面に押し出した。シャープなシルバートーンは繊維自体が色を持ち、傷ついても色は剥離しない。目が整った美しい綾織りは、高い成型技術とともに、熟練のビスポークの技を思わせ、現代のクラフトマンシップを感じさせるのだ。
ライニングには英国のラグジャリーカーの伝統に則り、ブラックのダイヤモンドキルトのライニングを施し、高貴さが漂う。近未来的な外観とのギャップがイギリスらしい。
決して容易に手が出る価格ではないが、カラード・カーボンのワンオフで作ることを考えれば破格でもある。こんなスーツケースのF1マシンと旅したら、どんなに刺激的だろう。古きイギリスの街並みをゆく姿を想像しただけでもその価値はあると思う。
120(ワントゥエンティ)コレクション
グローブ・トロッターのアイコニックなフォルムはそのままに、ボディにシルバーのカーボンをまとった最先端のクラシックケースは、世界で初めてカラード・カーボンを開発した、F1のエンジニア集団「Hypetex(ハイプテックス)社」とのパートナーシップにより実現。さらにカラード・カーボンファイバーの精彩な織柄を全てのパーツで合わせるこだわりをみせる。コーナーレザーやストラップにはブラックレザーとバーガンディレザーの2色を用意。ライニングにはダイアモンドキルトが施されイギリス車のクラシックなディテールを彷彿とさせるトラベルケースに仕上がっている。展開は20インチトロリーケースのみで、1917年11月中旬受注〆切(受注生産)。価格:590,000円(税抜)
●問い合わせ先:グローブ・トロッター 銀座 https://www.globe-trotter.com/
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