種目はフリースロー、その結末は?
「きっかけ」を意味する「CUE(キュー)」とは、元々トヨタ最古の歴史を持つ社内有志団体「トヨタ技術会」によるイベント企画のひとつとして生まれたもの。「全くの素人が一から人工知能の開発に挑む」をテーマに、100%シュートを決めるAIロボットとして開発。現在は2020年までの期間限定だが「仕事」として開発を継続中。今年4月にお披露目された「CUE3」は名前の通り3代目だが、5月にはギネス世界記録(ギネスワールドレコーズ)からの挑戦のオファーが来た。そのテーマは「人型ロボットによる連続フリースロー回数記録」だという。
実は2018年3月、自由活動としてCUEが開発されていた際も一度問い合わせがあったそうだが当時はシュートとシュートの間に3分ほどの準備時間が必要で連続とはいえない状態。加えて長時間シュートを打ち続ける耐久性にも不安があったそうで記録挑戦は叶わなかった。
しかし、昨年末に二代目の「CUE2」がスリーポイントシュートを、CUE3は約12mの超ロングシュートを成功させるなど、CUEは着実に進化。それがSNSなどでも話題を呼んだことから、ギネスワールドレコーズから再度のオファーを受けCUE3による前述の挑戦が実現したわけだ。
ギネス世界記録への挑戦に向けて、開発チームは大きく2つの調整を行なった。連続シュートの実現に向け、通常はシュート後のフォロースルーで腕を一度降ろしてしまうところをシュート後もすぐに次のシュートモーションに移れるように改善。さらに連続でシュートを打ち続けることによるメカやモーターへの影響を検証すべく、フリースロー連続200本チャレンジを実施して本番に臨んだ。
ちなみにギネス世界記録で新しい記録に挑戦する場合、最低限越えなければならない数字が設定されていて今回は連続で5本。しかし、それを1度でも超えると再挑戦はできず、仮に6本目で失敗するとわずか「5本」という寂しい結果で記録認定されてしまうとか。また、開始後は一切ロボットの調整やボールなしのシュートフォーム確認も禁止とのことで、開発チームは使用するボールの空気圧やゴールからの距離、ゴールの高さをチェック。リハーサルも入念に行なわれた。
そんな緊迫した空気の中でスタートした本番。まずは無事5本を突破、一応ギネス世界記録としては成立したがCUE3は粛々とシュートを決め事前練習でトライした200本をクリアする。
そして挑戦開始から3時間18分、CUE3は大台の1000本を突破し約12秒に1本のペースで正確なシュートを打っていく。わずか半年前まではシュート後に約1分の準備時間が必要で、なおかつ調整が上手くいかないと30本打って1本も入らないこともあったことを考慮すれば、驚くべき進化ぶりだ。
とはいえ、このペースだと挑戦が日をまたぐ可能性もあるということで今回の挑戦は東京オリンピック/パラリンピックに想いを繋ぐ2020本に目標を設定。結果、開始から実に6時間35分、ついに歓喜の瞬間が訪れる。「ヒューマノイドロボットによる連続して行ったバスケットボールのフリースロー最多数(アシスト有り)2020回」で、CUE3は念願のギネス世界記録を打ち立てのである。
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