アウトランダーPHEVをベースに「自助・共助・公助が一体となった災害対策車両の開発」を目指して3社がタッグ
12月23日、三菱自動車とゲヒルン株式会社、スカパーJSATの3社は、「アウトランダーPHEV」をベースにした災害対策車「特務機関NERV(ネルフ)制式 電源供給・衛星通信車両 5LA-GG3W(改)」を共同製作したと発表。2020年2月1日に東京エリアで「初号機」、札幌エリアで「弐号機」の運用を開始する予定であることを明らかにした。
ゲヒルン株式会社は防災情報通信サービスを展開しており、「特務機関ネルフ防災」というアプリケーションを運営。2006年にクレーン船が送電架空線に接触したことにより発生した首都圏停電や、2011年に行なわれた東京電力管内の計画停電、2018年の北海道胆振東部地震により発生した北海道全道大停電、令和元年台風第15号による千葉県を中心とした長期間の停電といった過去の教訓をもとに、ゲヒルンでは長期化する停電へのBCP(事業継続計画)に取り組んでいる。
そんなゲヒルンとの協業によって、このたび製作された災害対策車には「特務機関ネルフ」のネーミングが与えられているが、「特務機関ネルフ」とは、アニメ「エヴァンゲリオン」シリーズの作品のなかで敵の襲来に警報を発令する組織「特務機関ネルフ」に由来したものだ。
この災害対策車は、アウトランダーPHEVのルーフに米国のカイメタ社が製造する平面アンテナ端末を搭載し、スカパーJSATの通信衛星を経由してインターネット接続を可能にしている。また、内閣府宇宙開発戦略推進事務局準天頂衛星システム戦略室から、準天頂衛星「みちびき」を利用した衛星安否確認サービス「Q-ANPI」の端末の貸与を受けて車両に搭載することで、「みちびき」を利用した災害通信を確保する。
この車両は「自助・共助・公助が一体となった災害対策車両の開発」として、3つの目的を掲げて開発された。
ひとつ目が「特務機関ネルフの防災情報配信サービスを単独・自力で継続」。ゲヒルンでは特務機関ネルフ防災アプリ等を通じて防災情報を配信しているが、情報の発信側が機能を停止してしまうリスクを限りなく少なくする必要がある。停電や通信障害によって特務機関ネルフのオペレーション拠点が情報配信機能を失った場合に、この車両を使用して電力と通信を独自に確保し、防災情報配信サービスを継続する。
ふたつ目が「近隣自治体の災害対策本部・避難所等への支援」。特務機関ネルフの防災情報配信オペレーションに支障がない場合には、被災地へ出動して災害対策本部や避難所等に、給電・充電サービス、電話サービス、Wi-Fiインターネット接続サービス、インターネットおよび「みちびき」の災害・危機管理通報サービスを利用した防災情報を提供する。
そして3つ目が、「防災訓練への参加、自治体や企業の災害対策モデルケースの提示」。災害派遣医療チーム(DMAT)による訓練や全国各地の防災イベント等への参加を通じて、PHEV、衛星通信サービス、平面アンテナ端末、「みちびき」の有用性を紹介し、同車両をモデルケースに自治体や企業が独自に電力や通信を確保する重要性を提示して、災害対策をさらに強化できるよう協力する。
スカパーJSATの衛星通信サービスが用いられたのは、衛星通信の強みである「耐災害性」、「広域性」、「柔軟性」の3要素を備えたインターネット接続サービスを提供しているからだ。カイメタ社の平面アンテナ端末は、衛星を自動捕捉・自動追尾し、誰でも簡単に双方向衛星通信を利用できる。衛星通信サービスと平面アンテナ端末により、衛星通信の耐災害性に加え、移動時の通信という機動性も確保できることから、BCPや人命救助活動等の特殊車両での利用が期待されている。
災害対策本部や避難所等に同車両が派遣された場合は、以下のサービスが提供される。
まずは「電源供給・充電サービス」。アウトランダーの持つ給電機能により、照明電源の提供、PCや携帯機器の充電、炊飯器、電子レンジ、電気ポットといった調理器具への電源を供給する。
次に「Wi-Fiによるインターネット接続サービス」。スカパーJSATの衛星インターネット回線を経由してWi-Fiサービスを提供することで、スマートフォンユーザーにインターネットアクセスを提供。メールやメッセージアプリ、防災アプリの通信が可能になる。
そして「みちびきの衛星安否確認サービスによる安否・避難所情報の通信サービス」。スカパーJSATのインターネット回線とは別に「みちびき」を利用した通信によって、避難所の状況を防災機関等に伝達。こちらはおもに避難所の避難者および運営者に向けたサービスとなる。
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