【国内試乗】電動化でワンランク上の動的性能を得た快速ステーションワゴン「BMW・i5 M60 xDrive ツーリング」

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本年2月に発売が開始された新型5シリーズのステーションワゴン版であるツーリングを日本の公道で試す機会に恵まれた。今回はBEVモデルであるi5 の中で最もパフォーマンスな「M60」を駆り出し、そのファーストインプレッションをお届けする。

実用車とスポーツカーの2面性を楽しめる

7月にはこちらの記事で内燃機関モデル「523d xDriveツーリング」のインプレッションをお届けした新型5シリーズツーリング。今回はフル電動モデルであるi5ツーリングの印象をお届けしたいと思う。

フロントに261ps/365Nm、リアに340ps/430Nmのモーターをそれぞれ搭載し、システムトータルでは最高出力601ps、最大トルク795Nmを発揮する。0→100km/h加速は3.9秒をマークする。

昨年フルモデルチェンジが行なわれ8代目となった5シリーズ。今年の2月にはステーションワゴン版のツーリングが追加。日本に導入されるのは、ディーゼルエンジンを搭載した523d xDriveツーリング。そしてフル電動モデルのi5 eDrive40ツーリングと、Mパフォーマンスモデルであるi5 M60xDriveツーリングの合計3グレード展開となっている。今回試乗したのは、i5 M60xDriveツーリングだ。

試乗車にはオプションの「Mカーボン・エクステリア・パッケージ」が装着。ミラーなど一部のパーツがカーボン化されスポーティな装いに。

まず駐車場に止められたi5M60xDriveツーリングを見て、「ちょっとかっこいいかも」と思わずつぶやいた。新型5シリーズは歴代でも最大のボディサイズとなっており、全長はなんと5mを超え。さらにエンジン車とBEVのプラットフォームを共有する関係から、全体的にボディは厚めでなんだがずんぐりむっくり……というのがセダンモデルを見たときの第一印象だった。

ホイールサイズは前245/40R20、後275/35R20だ。

しかしツーリングではCピラーからテールゲートまでのラインがつながったおかげで“カタマリ感”が生まれ、厚ぼったい印象がなくなった。空力の関係から適度に角が落とされたテールまわりも、なんだがシューティングブレークのように見えなくもない。そう、とにかくかっこいいのだ。実用車であるステーションワゴンも、やはり自分で乗るならかっこいい方がいい。直接走りには関係のないポイントではあるが、このエクステリアの印象でより走りに対する期待が高まったのは事実だ。

インストルメントパネルには近年のBMWよろしく、大型のBMWカーブドディスプレイを装備。エアコンの吹き出し口なども巧みに隠されており近未来的な印象を与える。

早速クルマに乗り込んで走り出していくが、最近の電気自動車よろしく、音もなくするすると加速していく。後輪操舵がついているので、狭い路地や駐車場でも存外に切り返しが効く。ボディサイズは大きいが、それによる普段使いのネガは、最小限に抑えられていると言っていいだろう。

シートはメリノブラックとアトラス・グレーのコンビシート。スポーツモードに入れるとサイドサポートがわずかに立ち上がりホールド性を向上させる。

フロア下に搭載されるバッテリーは83.9kWhで、公称の一充電航続距離(WLTC)は500kmとなっている。今回の試乗開始時のバッテリー残量は99%で、その際メーターに表示されていた走行可能距離が400kmだったので、だいたい7〜8割を見込んでおけば問題ないだろう。

2995mmというホイールベースのお陰で後席も居住性も十分だ。

そのまま試乗は高速道路へ、合流では少し強めにアクセルを踏んでみる。すると2410kgもある車重が嘘のようにクルマが前に押し出されていく。加速時の直進安定性も抜群で、ステアリングもどっしりと構えており、寸分のブレもない。その一方で、ドライバーが曲がりたいと思えば、これまた車重2トン越えとは思えない軽快な身のこなしを見せる。これには先ほどの後輪操舵が効いていると思うのだが、その塩梅が絶妙でビタッとラインが決まるので非常に気持ちがいいのだ。

BMW i5 M60 xDrive ツーリング

走行モードをスポーツに入れるとさらに刺激的な走りがドライバーを待ち受けている。システムトータル601ps/795Nmの出力から繰り出される加速は“ワープ”と形容したくなる感覚で、さらにステアリング9時位置にあるブーストパドルを引くと、一時的に810Nmまでアップすることも可能だ。ステアリングのキレもより一層鋭くなるほか、足回りも引き締まりロードインフォメーションが手に取るようにわかる。普段の走りは極めてジェントルだが、一旦鞭を入れると、一瞬にしてスポーツカーへと変貌する。この2面性を自在に楽しめることが、i5 M60xDriveツーリングの美点だと感じた試乗だった。

多くの人が気になるであろうラゲッジルーム容量だが、内燃機関モデルと容量は変わらず通常時で570Lを確保。シートは40:20:40の分割可倒式で最大1700Lまで拡大が可能だ。唯一のウイークポイントはエアロダイナミクスの関係で、先代には備わっていたリアゲートのガラスハッチがなくなってしまった点。とはいえ大容量のステーションワゴンとしてのユーティリティは必要十分だ。

【Specification】BMW i5 M60 xDrive ツーリング
■車両本体価格(税込)=16,000,000円
■全長×全幅×全高=5060×1900×1505mm
■ホイールベース=2995mm
■トレッド=前:1625、後:1625mm
■車両重量=2410kg
■モーター形式/種類=前:HA0002N0/交流同期電動機、後:HA0003N0/交流同期電動機
■モーター最高出力=前:261ps(192kW)/8000rpm、後:340ps(250kW)/8000rpm
■モーター最大トルク=前:365Nm(37.2kg-m)/0-5000rpm、後:430Nm(43.8kg-m)/0-5000rpm
■バッテリー容量=83.9kwh
■一充電走行距離(WLTC)=500km
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/コイル、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:245/40R20、後:275/35R20
問い合わせ先=BMWジャパン TEL0120-269-437

フォト=篠原晃一 ルボラン2024年10月号より転載

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